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おもいで栞を作ろう
――認知症に寄り添って生きる わたしたちにもできること――

 「おもいで栞」は、認知症のお年寄りの人生の一つのエピソードを、思い出の写真や品物と一緒に短い文章で表すものです。少しの知識と心構えは求められますが、誰でも気軽に、実は、今日からでも取り組める、ハードルのきわめて低い取り組みです。
 「おもいで栞」は、認知症のお年寄りがときどき取り出して昔を懐かしんだり、周りの人に自分のことをよく知ってもらったりするためのきっかけとなるので、認知症カフェなどでは、興味深い実践になることでしょう、
 NPOむすびは、「おもいで栞」を認知症のお年寄りと接する機会の一つにできればと願っています。
 試しに、「おもいで栞」を作成してみませんか。

荒川直美(介護支援専門員・介護福祉士)
プロフィールNPO法人むすび(居宅介護支援事業所)・荒川直美(介護支援専門員・介護福祉士)
〒179-0072 東京都練馬区光が丘3-9-3-206
Tel:03-6904-3275、03-5967-2141
Fax:03-6904-3276
URL:http://musubi-tasukeai.jimdo.com/

第2回 「おもいで栞」の作り方

 第1回でお示ししたように、「おもいで栞」には、さまざまな意義があります。
 ぜひ、試しに作ってみていただきたいと思います。
 以下、簡単にその作り方をお示しします。

(1)準備しよう

 インタビューは緊張するもの。
 相手も緊張しています。
 少しでも気持ちよく話をしてもらえるように、事前準備をしましょう。

筆記用具・メモ帳

 会話すべてを記録することは難しいでしょう。
 特に認知症のお年寄りには、集中力が切れてしまわないように目を常に見て話すことがポイントです。
 記録することだけに夢中になると、会話が続かなくなってしまいます。
 メモ帳に会話の中のキーワード(例えば固有名詞や数字など)を大きく書いて記録していくイメージで。

カメラ・自己紹介用「おもいで栞」・話を引き出すきっかけを作るもの

 話を聴くときには、多くの引き出しをもっておきたいものです。
 認知症のお年寄りは、具体的なイメージをもてると話しやすくなります。
 きっかけとなる品物や思い出のある写真を探していただいたり、いくつか質問を考えておくこと。
 事前に準備できないときは、お会いしたときに、グルリとあたりを見渡して、話題となりそうなものに目を光らせましょう。

(2)話を聴こう

 自分の栞を見ていただき、挨拶から始めましょう。
 毎回、「話したくないときには話さなくてもいい」ことを伝えましょう。
 事実と違う話でも修正する必要はありません。
 今どのように思っているのかを知ることが大切なのです。
 必ずたどり着く言葉、繰り返す言葉はありませんか。
 そこに、本人のこだわりがあります。
 相手の言った言葉を繰り返してみると、新しい話が出てくることもあるでしょう。

(3)写真を撮ろう

 相手のどんな雰囲気を伝えたいですか。
 どんな写真があったら、これから作る「おもいで栞」が充実しそうですか。
 撮られるのが嫌な方には無理強いしないこと。

(4)まとめよう

 栞に入れたいエピソードがたくさんあっても、読みやすさを考え、文と写真を入れていきましょう。
 この1枚の「おもいで栞」が積み重なり、話し手の「自分史」になるかもしれません。

(5)出来上がった「おもいで栞」を相手と一緒にみよう

 出来上がった栞を一緒に見て、「そうそう、そうだった」「ここが違う」などと話しましょう。
 話が広がり、また違うエピソードを聞くことができるかもしれません。

辛い経験を聴くと、思い出すこと

 なかには、想像もつかないような辛い経験を乗り越えてこられた方もいらっしゃいます。
 その経験を話してもらうことは、ご本人にとって果たしてよいことなのだろうかと悩むときがあります。
 相手の様子をうかがいながら、「大変な経験をされてきた」「よく乗り越えてこられた」と気持ちを受け止めましょう。
 その姿勢がまずは大切なのではないかと思います。

その記憶をキャッチしたのはあなた

 認知症のお年寄りの心のポケットにしまわれた記憶は、誰がどうつむぐのかによって、それぞれ異なってきます。
 一人の人にインタビューをしても、聞き手が違えば決して同じ「おもいで栞」にはなりません。
 それが、この取り組みの魅力ではないでしょうか。

 次回は、NPO法人むすびで作成した「おもいで栞」の実際をご紹介します。