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石橋先生の受験対策講座

石橋 亮一(いしばし りょういち)

忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。

プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)

介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。

第44回 第35回介護福祉士国家試験
筆記試験を振り返って(前半)

 こんにちは。昨年4月から今年1月まで、筆記試験の受験勉強をご一緒させていただいた石橋です。受験された皆さんにおかれましては、本当にお疲れさまでした。結果はいかがでしたでしょうか。
 全体の内容として、「社会の理解」や「発達と老化の理解」など、例年同様あるいは例年に比べて、出題の幅が広く、難しく感じる科目があったかもしれません。また近年は、実務・実践的な表記での設問が増えており、今回も、現場で出会う利用者などについて、細かく作り込まれた事例問題が複数出題されました。その上で、介護の仕事に必要な、知識、技術、理念について、一通り出題されたという印象です。
 今回と次回の2回にわたり、筆記試験を振り返ってみようと思います。受験した方、これから受験する方、各々の立場で参考にしてください。今回は、「午前」の問題です。なお、解答案については、こちらをご覧ください。


人間の尊厳と自立

 人間の尊厳とは、「人間が生きている存在として、その生命や生活が、尊く厳かで、侵してはならない価値のあるもの」ということです。また、自立とは、「援助を受けていてもいなくても、自らの生活を、自己選択、自己決定、自己責任の原則で管理していること」をいいます。介護福祉職は、介護が必要な利用者の、尊厳を保持し、自立を支援する役割を担います。
 その実践にあたり、「福祉用具の活用は、利用者と相談しながら進める」「(利用者と)一緒に交通経路や会場内の状況を確認する」ことを適切とする設問が、出題されました。

人間関係とコミュニケーション

 コミュニケーションとは、「複数の人間が、意思や感情、情報などの伝達を行い、互いに理解を深めてわかり合うこと」とされています。本科目では例年、利用者やその家族との良好な人間関係(信頼関係)を築くために必要な、対人サービスにおけるコミュニケーションの基本について問われます。今回は、「(介護福祉職が利用者に対して)自分から進んで自己紹介をした」という自己開示について、事例問題として出題されました。
 また、新しいカリキュラム(出題基準)により追加された項目「チームマネジメント」からは、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)からなる業務改善手法であるPDCAサイクル、上司・先輩が部下・後輩に対して日常業務を通して指導教育を行うOJT(On the Job Training)について、出題されました。

社会の理解

 本科目では、介護や育児など生活上のニーズ(生活課題)に対して、税金(公費)や保険料を投入して解決を図る、社会保障制度(社会保険、国家扶助、公衆衛生及び医療、社会福祉で構成)について出題されます。例年、出題頻度が最も高いのは、社会保険の1つである介護保険制度です。今回は、要介護認定における要介護状態区分(要介護度)の変更申請先(介護保険の保険者)、介護保険サービスの情報取得先(地域包括支援センター)について、事例問題として出題されました。
 出題頻度の高いものには、障害者総合支援法もあります。今回は、利用者が最初に市町村に行う手続き(支給申請)や、利用者負担の考え方(利用者の負担能力に応じて負担する)について、出題されました。
 また今回は、地域福祉の推進を図ることを目的とする「社会福祉協議会」を定める社会福祉法の他、「個人情報を第三者に提供するときは、原則として本人の同意が必要である」ことを定める個人情報保護法、「虐待を発見した養介護施設従事者には、通報する義務がある」ことを定める高齢者虐待防止法などについて、出題されました。
 障害者基本法に規定する「社会的障壁の除去」として、聴覚障害の学生に対して「試験監督者が口頭で説明する内容を書面で渡す」といった合理的配慮が求められています。

こころとからだのしくみ

 今回は、からだのしくみから、大脳の後頭葉にある機能局在(視覚野)、立位姿勢を維持するための筋肉(抗重力筋:大腿四頭筋)、上行結腸の次に内容物が通過する部位(横行結腸)について、こころのしくみから、喪失体験による精神的・身体的反応(グリーフ)について、出題されました。
 一方で、本科目は例年、「発達と老化の理解」や「生活支援技術」など、他の科目で学んだ事柄を組み込んだ出題が見られます。今回は、ライチャードによる老齢期の性格類型に関する事例問題や、廃用症候群で起こる可能性があるもの(うつ状態)、褥瘡の好発部位(仙骨部)、口臭の原因になりやすい状態(歯周病)、誤嚥しやすい高齢者の脱水予防のために確認すること(摂取している水分の形状)、高齢者の睡眠薬の使用(翌朝まで作用が残ることがある)、死が近づいているときの身体の変化(喘鳴)などについて、出題されました。
 学習範囲が広く、難しく感じる科目ですが、テキスト(受験参考書)や過去問題集、「けあサポ」などでの受験勉強を通して、学習したことを科目ごとに整理し、各科目での学びを関連づけながら、1問でも多く正解にたどりついていればと思います。

発達と老化の理解

 本科目は、介護の原因となる、こころやからだの老化や、老いて患う病気・障害などの知識が問われます。今回は、加齢の影響を受けにくい認知機能(意味記憶)や、高齢期の腎・泌尿器系の状態や変化(尿の濃縮力が低下する)、老年期の変形性膝関節症(女性のほうが男性より罹患率が高い)、高齢者の脱水(体重が減ることがある)などについて、出題されました。
 人の成長・発達という内容から出題された、社会的参照やコールバーグによる道徳性判断、子どもの体重が出生時の約2倍になる時期(生後3か月)に関する設問とともに、少々難しく感じたかもしれませんが、学校での学習や受験勉強、実務経験などをふまえて、1問でも多く、正答できていればと思います。また、他の科目も同様に、本講座の第3回(参照)と第43回(参照)で助言した、「正しいもの(適切なもの)を1つ選べ」という問題形式に対して、「正しいもの(適切なもの)を1つ探すとともに、誤っているもの(適切でないもの)を4つ消す」ことで、正解を導くことができましたでしょうか。

認知症の理解

 見当識障害に関する質問(「私たちが今いるところはどこですか」)、アルツハイマー型認知症のもの盗られ妄想(本人の不安から生じることが多い)、慢性硬膜下血腫(抗凝固薬の使用はリスクとなる)といった、認知症の原因疾患別の特徴や、認知症に関する知識が、アルツハイマー型認知症の利用者に関する事例問題とともに、出題されました。
 また、本科目では、前述以外にも、認知症に関連する様々な事柄が出題されます。今回は、認知症施策推進大綱の5つの柱(普及啓発・本人発信支援)、ユマニチュード(「立つ」とは、立位をとる機会を作ること)、認知症サポーター(ステップアップ講座を受講した認知症サポーターには、チームオレンジへの参加が期待されている)、認知症ケアパス(認知症の人の状態に応じた適切なサービス提供の流れをまとめたもの)、認知症ライフサポートモデル(認知症の人本人の自己決定を支える)と、比較的多く出題されました。

障害の理解

 上記の2科目「発達と老化の理解」「認知症の理解」が、およそ介護保険制度の利用者を想定しているのに対して、本科目では、障害者総合支援法の利用者において、介護の原因となっている病気・障害などの知識が問われます。今回は、四肢麻痺を伴う疾患や外傷(頸髄損傷)、学習障害の特徴(読む・書く・計算するなどの習得に困難がある)について、出題されました。加えて、脊髄小脳変性症の症状(運動失調)や、統合失調症の利用者の支援に関する事例問題が出題されました。
 また、本科目では、前述以外にも、障害に関連する様々な事柄が出題されます。今回は、ストレングスの視点に基づく利用者支援(個人の特性や強さを見つけて、それを生かす支援を行うこと)、自立生活運動(IL運動:自分で意思決定をして生活する)、障害者虐待防止法における著しい暴言が当てはまる類型(心理的虐待)、上田敏の障害受容のモデルにおける受容期の説明(障害に対する価値観を転換し、積極的な生活態度になる)について、出題されました。事例問題では、障害者総合支援法で規定する(自立支援)協議会や、多職種連携による支援に関して出題されました。
 障害について幅広く出題され、「社会の理解」とともに例年、難しく感じる科目ですが、何問くらい正答できましたでしょうか。

医療的ケア

 第29回から始まり7回目の出題となった本科目は、いかがでしたでしょうか。
 消毒と滅菌に関して、「滅菌物には、有効期限がある」。成人の正常な呼吸状態として、「胸腹部が一定のリズムで膨らんだり縮んだりしている」。喀痰吸引を行う前の準備として、「利用者への吸引の説明は、吸引のたびに行う」。胃ろうによる経管栄養での生活上の留意点の説明として、「口から食べなくても口腔ケアは必要です」。経管栄養の開始後に嘔吐した利用者に対して、すぐに経管栄養を中止して、看護職員が来るまでの対応として、「誤嚥を防ぐために顔を横に向けた」といった、医療との密な連携を必須とした、医療的ケアにかかる知識や技術、留意点などについて問われました。
 テキスト(受験参考書)などによる学習や、学校や実務者研修等での演習などを思い起こしながら、冷静に正解を導いてくださっていれば何よりです。

 次回は、「午後」の問題について確認します。


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