メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

良いことだが堪える


 労働基準法の改正によって、年次有給休暇の取得促進へ「時季指定」という制度がこの四月から事業者に義務づけられます。

 年次有給休暇の基本は、労働者の請求に基づいて取得するものなので、時期を指定して計画的に減らしていくというのは変ですが、あくまでも「働く人の意向にそって」が基本ではあります。
 国を挙げた年次有給休暇の取得促進策ですから、基本的には働く人にとって良い話で異論はないのですが「介護業界大丈夫かな」っていう心配がついて回ります。

 特別養護老人ホームのような「定員当たりの人員配置」になっている事業は、「職員の休みが増えれば出勤者数が減る=利用者への支援提供量が減る」わけですし、グループホームのように「1日当たりの人員配置」になっている事業は、「職員の休みが増えればその穴埋め量が増える」となり、「穴を埋める手立て」が必要になりますので必ずコスト増になるわけです。

 人手が開設時に設計した通りに配置できていれば、そもそも有給休暇の取得を前提に事業を組み立てているでしょうから、今回の改正も全く問題なしですが、人手不足を残業や派遣職員で賄わざるを得なくなっている事業者には「圧迫」で危機を迎えかねないですし、派遣労働者さえ確保できない地域でこれ以上の人手確保策が必要となると「危機」の崖っぷちに追い込まれかねません。

 しかもそういう事業者は、地域社会に根付いてまさに地域住民と密着している小さな事業者で、そこが危機となると住民にとってマイナスですから深刻です。

 今でさえ運営基準を満たす人員配置に四苦八苦している中では、働く人のために良いこととはいえ、かなり厳しい法改正にならざるを得ず、もろ手を挙げて喜べない経営者がかなりいるのではないでしょうか。

 ここにきて僕の周りでも、人の確保が困難でグループホーム事業を廃業せざるを得ない事業者、売却せざるを得なくなった事業者が相次いで現れている。また人の確保や利用者の確保は順調なのに、行政とのやり取りに滅入ってしまい糸が切れた事業者もいます。

 公的制度としてがんじがらめにされている介護保険事業と、今回のような公的制度の改正は連動させてもらわないと、そもそもの制度設計上の人件費=運営経費にかかわるような改正ですから、机上で計算している数字以上に堪えるので慎重に進めていただきたいものです。

追伸

 名古屋マラソンを走る職員から「社名(波の女)の入ったTシャツを着て走りたい」と申し入れがあり、社長である僕の連れ合いがでっかくロゴまで入れて作りました。


 その職員さんだけでなく、利用者の家族もそれを着て走ってくれ、沿道から「なみのおんな、がんばれ」って声がかかりものすごく嬉しかったそうですが、大声で声援したのはそのことを知らずにマラソン見学に行っていた職員さんで、知らない者同士なのに「なみのおんな」で一致し、走り抜ける瞬間でしたが互いにかなり盛り上がったようです。

 これもTシャツを着ていなければなかった光景でしょうから、「共通」というのは大事です。


 恐るべし「シンボル(象徴、表象。ある意味を持つ記号。数字・言葉・身振りなど)」ですね。

写真

 あるところに貼ってあった当たり前の言葉の数々…

 「認知症になっても人生は終わらない」は「認知症になったからといって人生を終わらせないでくれ」と読める。

 「社会とつながる場があると自信が持てる」は「社会から隔離されると自信を失うばかり」と読める。

 「何かして欲しいわけではない。ただ普通に生きたい」は「何かしてもらうばかりでは普通に生きられない」と読める。

 「徘徊ではない、目的があって歩いている」は「目的をもって歩いていることを徘徊(目的もなく歩き回る行為)と言うのは人権侵害だ」と読める

 僕は見てすぐにそう読みましたが、皆さんには、どんなふうに読めましたか。

【前の記事】

最近あれこれ

【次の記事】

眠い・だるい