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ルポ・いのちの糧となる「食事」

下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

食べること、好きですか? 食いしん坊な私は、食べることが辛く、苦しい場合があるなんて考えたことがありませんでした。けれどそれは自分や身近な人が病気になったり、老い衰えたりしたとき、誰にも、ふいに起こり得ることでした。そこで「介護食」と「終末期の食事」にまつわる取り組みをルポすることにしました。

プロフィール下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

出版社勤務を経て、1994年より公衆衛生並びに健康・美容分野の書籍、雑誌の企画編集を行うチームSAMOA主宰。構成した近著は「疲れない身体の作り方」(小笠原清基著)、「精神科医が教える『うつ』を自分で治す本」(宮島賢也著)、ほか。書籍外では、企業広報誌、ウェブサイト等に健康情報連載。

第59回 街へ、社会へ飛び出す、医療人! 
WAVES Café第3弾“元気に食べていますか?”キャンペーン

はじめに

 すべての人がすこやかに生きるために最も大切な「栄養」を守る新たな取り組み、WAVES。
 そのWAVESと連動する活動、“元気に食べていますか?”キャンペーンが始動し、9月20日、「おばあちゃん達の原宿」とも呼ばれる巣鴨地蔵通り商店街(東京都豊島区)に飛び出します!
 キャンペーンの全国的広がりに多大な期待を寄せて、この取り組みをご紹介します。
 医療や介護の場で栄養ケアの重要性を感じ、今後、栄養療法を学び・活動する場を求めている医療・介護職の方、また一般の、健康の維持・増進を望む方、家庭介護を担う方にも、広く知っていただきたい取り組みです。

新しい“医療の外の栄養ケア”始動
食べることを支える専門職達が集結!

 病院や施設では患者(利用者)の栄養状態を良好に維持・管理し、回復を促す(健康を守る)ため、栄養療法について学び、ケア技術を高めた専門職が多く働いていて、その専門職がより深い研鑽の場として集う医学会の一つがJSPEN(日本静脈経腸栄養学会)です。
 2014年より同学会は事業の一つとしてWAVESに取り組んできました。
 WAVES は「We Are Very Educators for Society」の略で、同学会理事長・東口髙志先生(藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授)が学会に集う栄養ケアの専門職達に、日頃、仕事の中で培った知識と技術を、今後は地域社会にも提供し、すこやかな超高齢社会の実現に貢献することを提唱した事業です。
 さまざまな理由から必要な食事を欠いて低栄養や摂食嚥下障害悪化、サルコペニア(筋肉量減少と筋力低下による身体機能障害)、フレイル(加齢による恒常性維持機能低下による虚弱)などを招く高齢者が少なくないことから、一般・地域に栄養教育、健康啓発を広め、健康づくりや介護予防の原点として栄養管理、栄養療法を定着させていく活動です。
 日頃より、医療の中はもとより、“医療の外(病気になる前、後など日常)の栄養ケア”の大切さを訴え、全国の病院へのNST(栄養サポートチーム)普及に尽力すると共に、地域NSTを推進、牽引してきた東口髙志先生は、愛をこめて「じいちゃん」「ばあちゃん」と呼び、「元気に食べていますか?」と声がけすることから始める地域栄養ケアを全国へ広げることを仲間に呼びかけたのでした。
 そのWAVESについて理解を深め、普及させるための取り組みとして過去2回WAVES Caféが開催され、全国から150名超が集い、対話が重ねられました。参加者の9割が栄養ケアの専門職ですが、JSPENメンバーに限らず、医療、歯科医療、福祉のさまざまな分野から、また一般からも参加があったということです。
 そして9月20日は第3弾のWAVES Caféとして、全国からWAVESの志をもつ医療人が集い、巣鴨地蔵通り商店街に居合わせた高齢者に声をかけ、低栄養等についての知識と栄養ケアの大切さを直接訴える行動、WAVESと連動する“元気に食べていますか?”キャンペーンを実施します。今回は試験的活動でもあり、今後、全国各地で同様の取り組みを展開するためのマニュアル制作にも取り組むとのことです。
 当日は約70名の参加を見込んでおり、東口髙志先生の基調講演に続いて、事務局が編成したグループ別(詳細は当日発表。プロモーション班、問診班、身体計測班、マニュアル班などを予定)に栄養アセスメント手法等について作戦会議を行なった後、巣鴨地蔵通り商店街にて高齢者に声がけ、栄養アセスメントと健康啓発を実施予定です(街頭での活動は13:30~16:30を予定)。
 栄養ケアの専門職が集い、おそらく低栄養など“自分とはまだ関係ない”と考えている高齢者に、そうした身体機能低下は誰にでも起こり得ることと知らせ、予防の術を伝える奉仕活動は画期的な試みです。
「元気に食べていますか?」という一言の声がけは、高齢者の「生活の質の低下予防・病気予防・介護予防」のきっかけになるだけでなく、家庭と社会の平穏と、ムダな医療費や介護費を抑制することにもつながる、さまざまな“よい変化”を生み出す可能性をもっています。筆者も当日は現地取材をして、たくさんの希望が発生する瞬間を目撃し、後日、本連載でもお伝えしたいと思います!
 なお、キャンペーン等について、詳しくはWAVES Caféを主催する一般社団法人チーム医療フォーラム(代表理事・秋山和宏先生 東葛クリニック病院副院長)運営ウェブサイトをご覧ください。

 次回は「家族介護者支援センター てとりんハウス」(愛知県春日井市)を運営するNPO法人てとりん代表理事の岩月万季代さんにうかがったお話を掲載します。