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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

「苦しみのなかから立ち上がれ」

 人の辛さや苦労は比べるものではないけれど、長引くコロナの影響で仕事を失った人、これまでに経験したことのないような大雨によって住む家を失った人…。そういった人たちの前で、私は自分が「辛い」とか「苦しい」とか言う気持ちになれない。

 ニュースで流れる感染者の人数、川の氾濫によって屋根しか見えなくなった家、車…。あれはテレビの中の作られた世界じゃない。現実です。

 私も過去に床上浸水を経験したことがありますが、家の中で、顔しか出ない高さまで水に浸り、水が引いた後も何から手を付けたらいいのかわからず、放心状態になったのを覚えています。
 ニュースに流れる上空からの映像を見ながら、この一軒一軒にほんの少し前まで、幸せな家族がいて、幸せな笑い声があった。一瞬で何もかも奪われたのではないだろうか…と胸が苦しくなります。
 被害に合われた方たちに、心からお見舞い申し上げます。

 人生は苦しいことが多い。人生は思い通りにならないことだらけ。
 それに抗いながら、自分の夢を叶えるため、愛する人を守るため、必死に闘っていくのが人生なのではないでしょうか。

 介護の現場では、理想の高い人ほど、職場を転々と変えている人が多いように感じます。
 採用面接を受けに来た人が、前の職場について、こんな話をすることがあります。
 「施設長にビジョンがない」「リーダーがリーダーシップを発揮できない」「人間関係が悪い」「環境が悪い」……。
 私は聞きます。
 「それで? あなたはその職場で何をしたのですか?」と。

 不満はどれも本当なのかもしれません。職場に恵まれなかったとき、大抵の人が「辞めるか?」「染まるか?」の二つの選択肢を思い浮かべます。
 しかし、選択肢はもう一つあります。
 「変えるか?」です。
 これこそが本当の立派な選択です。勇者の選択です。

 「あの人、何年やってるの?」と先輩をこき下ろす人がいます。
 私は、簡単に辞めていく人よりも、ご利用者を見捨てない「あの人」のほうが立派だと思います。

 辞めていく人は、自分のなかに辞めるための「大義」を見出しているのかもしれません。我慢して我慢して、もう苦しくなったのかもしれません。
 でも、厳しいことを言うようですが、苦しいところ「まで」なら、誰でも頑張る。問題は、苦しいところ「から」、頑張ることだよ。

 明日が見えなくても、必死に生きている、頑張っている人たちがいるのです。
 仕事があって、給料がもらえて、食べることができる。住むところや寝るところがある。これのどこが「恵まれない環境」なのか。

 勇者は、上手くいかないことを人や環境のせいにしない。逃げない。
 苦しみのなかから立ち上がれ!