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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

グループホームの支援者の皆さん

 この6月7日、千葉県野田圏域のグループホームの支援者を受講者に、障害者虐待防止を中心とする権利擁護の取り組みについての研修を実施してきました。みなさんの熱心な受講態度に加え、講演後には的を射た質問をたくさんお寄せくださいました。とても気持ちのいい研修会でした。参加者のみなさん、お疲れ様でした。
写真1
千葉県野田圏域の研修会

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 今年度、私は日本知的障害者福祉協会さぽーと倶楽部の研修派遣講師を引き受けています。このさぽーと倶楽部は、研修開催に制約の大きいフィールドでも、各支援現場の現実や課題意識に即して研修を実施しやすくするための互助システムです。

 野田圏域障害者グループホーム連絡協議会も、この互助システムを活用して今回の研修会を実施しています。それだけに、せっかくの研修機会を皆さんでとても大切に受け止めておられるように感じました。

 私の話の要点は、分離保護の居室として障害のある人を受けとめる時の留意点と、施設やグループホームの中で不適切なケアを防止するための取り組みの二つです。

 質問は、糖尿病を患う利用者さんに対してどこまで甘いものなどの摂食制限をかけることができるのか、グループホームとしての余暇の取り組みなのか利用者それぞれの余暇の取り組みなのかなど、支援現場で実際に直面する支援課題と不適切なケアに関する問題点でした。

 グループホームは、支援体制の組み立て方によっては、一定規模の施設よりもはるかにフィールドの密室性が高くなります。密室性は親密さを育む条件でもあるため、それだけで不適切なケアや虐待の発生要因と決めつけるのは間違いです。

 一つのグループホームの内輪だけでケアプランをつくり、支援を組み立てる自己完結性が不適切なケアを産みやすい条件となるのです。支援のためのアセスメントとケアプランの策定、そして多様な支援サービスの実施というすべてのプロセスを、地域のネットワークによる営みとしてゆたかにしていくことが何よりも大切です。

 この点では、障害者総合支援法によって義務化された計画相談の実施を活用しない手はないでしょう。閉ざされたフィールドや一部の支援事業者の中でケアプランから支援の実施を内輪だけで充足させるのではなく、障害のある人それぞれの地域生活を豊かにしていく観点から地域連携を組み立てていくことに、虐待防止と人権擁護の取り組みの発展があることは言うまでもないでしょう。

 グループホームの支援者の皆さんと研修会でお話する機会を持つと、「グループホームの世話人は、決して普通のおばさんではない」ことに改めて心を打たれます。「普通のおばさん」のままグループホームの支援者を続けることができるほど、グループホームにおける支援は簡単で甘いものではありません。

 障害のある利用者のニーズが多様で、それに応えていくための高い専門性の必要は、相談支援だろうが、施設だろうが、グループホームだろうが変わりません。この点で、グループホームだけは「普通のおばさんでいい」という何の根拠もない主張した人がいますが、このような主張が制度化されてしまった罪はあまりにも重い。「普通のおばさん」にふさわしい待遇を押しつけたまま、支援現場の難しい課題には応えさせようとしてきただけではないでしょうか。

 とくに、私が留意したいのは、密室性のある暮らしの中で親密さを不断に育むことのできる支援は、支援者に高度なセルフ・コントロールの力が求められる点です。自らの生活者としての常識や感情に流されることなく、常に利用者主体の暮らしの中から親密さを育んでいく支援には、「普通のおばさん」をはるかに超える資質が求められるでしょう。

写真2
質問に応えながら議論する

 グループホームの支援者の皆さんは、「普通のおばさん」から支援者としての歩みが始まったのかも知れません。しかし、実情視察や研修会で支援者としての課題意識をやり取りさせていただくと、多くの人たちが専門的支援者であることに気づかされます。障害のある人の地域の暮らしを支える支援者のひた向きな努力に感銘を受けるとともに、制度的条件整備の貧しさには根底的な疑問を抱きます。

 それにしても、研修会ではさまざまな実情を垣間見ることもしばしばです。
 大きな団体が研修会を企画して、加盟事業者ごとに参加人数を割振りして、それぞれのフィールドは当日の勤務体制とにらめっこしながら非番の職員を研修参加者とする―これでは、組織的な研修会であっても、課題意識の乏しい職員がノルマから参加する姿勢が目立つだけの講演会に終わります。
 人数規模はある程度に抑え、課題意識の高い支援者が自発性をもって参加する研修会の方が、研修効果はやはり大きいと今回は改めて実感しました。


コメント


先日は大変お世話になりました。主催していたものです。

参加者の方からも大変好評で、とてもいい機会でした。虐待防止法が施行されて、グループホームに従事する立場として何に気をつければいいのか、という悩みを聞いていたのですが、そんな声に答えるような内容で、こちらもこの内容で出来てとても満足しております。

今後も何かとお願いすることがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
この度は本当にありがとうございました。


投稿者: のだネット | 2013年06月10日 15:10

今日のグループホームの状況として、グループホーム内での老人への虐待問題や支援者一人あたりの負担が大きいなどの問題をよく耳にする。このような問題は、私のようにグループホームに直接的に関わってはいない人にとっても、決して無関係なことであるとは言えない。なぜならば、グループホームの外側からのサポートが絶対に欠かせないからである。
では、どのようなサポートが必要なのだろうか。私は、この点において上記でも宗澤先生がおっしゃられていたように、研修を実施しやすくするなどして、内部と外部の相互関係を充実させていくことが大切であると考える。外部からのサポートによって、より広い視野で細かい部分まで見ることが出来た時に、問題は大幅に減少していくに違いない。


投稿者: スマイル | 2013年06月10日 17:59

密室と親密さについては、学校にも同じことが言えるのではないか。学級目標を作ったり学級対抗で競技をしたりと、生徒達は自分の学級の中で良い人間関係・団結力を養っていくことを強いられる。しかし「学校に行かなければいけない」という暗黙の了解の中、クラスに馴染めずにいじめられたりして教室という密室にいられなくなってしまう子どもも少なくない。生徒全員が良い人間関係を築けるように、担任教師の技量が重要になってくると思う。


投稿者: じあい | 2013年06月21日 23:42

不適切なケアや虐待の起こる原因はその自己完結性にあるというのを読んで、確かにそのとおりであるなと感じた。何かの集団内において作られ組み立てられたルールは独りよがりな物になり兼ねないし、外からの指摘などがなければその誤りにすら気付きにくいものである。支援者の方々に「普通」をはるかに超える能力・資質を求めるのであれば、外からの支援者への「支援」が必要になってくるのではないかと思う。この国の「福祉」に関する社会問題はまだまだ多いなと改めて実感した。


投稿者: せいか | 2013年06月30日 20:40

以前、介護施設で虐待があり入所者が死亡したというニュースをみた記憶があります。介護、ましてや赤の他人の面倒をみることになるその大変さは並大抵のものではないと思います。グループホームという閉ざされた環境の中で、介護がきちんと行われていないとしたら、障害者や高齢者は本当に逃げ場がなくなってしまいます。その中で外部からのサポートの大事さをあらためて考えさせられました。高齢化がどんどん進行する今、国をあげて介護の問題に取り組んでいく必要があると思います。


投稿者: しーえふ | 2013年07月02日 13:45

障碍者を支援していく中で、確かに専門的な知識や技術といったものは必要でしょうから、グループホームだけは「普通のおばさんでいい」という主張に関しては、私も同様にこれはおかしな主張であると考えました。しかし、これはあくまで障害のない私たちや支援者側から見た考えであって、障害者自身の立場になって考えてみれば違ってくるかもしれません。グループホームへの入居を志望する障害者の方々は、きっと自分たちも障害のない普通の人と何ら変わりのない生活や扱いを求めているのではないでしょうか。高い専門性を望むとするのなら、もっと構造的に専門性の高い施設へと向かうはずです。もし自分が障害者だったら……仮にそう考えてみると、きっと「普通のおばさん」と「普通の私」で「普通の暮らし」がしたいと思う気がします。


投稿者: ランプリマ | 2013年07月02日 22:42

施設やグループホームなどの障碍者施設において、私情を挟まずに常に利用者の立場や気持ちを考えて行動することは大切だと考えます。これは、どんな人と関わる際にも大切なことですが、障碍者と関わる際にはより注意をしなければならないことだと考えます。
障碍者のニーズは多様で、私たちが想像している以上に大変な仕事がこの介護という分野だと思うので、専門性や積極性や自発性がなければ、この仕事は責任感を持って取り組めることではないと考えます。
自発性を持っていることが大前提として、さらに地域や周りの人と協力しながら利用者のために行動していくことができれば、よりよい支援ができると私は考えています。


投稿者: やまけん | 2013年07月07日 14:40

 私は、以前に特別な支援を必要とする方がおられる施設に行かせていただいたことがあります。そこでは一口に障害といっても本当に様々な障害を抱えた方々が暮らしており、その施設に勤務されている方はそれぞれの障害にあった対応を常に心がけていらっしゃいました。おそらくはグループホームにおいても同じような状況なのではないでしょうか。そのような状況では個人の力というものは実に小さく多くの人と協力して行かなければ適切な支援というのは実現しないでしょう。今よりももっと支援する側がお互い情報を交換し合うなど常に協力をする体制が必要だと感じます。


投稿者: たなばた | 2013年07月07日 17:42

家庭内虐待でも支援における不適切なケアでも、トラブルはやはり自己完結性に起因すると確認できた。思い込みが生む支障を防ぐには外部との接触が必要であり、多様な意見との触れ合いが大切と考える。バラエティに富む考え方の導入にはより多くの理解者が求められるので、施設とグループホームの違いすら知らなかった私のような人間が知見を広げることも肝要だ。また、“普通のおばさん”がエキスパートになる過程に興味が沸いた。


投稿者: バニラアイス | 2013年07月11日 05:17

一つのグループホームだけでなく、地域で、また全国で多様な支援サービスを実施していくことの大切さを改めて感じた。また、「普通のおばさん」という表現はふさわしくないという意見にも納得した。多くの専門的知識を備えた支援者をそう呼ぶのはあまりにもひどい。障がい者を精神的、身体的に支えている人たちの存在はとても貴重である。そのことをもっと理解すべきだと思った。障がい者の支援はまだまだ課題が多く、解決するのは難しいテーマだ。より多くの人々がより良い支援を実現するために、協力していくことが大切である。


投稿者: こっこ | 2013年07月14日 22:39

フィールドの密室性は、親密生を高める要因となるが、その反面、その密室性ゆえに自己完結性を帯びるというのは、グループホームに限ったことではありませんがグループホームではよりその傾向が強く現れると思います。先生もおっしゃるように自己完結性を帯びると不適切なケアを生みやすいので、広い視野を持つことが大切だと感じました。また、グループホームの世話人には高い専門性が求められるがそれにみあった待遇がなされていない問題では、国や地域の支援をより強くするなど早急に解決するべきだと思いました。


投稿者: のりゆき | 2013年07月22日 14:25

1つのグループホーム内で独自のケアプランをたてることは私は良いと思っていました。しかし先生のブログを読んで、それは誤りであることがわかりました。一つのグループホームだけだと自己完結性が不適切なケアを生み出しやすいということでしたがなるほどなと思いました。全国の多様なグループホームのケアプランを取り入れていくことが大切だということがわかりました。また、介護者の大切さ必要さもよく学ぶことのできるブログでした。


投稿者: コリラックマ | 2013年07月23日 17:31

障がい者を支援するにあたっての密室性の問題は、グループホームだけでなく各家庭でも見受けられるのは言うまでもありません。グループホームでさえ不適切なケアが引き起こされるのですから、家庭レベルまで規模が小さくなるとさらに深刻なものとなっているのではないでしょうか。それは、他の記事でテーマとなっていた子育てにおける孤独感と似たものがあると思います。こうした密閉された環境での育児や介護は支援者を外部から支えることが大変重要であるにもかかわらず、蔑ろにされている部分でもあるような気がします。また、グループホームにおける"普通のおばさん"の専門性についててですが、根本的に人員不足なために"普通のおばさん"が厳しい労働条件の中で専門的支援者にならざるを得なかったのかもしれません。適正な労働条件の確保をすることも、支援者を支えることにつながってくると考えます。


投稿者: まいく | 2013年07月24日 13:20

グループホームに関して、一つのグループホーム独自のケアプランはあまりよくないということがわかってよかったです。いろんなグループホームの知恵や案を出し合ってより良いケアプランを立てることが大切だということがわかりました。


投稿者: シナモンロール | 2013年07月24日 14:39

先生のおっしゃっている「密室性のある暮らしの中で親密さを不断に育むことのできる支援は、支援者に高度なセルフ・コントロールの力が求められる」という意見には、確かにそうなのかもしれない、と思わせられました。障碍者をサポートするグループホームに限らず、一般に、私たちの所属する家庭も密室性のある暮らしです。家庭の中で支援者たる役割をもつ大人の常識や感情によって、その家庭生活はつくられていきます。そこで虐待が起きるのを防止するためには支援者である大人自身が自分の感情をコントロールすることが必要なのだと思います。グループホームの場合、支援者と利用者とは他人同士であるため、支援者には更なるコントロール力が必要になるでしょう。記事の中で述べられている「普通のおばさん」についてですが、私は「普通のおばさん」というのは、育児や家事を長年やってきたベテランおばさんだと解釈します。長年、自分または家庭内ルールでやってきて、グループホームで支援者になった際、「こんなはずじゃない」ことが起きた時に、それに自分の経験から抽出した解決策で対応するのでは、と考えました。支援者になる人は、障害について、そして利用者の気質や性格などもよく把握した上で共に生活することが必要だと考えました。


投稿者: じゅん | 2013年07月26日 13:36

昨今、地域のボランティア活動で、グループホーム等のイベントに参加して様々な交流を行うことが多くあると思います。その様なボランティア活動はボランティアする側にとっても、グループホームの入居者の方々にとっても貴重な経験になると思うのでとても良い活動だと私は考えます。活動を通して「グループホームで働きたい」「もっと支援に携わりたい」と思う人も現れるでしょう。しかしそれが仕事になると、先生がブログ中でおっしゃっていた「世話人は普通のおばさんではない」ということが重要になってくると思います。ボランティアと同じような心持で仕事についてしまうことが最近のグループホームでの虐待などが起こってしまう一つの要因だと私は考えます。私の祖母も昨年から週一回のペースでグループホームに通うようになりました。実際に親族が利用する立場になり、働いている方々には中途半端な知識ではなくしっかり介護について学んだうえで仕事をしてほしい。そういった思いが強くなりました。


投稿者: ニコラス | 2014年01月21日 23:02

自分は、最初密室ではいやな思いしか生まれないのかと考えていましたが、よくよく考えてみると例えば、大学生活でいうと同じ授業をとっていると自然に知らなかった人と仲良くできるものでした。ですから、密室性であっても親密性が生まれることから、そういったケアプランも必要なのかなと感じました。


投稿者: クロスワード | 2014年01月22日 11:10

グループホームには「普通のおばさん」ではダメであり高い専門性があり障害のある利用者に気を配れてそこにいる役割を果たせなくてはいけないと言うことには理解もできるしそうであった方が絶対的にいいと思います。しかし、「普通のおばさん」と言うスタンスでいることも利用者にとっては、いいのではないでしょうか。自然に人と触れ合うことができ、何気なく会話できる人がいるというのも利用者にとって居心地がいいのではないかと思いました。もちろん「普通のおばさん」だけの役割ではダメですが、普段から自然と話せる存在が周りにいることは心のケアにもつながると思いました。
グループホームにとって「普通で実は特別なおばさん」達のがんばりだ支えられていると利用者含め皆思っていて、感謝していると思いました。


投稿者: ゆん | 2014年01月22日 14:01

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
タイトル:『障害者虐待 その理解と防止のために』
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