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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

国民生活の担い手としての誇りを抱いて新年へ


 新型コロナウイルスによって、認知症の状態にある方で要介護状態にある方への支援として、これまで大事にしてきた「社会と密着した暮らしの姿の取戻し」や「人と人が密接に関わって生きる姿の取戻し」が砕かれたと言っても過言ではありません。

 認知症の状態になって介護施設に入居している方々も、元はと言えば当たり前のようにあった姿を維持できなくなり、僕らのもとへ来られました。

 「来てくださいね、しっかり生活支援させていただきますから」

 とアピールしてきた僕らは、かつての生きる姿が取り戻せるように支援してきましたが、それは口で言うほど容易くはなく、何人もの人間が一生懸命力を振り絞ればこそ、写真のような姿を叶えることができました。


 その姿を木っ端みじんに打ち砕いた新型コロナウイルスを憎んでも憎みきれませんが、コロナごときにやられっぱなしでは、NIPPONの介護職の名折れです。
 「密」や「接」がだめなら、「かかわらない支援に挑もう!」とブログでも書いてきましたが、脳と身体を駆使して生きているのが僕らだとしたら、認知症の状態にある人たちも同様に、脳と身体を使えるうちは使って生きていただけるように支援するのは僕らの仕事であり専門性。


 新型コロナで打撃を受けたのは「社会生活の取り戻し支援策」と「人と人が関われるようにする支援策」であって、それ以外の支援策は新型コロナに負けずに生きているはずです。


 ひとり30分、支援者が付き添って背もたれのない椅子に座っていただくことを繰り返すだけでも効果絶大だろうし、他にも脳と身体の不活性化防止効果を得られる事柄は無限にあることでしょう。  今の状況を見ていると長引くことが想像できる新型コロナとの闘いで、策もなく「何もできなくなった」と思い込んで打ち負かされないで、知恵と工夫を凝らしていくことが、僕らのコロナ闘争ではないでしょうか。  要介護状態にある国民の生活を支援する公務者としての誇りをもって、新しい年を迎えようではありませんか。

追伸

 2020年、65歳を迎えた年のブログはこれで最後になりました。
 2019年度に計画した2020年度の様々なことができなくなり、地団駄踏んだ年でした。
 4月以降、鉄道や飛行機など公共交通を使った移動をしなくなった年でもあり、自宅名古屋と仕事の本拠地東京のロングドライブを毎月毎回繰り返した年でした。

 東京オリンピックの柔道女子決勝戦とサッカー3位決定戦「観戦」も「感染」に変わってしまいました。
 注文をまちがえる料理店もオリンピックに向けて計画していたことがぶっ飛びました。

 

 多くの一般企業・個人経営店では倒産・失業・廃業・混迷で失意のどん底の2020年となり、先の見通しも立たない中、寒さの厳しい師走を迎えている方々がたくさんいます。
 そんな状況の中、一部大変な事態に追い込まれているとはいえ、大きくは公的事業である介護保険事業に従事していたことで路頭に迷うことなく過ごせていることを思えば、介護の仕事の公務性を改めて感じざるを得ません。ありがたいことです。

 医療事業者・従事者だけでなく、介護保険事業者・事業所・従事者が、多くの国民生活の下支えになっていることが明確になったことも事実で、介護職の重要性を世に示せた年ではなかったでしょうか。誇りです。

 南極大陸まで襲った新型コロナウイルスとの闘いに打ち勝って、2021年が人類にとって良き年となりますよう、地球人70億人とともに願ってやみません。
 今年一年、僕にお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。

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切実