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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

3.11以降の出張

 ある障害関係団体の会議に出席するため、先週は博多に赴きました。3.11以降、出張に出るたび、街の様子と庶民の暮らし向きは、東京から西に遠ざかれば遠ざかるほど、東日本大震災と福島原発事故の影響が薄らぐことを実感してきました。
 博多の中州から天神にかけては、いつもどおりの賑わいぶりです。しかし、今回の出張では、この九州でも3.11以降に何か大きな変化が生じていると肌で感じたのです。

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博多の屋台街-相変わらずの賑わいぶり

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 中州界隈の屋台で私が豚骨ラーメンをすすっていたときのことです。地元の20代のサラリーマンが4人連れで暖簾をくぐり、「ラーメン4つ、全部バリカタ」と注文しました。最初は職場をめぐる他愛のない冗談を言い合っていましたが、途中からは九州電力と玄海原発の話でもちきりとなりました。

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ある屋台のラーメン-旨味は濃いが油は少なくあっさりしている、文句なしに旨い

 耳を「ダンボ」にしてみると、「もし玄海で事故でもあれば、唐津のイカは二度と食えんと」などの発言がまじり、締めは「九電と新聞の書くことはもう信用できんとよ」となって、この4人連れ一同はうなずいていたのです。

 別段変わったところのないふつうのサラリーマンたちが帰りがけにラーメンを食べながら交わす会話を聞いていると、3.11以降の変化をそこはかとなく感じたのです。その趣は、ときどきに移りゆく世間の心配事を話題にすることとはいささか異なっています。そこで私は、この違和感の本体が何であるのかを考えてしまいました。

 一つは、福島原発から遠く離れ、直接的な被害はほとんどない九州においても、原発の問題が庶民の暮らしにとって覆い隠すことのできない深刻な事態として受け止められているという点です。「よその地域の他人事」とされていない点が画期的です。

 もう一つは、これまで様々なからくりを通じて維持されてきた電力会社や新聞社の社会的権威が、根底から揺らいでいる点です。大震災、原発事故そして未曽有の経済不況・雇用問題等、庶民の暮らしと命に直結する大問題が続いてくる中で、一体誰のための電力や報道なのかという疑問が否応なく浮上し、これまでの「報道」が電力会社や政府の「広報」と区別がつかないまでの実態ではなかったのかという、大衆的な不信感の高原状態をつくってしまったと思えてなりません。

 実は、博多に入る前日の束の間を利用して、ある温泉に立ち寄りました。

 振り返ってみると、さいたま市の条例づくりの最中から、私が眼球に注射を打つ治療を受け続けて1年余りが経ちました。12回も注射を打ったおかげでかなり快方しましたが、少なくとも年内はまだ一月に1回の注射が待っているのです。休める合間にしっかり休まなければと、真剣に休息をとる(?)ために、とある共同湯を訪れたのです。

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山深い共同浴場で

 そこは、数ある温泉ガイドにもまったく掲載されていない、地元住民の手で古くから大切に守られてきた山深い秘場です。地元の人への挨拶をすませて浸からせてもらうと、湯船でご一緒することになった地元のお年寄りが私に声をかけてきました。

 どこから来たかと訊ねるので「埼玉から来ました」と応えると、すぐに「大震災と原発の被害に遭わんかったですか」と話が転じます。私は埼玉でも一部で液状化による被害や建物被害があったこと、不必要な計画停電(今から思うと「原発が止まるとこんなに大変なことになるのだよ」という、東電の原発存続のための猿芝居のように思えてならない)から「電力使用制限令」による職場の節電に苦しんでいる現状等を伝えると、70歳をとうに過ぎたと思われるこのお年寄りは、次のように言いました。

「もう原発はいらん。田んぼも畑もぜーんぶダメにしよるし、海も汚しよった。原発近辺だけの問題じゃなか。この辺りは数年前から風力発電をはじめよって、3つの集落分くらいの電力を何とか出しとるらしい。これからは、そういうふうに変えないかんとよ」と。

 この共同浴場のある地域は、若年層が流出して高齢化のうんと進んだ地域です。その温泉でたまたま出会ったお年寄りから、オバマ大統領が提唱した「スマートグリッド」と同じような発想の言説を聞くと、驚きを通り越してもう感激です。
 このお年寄りが自らの生活体験の内側からこのような自分の考えを明らかにし、またそれを積極的に他者に言語化するようになったのは、間違いなく3.11からの出来事に由来すると、いささか感慨深い思いを抱いたのです。そして、私はその直後に博多に入り、先述した「ふつうのサラリーマンたちの会話」を耳にすることになりました。

 さて、日本最大のグルメゾーンの一つである博多に来たのですから、美味しいものを頬張って帰らなければ来た甲斐はありません。もつ鍋や鉄鍋餃子などはあまりにもポピュラーだと思い、地元の博多人に点数の高そうなところを探してみました。

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炊き餃子-博多の味にはもう脱帽、べらぼうに旨い

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黒豚あばら軟骨の旨煮-舌の上でとろけます

 ありました、ありました!! 博多の大名は警固交差点近くにある池田屋さんで、美味を堪能したのですよ~。炊き餃子、黒豚あばら軟骨の旨煮、ダルマ鯛西京焼、手羽ウズラの卵詰焼、ゴーヤの塩昆布サラダ…。もちろん、九州の焼酎もよりどりみどりで揃っています(ここは断然おすすめのお店ですが、観光客や出張者にはまことに分かりづらい行き止まりの路地にあるため、事前の場所確認は要注意)。

 九州で耳にした画期的なコモン・センス、お年寄と共にした湯煙、博多ならではの美味、そして今回の本命である障害関係団体の戦略会議を一歩進めたことなどをすべてひっくるめて、眼の快方にも確信を持てる私の短い出張が終わりました。


コメント


 確かに博多の料理は旨いです!旨いですよね!やっぱり博多といったらとんこつラーメンとか、最近でいったらもつ煮や焼きラーメンといったところでしょうか…
 真剣な話題について言及するとしますと…。確かに3.11は未曽有の大惨事であり、多くの被害をもたらしました。しかし、これは記事にもあった通り、多くの人が様々なことについて考え直すいい機会でもあるのではないでしょうか。原発や報道のことだけではなく、
地域コミュニティにおける絆や情報獲得手段は、現に震災後に社会で見直された代表的なものです。起きてしまったことを、そしてその被害に遭われた方の思いを無駄にしないためにも、これを機に、今まで当たり前だったことや正解と思われていたことを見直すべきなのではないでしょうか。


投稿者: 青龍偃月刀 | 2013年07月23日 17:54

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
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