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和田行男の「婆さんとともに」

拒否

 入浴を拒否されました!
 入浴拒否の方への対応はどのようにすればよいでしょうか?
 他にも、排泄拒否!レク拒否!リハビリ拒否!調理拒否!云々。
 僕らの業界では「拒否」という言葉をよく聞くし、よく使う。
 僕の関係する施設の職員も「拒否」という言葉を使うので、心を痛めるときがある。
 なぜなら、僕自身は拒否という言葉を婆さん支援では使わないし、「拒否という言葉を使わないようにしてはどうか」と研修会などで話しており、その理由は、拒否という言葉に「問題としてとらえている臭」がプンプンするからだ。

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 そもそも「拒否」という言葉の意味は「こばみ、ことわること」だから、「入浴を拒否した=入浴拒否」という言い方は、「お風呂に誘ってもらったけど拒否した(拒んだ・ことわった)」というように、本人が使う言葉であるはずだ。
 「拒」には「相手を寄せつけない」「寄せつけず守る、ふせぐ」という意味があることを考えると、拒否は婆さんが自身の言葉として使うのが正確。
 ところが、介護業界で使う「拒否」という言い方は、決して本人の側から使っている言葉ではなく、「誘った自分たちに何ら落ち度はないのに断られた=断った婆さんは問題」という介護側の意識の表れの言葉であり、突っ込んで言えば「お風呂に入れてやろうと思ったのに断りやがった」という意識から出ている言葉ではないだろうか。
 これは「介護への抵抗」という言葉にも共通で、「あんたのために介護してやろうと思っているのに抵抗するとは何事か」という、介護側が「善」で、それを拒んだ側が「問題」という図式から出発している言葉の使い方である。
 婆さんに拒まれるような誘い方であったり、入浴につながらない状況であれば、誘いに対して拒む婆さんは正しく、拒んだ婆さんは真っ当だという意識をもってすれば、「入浴拒否」「介護に抵抗」という言葉や、その言い方に疑問を感じるはずである。

○入りたくないから拒んだ
○誘われ方(態度や言葉遣い)が気に入らなかったから拒んだ
○誘った人が気に入らなかったら拒んだ
○誘った者の言っていることがわからなかったら拒んだ
○気になることがあるから拒んだ
○気に入らないことが起こったから拒んだ
○理由は不明瞭だが拒まれた
等々

 つまり、拒むには拒むなりの理由があるはずで、理由があるから風呂に入らないのは“ひとの常”である。
 だとしたら、介護側にいる僕らが使う言葉としては「入浴に誘ったけれど○○によって入られなかった・入られようとしなかった」となり、しかも誘った自分に問題があったという自覚があれば「拒まれてしまった・お断りされた」となるのではないか。
 それを「Aさん、入浴を拒否されました」と発表されたら婆さんはたまったもんじゃなく、正しく「Aさんに、入浴を拒まれてしまいました」と、誘った側に原因があることを自覚した言葉で表現するべきである。
 専門職が「拒否」という言葉を「死語」に追いやってはじめて、「現在の介護」は「真の支援」へ進化できるのではないか、僕はそう思っている。
 もう止めませんか、この言葉。




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コメント


本当に≪拒否≫と言う言葉は強烈な言葉と私は常々感じていました。記録に記入するのが簡単だからなのかよく目にします。介護保険の認定調査の項目にも≪介護拒否≫という言葉があり、対応してくれる方(施設の方が多いですが)も当然のように答えられます。「理由があるんではないですか」と苦しまぎれに私は聞きますが・・・。
使いたくないし自分にも言われたくないです。


投稿者: kagayakiフクダ | 2013年06月11日 14:29

私の施設のカルテには「入浴に拒否強く、入浴介助実施せず。」と「本人希望により入浴を中止する。」と2通り記入されています。

和田さんのブログを拝見していて「服薬に拒否があった為、服薬中止する。」と記入されたカルテを見たことがないかも…と、頭を過りました。

「拒否」という言葉から「希望が無かった」と言い換え、希望が無かったら仕方ない…無理強いは出来ないから…と、自分たちに都合良い言い回しをしていただけだったのかと考えています。

「何で入浴してないの?」と入居者さんのご家族やケアマネに聞かれた時の逃げ道にしていたようです。


投稿者: わたる | 2013年06月12日 22:21

この業界は「拒否」に代表されるように、介護する側にとって都合がよく、介護される側にとっては言われたら不快と感じるに違いない言葉のオンパレードだ。僕の嫌いな言葉に「不穏」という言葉がある。この言葉などは、使った時点で、「どのようにケアしていいかわかりません。」と言っているのと同じだし、それを感じの悪い言葉で婆さんのせいにしているという二重の罪があると感じてならない。「不穏」と思われる行動の裏には、「拒否」で和田さんが言うように、絶対に理由があると考えるべきだ。「徘徊」もそうだ。別に婆さんたちは無目的に歩き回っているわけではない。その行動の原因をうまく処理できず混乱する婆さんたちを原因を突き止め対処し安心していただくのが、介護でありケアではないでしょうか。もっと考えてそんな言葉は使わないようにしましょう。そうしないと我々に明るい未来はない(怒)あっ釣りばっかりしているのに偉そうなことを言ってしまった。


投稿者: 釣りバカ介護士 | 2013年06月12日 22:21

《拒否》に違和感ありました。
普段、私たちが今日お風呂やめとこうかな?と思ったり面倒だなぁと思ったりした時に入らないことを決して《拒否》とはいいません。
本人主体や客観的にみてもおかしなことです。
スタッフ主体なんだなあ〜と肩を落として読みます。泣
簡単に済ませるからと安易に書いてるのかな?


投稿者: デキ | 2013年06月13日 01:07

共感です。
でも「拒んだ」「拒んでいる」と記載することも私はあります。
本人を中心に事実を…となると、この表現が適切だと思う場合があるからです。(だいたい迷ってペンが止まるけど)
拒んだと書いても、拒んだことを問題行動だと思ったりはしません。
介護側の思い通りにならないことを問題扱いすることが問題で、単に言葉が変わればいいとは思えないです。

聞こえがいい、見栄えがいいだけじゃなく、もう少し中身を考えてこそ…の専門職でありたい。この手間は人手がなくても決して省きたくないなぁ。。。


投稿者: すみこ | 2013年06月13日 22:27

初コメントです。
使っていましたが違和感はありました。

つい先日
もう長いこと入浴に誘っても断られ入浴されてない方が珍しく「お風呂に入ろる気になってた」のにタイミングを逃しちゃった(ご主人に先に声を奥様より先に訪問看護師さんがかけてしまった)と遠方から帰省中の娘さんが残念そうに話されていました。案の定奥様は時間がたちすぎて諦めてしまい入浴されず…。

訪問看護師に尋ねてみると「ご本人今回も拒否られましたので入れていません」と報告を受けて、いやいや入浴前から入る気になってたのに、なぜ入浴好きの夫に先に入ってもらったのか…とその報告に納得できなかった私です。

私も使わないようにしたいと思います。

”問題”といういいかたも使わないように最近するようになると、そう言われていることが本当に”問題”なのか?ということを感じることがあります。そういう違和感に「拒否」もなると誰も言わなくなるのかもしれませんね。


投稿者: きみきみ | 2013年06月14日 15:00

初めてコメントさせていただきます。

私も拒否という言葉に違和感があります。
入浴拒否と一口に括れませんよね。
私だって初めて行った場所で見知らぬ人からお風呂に入りましょうと誘われても「家で入るから結構です」と言うと思うんです。
それなのに記録に拒否と書かれると利用者が悪者になってしまう気がするので、記録には会話や状況等をそのまま書くようにしています。
後日読んでも状況もわかるし、次回アプローチの仕方の参考にもなると思うのですが、記録という観点から見ると長い!という指摘も受けましたが。。。


投稿者: ドクダミ | 2013年06月16日 18:23

風呂に入ろうが入るまいが、そんなのぜ〜んぜん本人の自由なわけで、そこに「拒否」って概念は存在しないと思う。
「拒否」を使うべき時は「入浴お誘いへの拒否」と正しく使い、拒否されたことを、私達の方がしっかり受け止めなければと思うぅ。
嫌がる入居者を2人の職員が抱えるように、お風呂に連れてった時の入居者の叫びは、明らかに連れていかれることへの拒否であったと思う。
やんわり誘ってやんわり断られることも同じで、決して入浴拒否ではなく入浴お誘いへの拒否なんだと思っています。

拒否や抵抗する姿をみたら、介護側の問題、課題として受け止めたいと思っています。
認定調査で「介護に抵抗」の項目があるなら、それは本人の減点ではなく介護力の減点で、その介護力も専門職の介護力なら仕事の質を問われなくていいのかなぁ。。。と思う


投稿者: ばーばら | 2013年06月23日 01:20

「拒否されて・・・」「拒否があるなら、無理強いしないでいいよ。」う~ん・・・・なんで拒否したかを考えず、拒否したご利用者を非難するとも言える態度の職員を目の当たりにしたことがあります。私たちには、感情があり、その日、その時間、体調、対ひとなどによって、その感情は変わっていきます。職員だけの感情重視で、ご利用者の感情は無視かーいっ!!!と。思うことが多々あります。私も和田さんの意見、思いに共感します。でも・・・この思いを口に出せないでいる自分が一番ダメダメな気がします(涙


投稿者: すずめのお宿 | 2013年07月01日 05:30

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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