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現場のソーシャルワーカーからのメッセージ

第4回 障害者福祉の現場で働く

社会福祉法人清樹会 地域生活支援センターすみよし
主任相談支援専門員 山口 麻衣子

地域生活支援センターで働く精神保健福祉士の仕事

 私が働く地域生活支援センターは障害のある人やその家族の相談支援を行うところであり、障害のある人が日中活動する場を提供するところです。元々は精神障害のある人の社会復帰施設でしたが、法律が変わって、今は障害種別を問わずに幅広く相談支援をする機関となっています。
 私の仕事は相談支援専門員ですが、中でも私が精神保健福祉士として携わっているのが、「地域移行支援」です。全国には精神科病院で長い間、入院生活を続けている人たちが17万人いると言われています。医療職や福祉職がそういった方々の退院を応援したいと思っても、さまざまな事情や不安によって、ご本人やご家族がなかなか退院に踏み切れないという現状があります。そんなときに利用できる障害福祉サービスとして地域移行支援があります。
 この支援では、本人に会って、どんなことが不安なのか、何が解決すれば退院して地域で暮らそう、と思えるようになるのか、たくさん話を聴きます。そして、病院スタッフと連携をしながら、本人の不安が安心に変わるように、本人が希望する暮らしの実現に向けて、退院を応援していきます。例えば、住む家を探したり、退院して日中に活動する場所の見学や体験に同行したり、新生活に必要なものを一緒に買いに行ったり、役所に行って手続きをしたり、さまざまなサポートをします。「もう、一生病院で暮らす」と決めていた人が、「退院したい」と思えるようになり、そして、実際に退院して地域で生き生きとその人らしい生活を始められるようになったり、退院できたことを喜ぶ姿を見たりすると私たちも嬉しくなります。こんな風に、入院中からかかわり、少しずつ変わっていく本人の人生に伴走ができるこの仕事はとてもやりがいがありますよ。

新人さんに期待すること

 入院の先には退院がある、というのは当たり前のことです。それでも、なかなか長期入院の人たちが減らない現状があります。皆さんに期待することは、そこに課題意識を持って、医療職とともに、誰もが安心して暮らせる地域づくりに取り組むとともに、長期入院している人でも必ず地域で暮らすことができる可能性を信じてほしいということです。
 それから、地域移行支援に限らず、これから先、いろいろな職種の人たちと連携・協働をして、本人を真ん中においた支援をすることになると思います。この仕事は一人では決してできません。だからこそ、人とかかわる力を大切にしてほしいと思います。つながりやご縁を大事にすることはもちろんですが、本人の希望する暮らしの実現に向けて多職種がそれぞれの視点を学び合い、気付き合いながら意見交換すること、そういったことを遠慮なく共有し、成長し合える人たちをたくさん増やしていくことが、この仕事をしていく上でとても大切だと思います。

おすすめの書籍

 今、読んでおくといいな、と思うのは、『多職種連携の技術(アート)―地域生活支援のための理論と実践』(中央法規,2014)です。
 私たちは本人を真ん中にチームによる支援を行うことが多くあります。そんな中で、より本人を理解し、現状を共有して、さらに良い支援をするために多職種で集まって、「事例検討会」をするのですが、この本では(故)野中猛先生のことや野中先生が編み出した事例検討会について書かれています。この仕事をしていく中で、いつの日か「野中式事例検討会」に出会うことがあったら、ぜひ、この本を手に取って欲しいと思います。多職種が連携することの意義が理解できるだけでなく、本人を理解することの重要性、人が人を大切に想う気持ちがこの仕事には不可欠であること、この仕事は「人」が創り、育んでいくということを実感できる一冊だと思います。

 今だけでなく、この先もずっと役に立つ1冊になると思います。

多職種連携の技術(アート)―地域生活支援のための理論と実践