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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

「恋しさと せつなさと 心強さと」

 9月21日は敬老の日です。
 新型コロナウィルスの影響で、外出も面会も控えている状況ですから、イベントを中止する施設も多いと思います。しかし、高齢者施設において、敬老の日をお祝いできないというのは、耐えがたいものがあります。きっと、職員さんたちの創意工夫で、新しい生活様式における敬老の日のお祝いがされることでしょう。

 先日、施設の女性入居者Yさんが96歳のお誕生日を迎え、職員たちがサプライズで、すき焼きパーティーを開きました。
 Yさんは「幸せ」「こんなお祝いをしていただけるなんて、長生きしてよかった」と繰り返しおっしゃっていました。
 Yさんの大好きな若い男性職員H君は、夜勤明けにもかかわらず、午後の2時までYさんのお誕生日のお祝いに付き合ってくれました。Yさん、何よりうれしかったことでしょう。

 職員の「Yさん、来年もまたお祝いしましょうね」という言葉に、Yさんは…、
 「一年かぁ。来年まで生きていられるかなぁ」と微笑みながら言いました。
 職員は「何言ってるの。来年も再来年も、一緒にお祝いしようよ」と言いましたが…、
 「あなたたちのように若い人にとっては、毎日忙しくて一年なんてあっという間でしょ。年寄りになるとね。一日が長いの。特に何をするわけでもなく生きて、一日が長いのよ。一年なんていうと、ずっと先のように感じるわ」と、少し寂しそうな表情で話しました。

 Yさんは、入居したばかりの頃、家に帰る話ばかりしていました。あれから約一年。
 いまでは仲よしの利用者さんもいますし、職員たちのことも信頼してくれているように見えます。それでもやはり、自分の家を離れること、自分の家族と離れることは、とても寂しいことなのだと思います。
 施設に入居するということは、さまざまな事情があってのことです。
 愛する人と一緒にいられないことはつらい。
 愛する人の人生に、自分の居場所がないとわかったとき…。
 人間は生きる理由を見い出せなくなるくらいつらいのです。

 そういった状況で、私たちは出会っています。
 私たちが、生きる理由にはなれないものでしょうか。
 敬老の日。この日は少し足を止めて…、
皆さんのこれまでの人生に思いを馳せてみてください。