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和田行男の「婆さんとともに」

意地とプライド

 僕の同志が「意地とプライド」をかけて、ある婆さんに挑んでいる。

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 ケアマネから「最後の砦」とばかり僕らに相談のあった人で、ご近所からも「いい加減にして欲しい」と暗に「どこかに入れてくれ」と言われては別居している家族が滅入り、どこかに入れようとしては、どこも1日もつかもたないかで「とてもお預かりできない」と投げ出されて家族もケアマネも滅入り、家族としては「もう、どこかの病院に入れるしかない」と諦めかけている人に「小規模多機能型居宅介護事業」という武器を使って挑んでいるのだ。

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 まだ小規模多機能型居宅介護の登録前から「顔見知り」になるための訪問をして、気に入ってもらえたかどうかはわからないが拒まれることがないとわかれば、その次には何かと理由をつけて連れ出し、そのまま施設へつれてきた。
 詳しくはまだ書けないが、その人にとって「そこの通いサービスの場」は最悪に映ったようで、「気持ち悪い」「帰ります」を連発された(※気持ち悪いと言った理由は勘弁してください)。
 この先通いサービスにつなげるのは難しいかなと瞬間的に思ったとしても、そこは身に染み付いた介護専門職としての意地とプライドがムクムク起き上がり、その次には○作戦で挑み、その次には△作戦を考え実践し、それに職員もチームとして呼応し、かかわり始めて数日で、ケアマネも家族も驚くほど関係の構築ができてきている。
 一寸先は闇で、次の瞬間には「会ってもくれない」ことに逆戻りするかもしれないが、この挑む姿勢を後押ししている「何としても病院送りはさせたくない」「まだまだ地域社会の中で生きてもらいたい」「これまでの生活を可能な限り応援したい」という、生きることを応援する介護職としての意地とプライドが、奴を奮い立たせている。
 しかも、ここまで手を尽くしているのに未だ未登録。つまり無報酬なのだが、まだどうなるかわからないのに利用料はもらえないのだ。これも意地の表れである。
 その昔あるグループホームを訪ねたとき、新規入居予定の婆さんが「どうしても家を離れたくない。どこにも行かない」と頑として家から動こうとしないという話を聞いて、そこの責任者がいる前で経営者に「なんなら僕が行きましょうか」と言葉挟むと、その責任者は「いえ、僕が何とかしてきます」と再チャレンジに即行。
 あとで聞いたら「自分の意地とプライドでした。」と笑ってくれたが、そいつは今や僕にとってかけがえのない同志であり、様々に困難に陥っている事業所の修正のため転々とし、結果を残している。まさにプロである。
 勉強しないから知識はなく、人の話を聞かないから成長のない自分だけど、自分の仕事に対する意地とプライドだけは人並み以上にある僕。
 その僕を奮い立たせてくれるのは、「意地とプライドです」と胸を張って言うことができる連中の「やること成すこと」である。
 奴が挑んでいる婆さんが今後どうなるかはわからないが、あちこちの介護事業者・従業者に、この挑みを知ってもらいたくて、詳しいことが書けず読者のみんなに伝わりにくいこと百も承知で、書かせてもらった。
 断ることも、追い出すことも、閉じ込め・封じ込めることも、能力を下げることも簡単。簡単な道は専門職でなくとも歩める道。
 僕が簡単じゃない道を歩もうとするのは、この道で飯を食わさせてもらっている僕の意地とプライドであるが、奴もその類である。


コメント


はじめまして。なんとなく読ませてもらい「あっ、この状況なんとなく似てる!」と感じコメントしました(^^)
介護職の意地やプライドありますよね。何を隠そう私も現場でいろいろあり、いまの現状をどうにかしたいと日々なやんでいます。が、施設としてはもうお手上げだからほかの施設を探せとケアマネに言い、実際家族にも申込するよう話がすすんでいます。もちろん本人無視で…おかげでヘルパーや職員に八つ当たりのような暴言の日々です(苦笑)ですが、私にもプライドがあり、どんな結果になろうと最後までこの利用者と関わっていきたいと頑張っています。
長いコメントごめんなさい。
これからも頑張って下さい!


投稿者: こにたん | 2013年06月26日 23:32

夏に向かって、水分補給を促していますが、なかなか飲んでもらえない入居者さんがいます。
「昔はおいしい、おいしいって飲んでたのに…」と言うベテランスタッフとともに、毎日の水分摂取量と尿量を測定しています。
その方の「お茶を飲んでいた昔」を知らない私は「今、お茶を飲まない」理由を探してみました。
まず、飲まない理由を聞くことから始め、「お茶がおいしくない」「ビールが飲みたい」と返答がきました。

理由がわかれば次の一手が打てるはず。
今年の冬はノロウィルスとインフルエンザで入居者さんを苦しめてしまったが、今夏は熱中症になんかにならせるものかという一念です。


投稿者: わたる | 2013年07月01日 00:31

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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