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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

ケアマネジャーはいらない?論を考える

昨年から「ケアマネジャー不要論」が、一部の厚労省が主催する委員会などで語られるようになってきました。

とりわけ、介護報酬を検討する昨年の委員会では、ちょっと活発気味だったように思います。
とりわけ“I委員”の舌鋒は鋭く……ちょっと言い過ぎな感も。

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その中身は、「報酬に見合った仕事をちゃんとやっているのか!?」というケアマネの評価に関わることです。
私は傍聴席で、これもひとつの叱咤激励と思いながら聴いていました。

ところが、いささか、ここにきてその印象が変わってきたので、今回はそれについて触れておきましょう。


印象が変わってきたというのは、ケアマネジャーの皆さん自らが、「ケアマネジャー不要論」を真剣に考えるようになってきたことです。
前向きに捉えるならいいですが、ことはそう単純ではありません。

「私たちの仕事はいずれなくなるかもしれない……」という漠然とした不安を現場のケアマネジャーが抱き始めています。
この流れは正直マズイと思いました。

かつて、介護保険がスタートした当初に、もしこのような言説をする委員がいたら、きっと袋叩き(?)にあったことでしょう。
誰に? もちろん、現場のケアマネジャーに、です。

「介護保険は私たちが作るんだ!」
「私たちがいるから、利用者の尊厳や権利が守られて、本来の質の高いケアが実現するのに、一体何を考えているの!!」

このように、気概あふれる人たちが多くいました。
委員が「場違いな発言」をしようものなら、きっと大恥をかいたことでしょう。


しかし、それから12年。当時のような猛者も減りました。
「もしかして私たちの仕事ってなくなるんじゃない?」と思い込まされ、すっかり乗せられている、おとなしいケアマネさんが増えたような気がします。

とても誠実に、利用者・家族に向きあうケアマネジャーは今でもたくさんいます。
私は、そんなケアマネジャーの方々にたくさん出会ってきています。

それなのに、なぜか、どうしてか、「これではケアマネジャーはいらないと思われる」と、不要論の片棒を担ぐ(?)ことを、声高に言う人たちがいます。
でも、このような人たちが、一方で、「この金額ではケアマネジャーはやっていけない」と報酬アップも唱えるものですから、聴いている私の頭の中は、「???」となってしまいます。

「ケアマネジャーはいらない」としながら、「報酬を上げろ」と訴えることのアンバランス感といったら……


先日の目黒区のケアマネジャー研修会で、冒頭にこの話題を取り上げました。
会長の岡島潤子さんが、「ケアプランの様式変更」検討の動きについて情報提供をされたので、これに乗っかっての話となりました。

まずは、ここ10年近くのケアマネジャーつまり介護支援専門員が置かれてきた立場について、私見を交えて振り返ったあと、次のような話をしました。

――「ケアマネジャー不要論」というものがありますが、皆さんはそれに乗っかることはありません。
むしろ、ケアマネジャーだからこそできること、ケアマネジャーにしかできないこと、それらを堂々と発信することが大切です。

私はこう思います。サービスのマッチングや調整ごとだけなら、利用者と事業者、事業者間のやりとりだけで済むかもしれません(あくまで機械的に行うのであれば、という意味です)。

でも、どうでしょう。
この中でヘルパー経験の方はいますか? ヘルパー時代に、利用者さんと腰を据えて、60分間ずっと話を聞いたことはありますか? ありませんよね。
では訪看経験者の方は? 同じ質問です。ありませんよね。処置が終わったら基本的に帰りますよね。
では、医師はどうでしょう? 話をじっくり聞いてくれる医師もいるでしょうが、すべての在宅の患者さんには難しいのではないでしょうか。

つまり、こういうことなのです。

利用者(家族)の自宅に定期的に訪問して、モニタリングをしながら、「相談援助」という支援業務が保証されているのは、ケアマネジャーの方々しかいないのです――


40分~60分、時にはそれ以上の時間、話を傾聴し、心を支え、新たなニーズを導き出し、リスクがあると判断すれば先取りした対応も行う……。

このようなきめ細かい相談型の対人援助業務は、介護保険制度の自立(自律)支援の精神を、最も具現化したサービスではないかと私は思っています。

つまり、訪問介護も通所介護も短期入所も訪問看護もできない、「相談援助」を専門とする仕事だからこそ、利用者や家族、ケアチームが求める「ケアマネジャーのあり方とは何か?」ということを、今の時期、追求することが、とても大切だと考えています。


「ケアマネジャー不要論」に安易に乗せられるのではなく、ケアマネジャーだからこそできる「価値」を具体的に示すことで、社会的にも認知されることに繋がっていきます。

総合的な資源を活用したケアマネジメントによって、市町村の介護保険財政を健全化させたケース(例:介護サービスの工夫や様々な社会資源の活用等で、要介護度の改善や財政負担が減る)などには、説得力があるのではないでしょうか。

また、「ケアマネジャー御用聞き論」(利用者・家族の要望で介護サービスを入れまくるケアマネさんを揶揄したもの)がありますが、一方で、外部サービス利用型の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、支給限度額いっぱいの利用を見込んだビジネスモデルが、当たり前になろうとしています。

あるソフト会社が、支給限度基準額を使い切っていなかったら画面が点滅するというケアプランソフトを、開発したとも聞いています。
「支給限度額詰め込み型プランの達人」のようなケアマネであれば、保険者からレッドカードをもらっても仕方がないのではないでしょうか。


つまるところ、ケアマネジャーは、利用者や家族、ケアチーム、そして保険者にとって、「必要不可欠な存在」だということを、どれだけ現場の実践から、具体的に(統計的にも)アピールできるかが求められているのではないでしょうか?

私の立場は、「ケアマネ不要論は不要!」という立場です。


【ムロさんの写メ日記】

三鷹市のケアマネジャー連絡会の研修です。
「チームでつくるプランニング~その人らしさに着目したケアプラン~」です。
大雨でしたが、90名の方の参加でした。
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まるで、地方都市のケアマネの皆さんに出会ったような、「素朴さ」と「地元っぽさ」あふれる印象でした。
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研修会の最後に三鷹市からのアピール。
それは、五小通り商栄会とコラボして始まった買物難民支援「お買物ヘルパーお助け隊」の活動報告でした。
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チラシの中味がよくできていてビックリ。
何よりワクワクして楽しいですね。
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最後は“目黒区”でのケアマネ連絡会の野呂新太郎さん。
なんと67歳とは……
財津和夫さんがもう少し老けるとこんな感じかな?(周りの皆さんは「そうですねぇ!」と納得。でもご本人はご存知ないそうで)
※前回のブログでご紹介を忘れました……<(_ _)>
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コメント


 昨日受講した研修で、「ケアマネ不要論」という言葉を初めて耳にしました。ケアマネ対象の研修であり知っていて当然の言葉であった為か、深く話題にならなかったのですが、不勉強の私には初めての言葉でした。
 私はデイサービスに勤務して1年経過の看護師です。福祉の世界に飛び込んだもののあまりの酷さに絶望すら感じていました。それではいけないと奮起して改善活動に取り組んでいます。その中でケアマネのイメージダウンに一番心が折れました。その気持ちは今も引きずっており、そんな中、「ケアマネ不要論」を知り、納得しています。一部のケアマネの為にケアマネの存在を否定されることになっているのです。
 実情把握しないまま、いてもたってもいられずこのコメントを投稿します。お許しください。


投稿者: 燃える看護師 | 2012年11月11日 13:13

ケアマネ不要論につては微妙。
必要かもしれないし必要ないかもしれない。
なぜなら明らかに立ち位置が違うケアマネが多いからです。
良く考えてください。介護保険は利用者や家族の要望を聞けば成り立つものではありません。
サービスを受ける側や現場で働く職員がいるからこそ成り立つという面もあります。
急にケアマネが施設に来て来週から利用曜日が減りますとか別の施設に変更します、こんな話が普通に行われています。
現場で必死に関わっている施設に対してこんな話は間違いなくおかしい。
話を聞けば今まで聞いたこともない理由を作りしかもディ側には毎月の報告を求めるケアマネがなぜ、決定事項として話をしてくるのか。
こんなケアマネの立ち位置が許せれるのならケアマネ不要論は賛成します。


投稿者: 萌える管理者 | 2013年09月05日 12:35

ケアマネ不要論てあるんですね。
家族として様々なケアマネさんと関わりました。
祖父母や義祖父母でです。

『40分~60分、時にはそれ以上の時間、話を傾聴し、心を支え、新たなニーズを導き出し、リスクがあると判断すれば先取りした対応も行う……。』

これに関しては必要な理由としてはどうでしょうう?
長時間傾聴したケアマネさん?
先取りした対応?本来ケアマネさんに相談するべき事をケアマネさんに相談しても⁇
訪問看護師さんに相談した方が何でも早く確実でした。

だから絶対的な必要性があんまり感じられないです。
個々の力量が顕著だから統一して欲しい。


投稿者: Anonymous | 2013年10月29日 09:30

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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