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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第10回 退院を望む夫と拒否する妻の支援をどうすすめていくか
(2005年5月号(2005年4月刊行)掲載)

スーパーバイザー

高橋 学
(プロフィールは下記)

事例提出者

Kさん(メディカルソーシャルワーカー・療養病床)

クライアント

クライアント:W氏(71歳)
主病名:多発性脳梗塞、心房細動
身体状況:日常生活動作自立。独歩可能であるが、病棟では車いすに乗車していることも多い。多発性脳梗塞によるパーキンソン症候群のため歩行障害(すくみ足)がある。構音障害があり聞き取りづらいが、ゆっくり話すと聞き取ることは可能。
リハビリ状況:自宅への退院を強く希望する本人の意向により、PTが週に3回、OTが週に4回、STが週に3回行っているが、それ以外にも病棟内の廊下を歩くなど自主的にトレーニングを行っている。「寝たきりになりたくない」という気持ちが非常に強い。
身障手帳:1種2級
要介護度:要介護1
入院までの経過
平成11年1月 自宅で倒れ、G病院に搬送される。多発性脳梗塞を発症したため、そのまま入院。
平成12年2月 退院。通所サービスを週4回利用しながら在宅生活を送る。
平成14年3月 自覚症状(歩行状態増悪)が出たため、L病院へ検査入院。その後、リハビリ訓練目的のためN病院へ転院。
平成15年8月 当院へ入院。要介護度が軽度であるため、当院での長期的な療養は難しいことを説明し、1年程度という期限付きで入院される。
家族関係:キーパーソンは妻(55歳)。当院入院後2回転職している。入院当初は面会も頻回であったが、現在は月に1~2回程度。自宅や携帯電話は常に留守番電話になっており、メッセージを残しても折り返し電話がかかってくることは少ない。介護困難を訴え、自宅への退院には非常に消極的である。
生活歴:W氏は高校卒業後、サラリーマンとして働く。50歳前後から重役を務め、定年まで働いていた。妻とは再婚。前妻との間には子どもがおり、養育費を払っていた時期もあった。

プロフィール

高橋 学(たかはし まなぶ)

1959年生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学。東邦大学医学部付属大森病院、北星学園大学を経て昭和女子大学大学院福祉社会研究専攻教授。専門は、医療福祉研究、精神保健福祉学、スーパービジョン研究、臨床倫理など。