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和田行男の「婆さんとともに」

事実真実&実感真実

 日本訪問歯科協会の研修会で、僕の話を数回聞いて、守口憲三理事長(歯科医師・歯学博士)が「和田さんの言っていることは大きくは6つですね」とまとめてくれた。
 研修のお題は「認知症の患者とのコミュニケーション」であるが、ほとんどの時間を参加者(歯科医師や歯科衛生士)からの質疑応答としたので、実際に困っていることや疑問に思っていることに答える内容になり、話の中身としては「思いよう」「手立て」「仕組み」など多彩であれたと僕は思っている。だからまとめが6つにもなったのかなと自負している。

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 理事長がまとめてくれた中で僕がめちゃ気にいったのは、「事実真実」と「実感真実」という「二つの真実」の話で、理事長の例示がわかりやすかった。
 地球は太陽の周りをまわっている。これが事実真実。
 ところが僕らは、太陽が東から昇って西に沈むというように、まるで太陽が地球の周りをまわっているかのように思っている。これが実感事実だというのだ。
 これを婆さん支援の僕の話に落とし込むとこういうことだ。
 失禁している婆さんに「パンツを取替ようか」と声かけると「そんなもんしてへんから大丈夫」と答えられるような場面がある。
 事実真実としては「おしっこが漏れている」のだが、婆さんにとっての実感真実は「出ていない」ということだ。
 僕は、事実はどうあれ婆さんが言っていることは婆さんにとっては正しいことで、それを「あんたは間違っている。事実はおしっこが出ているんや」と言ったところで意味はなく、それを受け止めることが大事であると話をしているが、この「実感真実」を受け止められず「事実真実」を強調するようでは、認知症という状態にある方への支援はうまくいかないだろう。
 学のない僕はこれまで、こうしたことを「事実と真実」の言葉の使い分けで「事実真実と実感真実」を語っていたこともわかったので、これからは教えてもらったこの二つの真実言葉を使わせてもらうことにする。
 ひょんなことから知り合えた協会と理事長だが、僕にとってはこの言葉を教えてもらっただけでも財産になった。
 医師を前にして好き勝手言ってきたので、もうお声はかからないとは思うが、訪問歯科医の皆さんが、自宅やグループホームで何としても認知症という状態にある人たちの生活をより豊かにするために、あの手この手を考案して尽力している話を聞くことができ、心強く思えた。

 もうひとつこの研修会で改めて思ったのは「難しきかな認知症と歯科治療」である。
 そもそも人は、他人に自分の身体の穴の中を覗かれることに抵抗感が強い。鼻、耳、ケツなどと並んで口もしかりである。
 それでも歯科に自ら行き医師の指示に従うのは「何としても治したい」「何としても壊したくない」からに他ならず、だからこそ、でっかく口を開けることも、口の中をいじくりまわされるのも、ウィーンというドリルの回転音も辛抱できるのではないか。
 もちろん喜んで受けている人もいるだろうが、大方の子どもが嫌がり泣くことを思えば、やっぱり基本は「歯科治療は嫌なこと」なのではないか。
 脳が壊れておらず、自分にために治療を受ける僕らでさえ逃げ腰になる歯科治療である。
 何のために、何をされているのかわからなくなり、嫌なこと、怖いことと思われてもしょうがない歯科治療は難しくて当たり前であり、認知症という状態にない人と同じようにできると思う方が間違いで、難しいからこそ「認知症対応歯科医」が必要になるということだ。
 日本中に認知症対応医師が増殖する事を願っているし、僕らも認知症対応介護職に向けて尽力しなければである。

追伸

 博多は中洲の町
 何と在りし日を彷彿させる映画館に出会う。
wada2013092301.gif

 しかも、「キネマカフェ」という名の喫茶店が併設されており
 ヘップバーンと一緒にモーニング珈琲
 めちゃ豊かな朝やったわ
wada2013092302.gif


コメント


「思いよう」とは「ものは考えよう」(考え方しだい)みたいなことですか?


投稿者: こま | 2014年01月04日 12:59

こまさんへ

 ここで言う「思いよう」とは、考え方次第ということで間違いないです。


投稿者: わだゆきお | 2014年01月08日 08:49

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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