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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

そして、神戸

 「♪神戸、晴れてどうなるのか~♪」(結末は最後に?!)と先日、神戸に行ってきました。兵庫県知的障害者関係7団体主催の「福祉の集い」に講師として参加したのです。テーマは、「知的障害者の意思決定支援を考える」です。

写真1会場となった神戸メリケンパークオリエンタルホテル

写真2周辺はまさに神戸のランドマーク

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 知的障害のある人の意思決定支援は、「すべての人に意思決定能力がある」という推定が議論の出発点に据えられなければなりません(2012年9月10日ブログ参照)。

写真3会場には大勢の人の熱気が

 意思決定支援は、本人の生活と人生に影響を及ぼす意思決定に可能な限り参加できるように支援することを目的とするものです。つまり、意思決定における困難の程度によって障害のある人に制約を設けることが目的となってはいけません。

 知的障害のある人の意思決定支援においては、「言語と思考」の遅滞に起因する意思決定能力の程度と有無だけに目をとめるのではなく、次のような多元的理解から迫る必要があるでしょう。

1.コミュニケーション支援
 障害特性にふさわしいコミュニケーション支援
2.情報獲得支援
 情報を操作せず、ニーズに見合った情報提供を行う支援
3.価値づけ・思い込みの容認と修正のバランスを図る支援
 成功体験や失敗体験を、生活の質の向上に資する本人の経験値とするための支援
4.意思決定につきまとう葛藤をくぐる支援
 悩む力を育み、安易な即断によらない意思決定を行うための耐性を育む支援
5.客観状況の変化に対応する支援
 かつての意思決定を絶対化せずに、客観状況の変化をふまえて再吟味するための支援

 コミュニケーション支援については、拡張・代替コミュニケーション(AAC)の活用が重要です。AACの活用は、ヨーロッパと比較するとわが国は著しく立ち遅れており、早急な改善が求められるところです。

 情報獲得支援については、意思決定のテーマによって、情報提供を行う人の最適化が求められます。遺産相続をめぐる意思決定が必要な場合には法律の専門家がふさわしいでしょうし、カメラを購入するための機種選定の意思決定支援が必要な場合には、カメラに詳しい人でなければなりません。

 価値づけ・思い込みの容認と修正のバランスを図る支援とは、周囲からみれば不合理な意思決定のようにみえても、「その人らしい」意思決定を尊重するための支援です。
 たとえば、「カメラを購入したい」というニーズの中に、「カメラマンのような格好をしたい」という価値づけが織り込まれている場合を考えてみましょう。カメラマンのような格好を決めるなら一眼レフがふさわしいけれども、本人が一眼レフを使いこなすことには無理があるように周囲は考えがちです。それでも、本人の意思決定を尊重しなければならないというのは、本人の意思決定による成功や失敗の体験が、その人にふさわしい価値観や経験値を形成することになるからです。補足的に修正する方向の支援があるとすれば、いきなり50万円を超える重くて扱いにくいプロ用機材を選択するような場合に、適切な情報提供を行うことでしょう。

 悩む力を育む支援は、成功・失敗の体験をくぐる中ではじめて、「今回の意思決定はどうしたものだろうか?」との悩みが生まれ、そこをくぐりながら熟慮して意思決定するための支援です。

 客観状況の変化に対応する支援とは、状況の変化があるにもかかわらず「あなたが自分で意思決定したことです。だからそれはあなたの責任です」というような、機械的な「自己決定と自己責任」に障害のある人を追い込まないために必要な支援です。

 このようにみてくると、意思決定支援とは、本人の能力の問題に帰結させるのではなく、意思決定過程に「共に生きる」協働作業の質をいかに上げていくのかという課題が核心にあることが分かります。

 さて、「♪そして『集い』が終わり~ ♪そして宴が生まれ~」。「福祉の集い」が終了したら、私をお招きいただいた兵庫県知的障害者施設家族会連合会の人たちと関西の奥座敷―有馬温泉に寄りました。宿は格式のある「角の坊」。

 マツタケの土瓶蒸しや神戸牛に舌鼓を打って、有馬の名湯「金泉」へ。このお宿の金泉は源泉かけ流しです。緊張から解放されて顔はほころび、湯船でしばらく寝込んでしまいました。

写真4マツタケの土瓶蒸し

写真5神戸牛の鉄板焼

写真6源泉かけ流しの金泉

 有馬温泉の歴史は古く、594年に聖徳太子が建立した極楽寺、724年に行基上人が建立した温泉寺、豊臣秀吉の正室ねねの別邸跡といわれる念仏寺(1539年建立)などがあります。

写真7行基上人建立の温泉寺

 鉄分を含む強食塩泉の金泉、炭酸泉の銀泉、ラジウム泉の3種類の源泉が湧出しています。12世紀末に吉野の僧仁西が湯治客のために12の宿坊を開いたことに由来して、「坊」の名つく旅館が多いところに特色があります(現在は、5坊です)。

 そして最後は…(笑)

写真8角の坊の女将さんと


コメント


9月26日はお疲れさまでした。講演ありがとうございました。先生の講演をお聞きして、自己選択・自己決定を行うには、情報・コミュニケーション、意志決定支援なくしては成り立たない。
知的障害者は「言語と思考」遅滞に起因する意思決定能力の程度と有無だけに目をとめるのではなく、多元的理解から迫る必要がある。私にとつては目から鱗です。5年前にデンマークの知的障害者の施設を視察に行った時からコミュニケーション支援にAACの活用が日本は遅れていると感じていました。


投稿者: 由岐透 | 2012年10月04日 10:14

講演会お疲れ様でした。知的障害の息子とのコミュニケーションは90%非言語コミュニケーションで残りの10%の言語コミュニケーションは、二人とも「まーこんな感じかな」で通じています。二人とも大人ですので(?)相手を思いやりあまり突っ込んで考えません。
そして神戸~ 私と同級生の彼女がこんな立派な女将になっているなんて・・・・誇らしいとゆうか、この差はなんでやねんとか(神戸弁で失礼しました)あの後彼女にお礼の電話をさせていただきました。「ご立派な先生でまたのお越しをお待ちしています」とまたご立派な女将弁私としては完敗です。先生また神戸にお越しください。


投稿者: 木村 三規子 | 2012年10月20日 07:16

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

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