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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

「連れてってもらった」ではなく「行って来た」

 またまたガンさん(若年性認知症でグループホーム入居者)にご登場いていただきます。

 今年冒頭のブログで、ガンさんを就労事業所に送って行った時の「エレベーターでの僕のミス」について書かせていただき「精度が落ちた嘆き」をお伝えしましたが、その続報です。

 先日、今年2度目の「ガンさんを就労事業所へ送っていくボランティア」をお引き受けしました。

 就労事業所のビル前に到着してエレベーターに向かう際、前回と同様、ガンさんに「何階でしたかね」と尋ねると、前回とは違って「〇階」と階名を明確に答えることができませんでした。
ちょっと時間が経って「三階だったかな」と言われるので「そうですか。五階ではなかったですか。間違いありませんか」と投げてみたところ、とっても曖昧に「そう、五階だった」と。

 まだ確認はしていませんが、日常生活の端々に、こうした曖昧さが徐々に確実に広がってきているんでしょうね。

 エレベーターに乗っていただき僕が五階のボタンを押し、押してすぐに「あかん、やっぱり精度が悪い」と気づきましたが、後の祭りです。

 これまでずっと本人が主体性をもって五階ボタンを押せるように支援することを大事にしてきたはずなのに、ダメですねェ。衰えがひどい。

 ちなみにガンさんのグループホームの方に聞くと、やっぱり自分で階ボタンを押してもらうようにしているそうです。

 エレベーターに乗ったガンさんを扉越しに「いってらっしゃい」と見送りましたが、今回は確実に五階で降りて就労事業所へ行きつけているか確認することにしました。リスクヘッジです。

 2階・3階とランプが点灯し4階・5階へと動いているはずなのですが、エレベーターの階表示ランプは4階で消えてしまいました。

 「あちゃー、ガンさん4階のボタンを押してしまったのかな。降りていたらえらいこっちゃなぁ」

 すぐにエレベーターを1階へ戻すために階ボタンを押すと、階表示ランプが4階で点灯。3階・2階と戻ってきました。
 扉が開くとガンさんはいませんでした。
 4階で降りてしまったのか、5階表示ランプは故障しているが5階に行きつけたかのどちらかです。すぐにエレベーターを動かし4階でキョロキョロしましたが、誰も見当たらなかったのですぐさま5階へ。
 「ガンさん、来られていますか」
 と声を張り上げると
 「いらっしゃってますよ」と元気なスタッフさんの声が聞こえました。

 いやぁ「ホッ」としましたね。
 最初からガンさんを五階に連れて行けば済む簡単な話なのですが、僕の追求は「五階に連れて行ってもらった」ではなく「五階に行った」なんで、精度低下も絡まって毎回ハラハラドキドキの送りボランティアになるってことです。

写真

 公園の木々も「はだかんぼう」で寒そうです。

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