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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

見える化先に立たず

 最近目にする映像には、空中を散歩しながら下界を眺めるかのような物が増えました。ドローンを使った撮影が流行りだしてからの傾向かもしれませんが、もし16世紀の人々もこうした映像に触れていたら、もっと早く地動説を受け入れたかもしれない、と考えもします。

 私自身、鳥瞰的な映像に多く触れるようになり、ものの見方や考え方が少し変わってきたように感じています。「物事を俯瞰的にみる」と言いますが、頭の中だけでイメージするのと違い、見える化されたものは私に、より大きなインパクトを与えるからです。

見える化先に立たず

 見える化といえば、プレートテクトニクスのシミュレーション映像も、相当インパクトがあります。年間で数センチから数十センチの速度の動きを、超早送りにした映像で見ると、地球の表面を覆う岩盤(プレート)の運動により、地球が様々に変動している様を目の当たりにすることができます。

 まさに圧倒的なビジュアルですが、一般に私たち人間は、まずは自分の目線で物事を捉えます。そして、ドローンやシミュレーションなど、自らが生み出した技術を用いて見直してはじめて、現実がまったく異なることを知って驚愕します。

 「人類の発展」どころか「人類の滅亡」に向かっていると知り、慌てて立てた「持続可能な開発目標(SDGs)」などはその最たるものではないでしょうか。どうも、見える化先に立たずのようで、なんとも皮肉な話です。




持続不可能な道

 実は、虐待の問題もまた同様の皮肉を背負っているように思えます。持続不可能な目標だとは気づかずに一生懸命目指すようなものだからです。たとえば、人様に迷惑をかけないようにと、問題を家族だけで解決しようとしてかえって問題を長引かせ、手当てが遅れる家族主義由来の事例などはこの典型でしょうか。

 また、事なかれ主義で口をつぐんだり、自分の管理能力を問われることや事業所に悪評が立つことを恐れたりして、一生懸命臭いものに蓋をしようとして、かえって取り返しのつかない事態に陥る従事者による虐待の事例も同様でしょう。

 いずれも、自分の目線から物事を捉えることに終始していて、虐待は歩き続けることのできない道である、という一番肝心なことに気づかないようです。このとき、ドローンを飛ばして俯瞰したり、早送りのシミュレーション映像を観たりできれば、自分たちがいかに危うい道を歩いているか分かりますから、踏み止まれるのではないでしょうか。

 ですから、支援者にはドローンやシミュレーションの役割を果たすことが求められるようにも思えます。いくつかのパラメータを入力すると、他の人々からはぐれて、やがては谷底に落ちる断崖絶壁への一本道を歩く姿を観られる、そんなアプリケーションが欲しいものです。

「観ない方が良かったネ…」
「夢も希望も…」

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