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認知症カフェをきっかけに、“地域を変える”



 編著者の矢吹知之先生は、40代半ばの研究者です。先生とは、2016年に『認知症カフェ読本 ―知りたいことがわかるQ&Aと実践事例』をご執筆いただいて以来、約2年半ぶりのお仕事でした。
 矢吹先生は、ご自身で認知症カフェを企画・運営されているほか、認知症カフェの発祥の地であるオランダや独自の展開を見せているイギリス等に何度も渡り、多くの認知症カフェに足を運び、その様子を見て、聞いて、さまざまなことを感じてきていらっしゃいます。そのなかで今回、とうとう認知症カフェの創始者であるベレ・ミーセン先生に、“共著”という形でご協力をいただけることになりました。「ベレ先生にご協力いただくことで、認知症カフェの哲学、スピリットを力強く伝えたい」と矢吹先生は熱く語っておられました。

 矢吹先生とお仕事をさせていただくなかで、ずっと感じていたことがありました。それは、認知症カフェについて、なぜ、これほどまでに熱く、丁寧に、長い時間をかけてかかわっていらっしゃるのか、その動機はどこにあるのかということでした。
 今回、本書の「はじめに」において、その背景にある思いを明かしてくださいましたので、ここで改めて紹介したいと思います。一人の職業人として、福祉の業界でお仕事をさせていただいている者として、大切なことを学ばせていただきました。

 「同世代の認知症の人とともに活動を始めて4年になります。正直にいうと、その活動のなかで、さまざまな焦りや葛藤を感じていたように思います。もちろん以前から認知症の人の声に耳を傾けていたつもりでしたし、パーソンセンタードケアや本人主体という考え方を学び、熱をもって語っていました。しかし、具体的に何かが変わるような行動ができていただろうか、彼らの声に賛同し、理想を唱えていただけではなかったかという焦りです。
 「本人が主役」の時代に、私たち専門職ができる一つの活動が「地域を変えていく」ことなのかもしれません。地域を変えることは簡単なことではありませんが、「地域で支えましょう」「認知症の人の声に耳を傾けましょう」と唱えるだけではなく、地域の人に具体的にイメージしてもらえるようにかかわる必要があります。
 認知症カフェになじんでいく認知症の人と家族の姿を見て、地域の人が何かを感じるような場面を演出することは、専門職の果たすべき役割の一つであると確信しています。「本人が主役」であることを、関係者だけではなく、地域全体に広げていくことが認知症カフェの大きな役割であると思うのです。」

 (本書はじめに―「認知症の人が主役」の時代における専門職の役割 より)

 本書では、20年先の“継続”に向けて、「認知症カフェの哲学」「おさえておきたい原則」「継続のポイント」をわかりやすく丁寧に解説しています。認知症カフェに興味のある人、運営に不安や迷いのある人に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

(第1編集部 須貝牧子)

地域を変える 認知症カフェ企画・運営マニュアル
おさえておきたい原則と継続のポイント

編著者:矢吹知之、ベレ・ミーセン
サイズ:B5 206頁
価格:2,200円(税別)