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和田行男の「婆さんとともに」

花実

 腹中で陽気に暴れたロタちゃんとはおさらばし、春の陽気に誘われるように久しぶりに出かけた。
 たまたま桜が咲き誇るお花見の名所を通ったので、時間を停めて見て回ると、目に飛び込んできたのは満開の桜もさることながら、ユニフォーム姿の姉ちゃんたちに連れられた高齢者・高齢者・高齢者、事業所名が書かれたクルマ・クルマ・クルマである。
 ご当地が高齢化率40%という地域性もあるが、よーく見ると介護保険事業所からわんさかと押し寄せてきていたからなのだ。

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 この街には何年も通っているので、通所系であれ入所系であれ、施設の名前くらいは覚えがある。
 まるで雨後のタケノコのように桜の開花とともに繰り出してきたということなのだろうが、微笑ましいなかにもふと疑問がわく。それは、普段は施設の周りでさえ高齢者が外に出ている姿を見かけたことがないからである。
 「和田さん、桜の花見で出ているのだから、いいじゃないですか」
 確かに、暑くもなく寒くもなく風もない春麗の日に、介護保険事業者のクルマひとつ・利用者ひとり見かけなかったら「こんなええ天気やのに、花見にも来ィーひんのかいな」「保険者に外出を止められているんやろか」なんて逆の疑問を抱いたかもしれない。
 しかし、それにしても「外で見かけるのは花見のときだけ」っていうのも「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように」という介護保険法の目的から考えれば哀しすぎるではないか。
 先日も新聞を読んでいたら、自宅で暮らす高齢者の外出支援について書かれていたが、訪問介護の「散歩介護」について国は認めているにもかかわらず、市区町村が阻んでいるケースが多く、実現できないところが多いというのだ(日経新聞4月6日付より)。
 ヘルパーが「買い物帰りの寄り道策をとる」など、なんとなく後ろめたさが残りそうな苦肉の策で対抗しているところもあるようだが、国民の社会生活を応援する専門職に、こんな姑息な策をとらせているこの国が、世界の先進国だというのだからお笑いである。
 つまり、自宅であろうが通所施設であろうが入所施設であろうが、生活支援において日常的な外出=和田流に言えば「社会とつながって生きることを応援する」が皆無に等しいとしたら大問題である。
 実際にはこの地域の介護保険事業者は、日常的に外出支援に取り組んでいるのかもしれず、和田がホントのところを確認もしないままに批評するのは間違っているとは思うが、社会全体への問題提起として寛大に受け止めてもらって考えてほしい。
 どう考えても「花見だから特別に出かける」というのは「特別な時以外は介護保険事業所内に閉じ込めておく。自宅内に閉じ込めておく」ということであり、生活支援の専門職が、国民の利益を守るべき行政の専門職が、その推進者になって疑問さえ感じることなく「こと」に当たっているとしたら、憲法のコンプライアンスに反しているとしか言いようがない。
 事業者団体も介護職の給与など自分たちのことばかり考えて行動しないで、こうした国民の権利が侵害されている事態に対して、自らを戒めると同時に、国民の側に立って行動を起こすべきではないか。
 前述した日経新聞の編集委員は記事の最後に「疑問の残る自治体判断には専門職団体として対抗し、利用者の権利を守るべきだろう」と書いていたが、まったく同感だ。
 名実ともに介護保険が「国民が最後まで国民として生きられることを支える生活支援システム」として開花することを期待してやまない。

 そんな怒りと疑問に悶えながら撮った「サクラ・桜」をご覧あれ。

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お知らせ
大牟田市に学ぶ地域作り

◇主催:東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会
◇日時:5月19日13:30~17:00(受付12:30)
◇場所:中野ZEROホール(最寄駅:JRまたは東京メトロ東西線「中野駅」南口から徒歩約8分)
◇参加費:1000円
◇内容
○基調講演「大牟田市の取り組み」
 池田武俊氏:大牟田市保健福祉部長寿社会推進課長
○シンポジウム「大牟田市に学ぶ地域づくり」
 シンポジスト
 練馬区役高齢社会対策課長 関口氏
 世田谷区祖師谷あんしんすこやかセンター 稲垣氏
 小金井市グループホーム のがわ 高浜氏
 青梅市小規模多機能型居宅介護 福わ家 井上氏
 コーデュネーター
 認知症介護研究・研修東京センター主任研究主幹 永田久美子氏
 アドバイザー
 大牟田市 池田武俊氏
○都市部の介護状況を考える
 介護保険制度『地域係数格差について』
◇問い合わせ:東京都地域密着型サービス事業者連絡協議会事務局 TEL:03-3300-0979
◇申し込み:FAXにて 03-5314-2570 まで
・参加代表者名・人数・事業所名・代表者連絡先(電話・FAX・メール等)を記載して送ってください。


コメント


 和田さん、皆さん、こんばんは。

 私は、今…何かを見失い…大切な何かを探しているところです。
 私は、未熟者で…施設内で電気が外されているオムツ置き場に夕方…新しいオムツをとりに行き、電気がないことを知り、掃除のおじさんにライターで照らして探して取ってきたことが上司にばれ、怒られた経験を持ちます。
 前回の…皆様のコメントを読み自分の浅はかさ加減を大変反省させられました。認知不足を反省しました。
 しかし、今回のことに関しては、どうにもできなくて、鎖につながれた犬のようになっている自分に納得はいきませんが、吠えることもできずに、今の施設に勤務しています。
 私は、昨年の11月ごろ、外が見たいといわれた御利用者の願いを叶えるべく外に出ました。昔、農家をやられていたその方に田んぼを見せたくて施設から出た際に、なんて重大な事をしてくれたんだとヒヤリハットを書かされました。
 その理由は、風呂上りだったことと施設外に出たことです。もちろん、暖かい格好をして外出しました。風呂上りだったことは大変反省していますが、施設外に出ることでヒヤリハットを書かなければならないことには、いまだに納得はいきません。うちの施設は外出できないんです。外出がしたいのであれば、家族の人に連れていってもらってください。というのが上司の言葉で、それがすべてです。
 過去に、桜を見に行った利用者が骨折をして賠償問題になってから、一切の外出は認められなくなりました。家族が来なければ一生施設の中です。それのどこが、人間らしい生活でしょうか? 御利用者は人形ではなく…生きているんです。自分の力のなさを痛感しています。会社の上に改善を提案してみました。それさえも、スズメの涙なのでしょうか…? 私は、飼われた飼い犬に成り下がってしまったのでしょうか…?
 この時期にさえ、外に出られれば、それさえも幸せだと思えてしまいます。外に出ることがすべてではありませんが、外に出られる方が、この時期だけであっても大変羨ましいです。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2010年04月12日 22:45

 先月、いつもの散歩コースから田んぼの向こうに早咲き彼岸桜が見え、歩いて向かう中「ああ、花見いくならもっといいかっこしてくれば良かった!」とのわたしの言葉に、「大丈夫よ!エプロン取れば!」と利用者。
 やっぱり!ですよね。出かける時は当たり前。つい体型隠しに、、。で、桜並木に着いたら、あちこちから婆さんがぞくぞくと、で、やっぱり変!でした。
 土曜日でお彼岸中、よちよちのちびちゃん連れた親子に、孫連れたおじいちゃん、中年のおばさん仲間と大勢いるなか、お揃いエプロン姿の職員て。なんかなじまない感じ。もあり、なんかあれ一枚で、してあげるぞ威圧感 感じてしまった。最近そうでないとこ増えてるみたいですが。
 で、お花見してると、いつもは、他の利用者さんに子供扱いされる、じっとしてられないはるさんが、ちょこちょこ歩きの子供連れたヤンママに「ほら、ちゃんと見てやれよ!気をつけなよ!」と、利用者から世話焼きおばさんに戻ったはるさんを見ました!
 二月末入所の元気な爺さんのおかげで、毎日散歩。午前、午後行く日も。あっちの公園こっちの並木と、7,8回花見したかも。お弁当持ちの花見もちょうど晴れ、超豪華お花見弁当は、スタッフ三人仕出し屋に早代わり!道行く人に注文うける程。手に届く花トンネルの下満喫。そこでも、じっとしてられないはるさんに、歩いてみると道通う人に「どこいくんだい?」と、普通のおばさんはるさんでした。


投稿者: むらさき | 2010年04月13日 00:34

 陽気なロタちゃん、お相手お疲れ様でした。
 桜の写真、癒されます。ありがとうございます。この時期だけの山の色が1番好きです。
 桜の時期にいつも思い出す婆ちゃんがいます。「桜はかしこい。毎年忘れず必ず咲く。私は忘れてしまう。」と言っていた。夏は一緒に花火を見ながら縁側で寿司取ってビール飲んだ。
 リハビリは絶対嫌と言っていたけど、他のばあちゃんが買ってきたバッグが欲しいと言いだし、だったら店に行って買ってこいと話したら、歩く練習をして見事にバッグを買いにいったばあちゃん。ついでにすり鉢も買ってきた。
 意識がなくなったじいちゃんに今までの恨みつらみを家族がいない時に言い放ち、後はじいちゃんのはげ頭をさすったばあちゃん。私はあなたを忘れられない。
 毎日のように、「なんでやねん。決まりも必要だけど今の目の前のこの人、困ってる。何とかしたいやん。」と思います。今自分が持っているツールを引っ張り出して、今の最善を探して支援するだけでいっぱいいっぱいです。正直疲れます。
 でも、自分が折れてしまわないように、必ずチャンスはくるのであきらめず。
 年々図太くなっていく私。まあいいか。


投稿者: まんまる | 2010年04月14日 21:06

まんまるさんへ

 癒される物語をありがとう。
 リハビリに向かって歩く練習をして、かつてできていた買い物を取り戻す。まさにリハビリテーションを絵に描いたような物語。
 ばあちゃんそそったまんまるさん、ステキですね。いやー朝から癒されました。
 折れないように、もっともっと太くなってね。まんまるさん、日本の宝です。リハビリ師である介護職のかがみ!ありがとう


投稿者: わだゆきお | 2010年04月15日 07:54

 和田さん、回復おめでとうございます。病気をしたときに初めて「健康は宝」と痛感します。
 花見に高齢者と職員…良いでないですか!外の空気を吸って木々の花を眺めることで生気をもらう…最高のリハビリですよ。エプロンやネームも外して私服で行きたいですね。先日まで勤めていた特養は制服・ネームなし、ジャージ禁でしたのでよかったです。
 以前テレビで民間会社の介護事業参入の特集をしていました。認知症対応デイで園芸療法(この表現は好きではないのですが…)をしているのですがなんと!鉢への寄せ植えを室内の大きなテーブル上に新聞紙一枚敷いてしているのです(涙)外に出ようという職員は居なかったのかな?おそらく同じテーブル上で昼御飯やお茶を…という流れかと。そうでない事を祈ります。


投稿者: みき | 2010年04月17日 13:05

 こんにちわ
 先日、茗荷谷での認知症介護実践者研修で初めて和田先生とお会いしました
 私は約5年間訪問介護の現場でコーディネーターとして勤務し、この春から認知症対応型通所介護・訪問介護・介護相談支援センターの3事業所を抱える事業所長として勤務する事となりました。
 在宅にこだわりホームヘルパーと一緒に歩んできた中で、現場と請求事務との隔たり・・等 矛盾を感じることしかり・・・
でもこの春から異動になり我が事業所のDサービスの一日を見て愕然としました
 送迎車で連れて来られるなり流れ作業のように手を洗いうがいをしフカフカのソファーに座らされ
 そろったと思いきやラジオ体操の歌、タオル体操
 と毎日お決まりのレク 変化があるのはスタッフの顔ぶれだけで内容は毎日同じである
 先日 和田先生がおっしゃっていたマニュアルだらけのDサービスでした。異動したての私に現スタッフは困っている事ばかり主張してくる。先日も「Hさんがどうしても入浴してくれません!体を支えるのを手伝って下さい」と呼ばれ何をするのか?と思いきや両脇をむんず!と抱え足元に跪いたスタッフが無理矢理片足を持ち上げズボンを脱がした。
 むろんHさんは抵抗する。スタッフ3人とHさんの戦いとなる。風呂に入らないから困っているのではなくて、スタッフの思い通りにならないから困っているのである。私は一言「Hさん怖かったね・・・ごめんね」と言って浴室を後にした。夕ミーティングでも「大変だったでしょう!毎回あんな感じなんです!」と訴えるベテランスタッフ・・・どうしたもんかな?
 今私が毎日消化している仕事は差し戻される稟議書の処理・変更届けの書き方の勉強・人事関連の書類・リスクマネジメント研究会への参加等、各部門の会議への参加・又 その参加した会議の議事録作成等、現場でやらねばならぬ事とはまるっきりかけ離れたものばかりである。何から手を付けてよいのか?私には何ができるのか?
 昨日の先生のお話を伺い歩むべき方向が見えた気がしますが、どうスタッフのみんなに協力してもらおうか?どう進めていこうか?思案中です。
 どうしようもなく困ったら又 御相談します
 よろしくお願いします


投稿者: あおいおっきなうみ | 2010年04月17日 13:29

外出行事。「楽しかった」「また行きたい」の感想も嬉しいけど・・・

○月×日 外出から戻り車がホームに到着。玄関
     を開けるとリビングのソファーめがけ
     て一直線のおじーさん。で~んとそっ
     くり返り一言。「あ~~っやーっぱり
     ウチが一番ええや」
     
     感動です。


投稿者: すみこ | 2010年05月25日 12:36

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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