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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

栗の渋皮煮-重曹を使ってはならない!

 栗の渋皮煮-秋の美味求心の旅を重ねて30年。私は、毎年秋になると栗の渋皮煮を作り続けてきました。ところが、この奥深い栗の味わいを台無しにしてしまうレシピが世に氾濫しています。

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渋皮煮にふさわしい栗は、表面が照るように光るものが良い

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 季節ごとの味わいは日本の食文化の源です。このいとおしい季節感は、残念ながら、野菜や果物のハウス栽培によって、どんどん失われてきました。それでも、果樹ものはハウス栽培が難しいためか、一部のミカンを除き、今でも季節の彩をもっとも感じさせてくれます。
 秋の果樹の代表格は、何といっても柿と栗。なかでも栗は渋皮煮を毎年作り続けてきたことから、私にとって人生の盟友といってもいいくらいです。

 栗の渋皮煮との出会いは、学生時代のクリスマスイヴ。クリスマスキャロルと深夜ミサのオルガンを私が弾く緊張の合間に、ある婦人が栗の渋皮煮を差し入れて下さったのがことの始まりでした。

 「こんなに美味な栗の料理があったのか!」

 渋皮煮を一つ頬張った瞬間、眼は点になり、脳内に一撃の稲妻が走ったようでした。味覚とは「美味しさの記憶」だといわれますが、この瞬間にそこはかとなく刷り込まれた味わいを求めて、毎年秋になると渋皮煮づくりを重ねることになりました。

 栗の表面には硬い鬼皮があり、そのひとつ内側に渋皮があります。栗を丸ごと焼き栗や茹で栗にするほか、鬼皮と渋皮をすべて剥き去って調理する栗ご飯、栗きんとん、栗の甘露煮などが栗のもっともポピュラーな食べ方でしょう。
 それに対し栗の渋皮煮は、渋皮をきれいに残すように鬼皮だけを剥いて調理するもので、栗の味わい方としては独自の深みがあります。

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鬼皮を剥いた栗

 最近、ある方から「栗の渋皮煮を作りました」と頂戴しました。ところが、それは渋皮煮の味わいはまったくなく、「渋皮のついた栗の甘露煮」に過ぎない代物です。このような「偽りの渋皮煮」が世に出回るのは、何故なのか?
 その訳は、料理本やインターネット上のレシピのすべてにおいて、栗の渋皮煮では「重曹を入れる」と記していることにあるのではないでしょうか。

 栗の渋皮には、その名のとおり、渋がたっぷり含まれています。この渋を抜くもっとも安直な方法は、重曹(炭酸水素ナトリウム)を入れて煮ることです。しかし、「渋皮煮」というからには、渋を取り去りながら渋皮の旨味をどう活かすのかが鍵となります。ここで、渋皮の渋を重曹で中和してしまうと渋皮煮ならではの奥深い味わいのすべてが台無しになってしまいます。

 重曹で渋抜きをするやり方は、重曹を使わずに真水だけで何回も煮零して渋抜きをする手間と比べれば、うんと短時間でつくることができます。しかし、インスタントに栗を食べたいならわざわざ渋皮煮にする必要はありません。

 「渋皮煮」の本当の味わいを知らない人が、間違ったレシピ通りに調理して、それが「栗の渋皮煮」だと思い込んで周囲の人にも食べさせる。ここで、調理した人から「渋皮煮を作るのはけっこう手間ひまかかるのよ」なんて言われようものなら、もう押し売りか詐欺に等しい。

 このような過ちを正し、「渋皮煮の真のレシピ」を世に伝える必要がある―私は、ほとんど「渋皮煮の伝道師」のような心境で次回のブログを綴ります。(次号に続く)


コメント


ブログを読んでいたら栗を食べたくなりました。来週の記事も楽しみにしています。


投稿者: こーた | 2010年10月12日 15:59

この季節になると、さまざまな栗を使った料理が出てきますよね。
渋皮煮・・・食べたいなあ。


投稿者: 四季舟 三吉 | 2010年10月12日 22:23

栗はモンブランなど、加工したものしか食べる機会がないので、そのままの栗の味は知らないことに気付きました。


投稿者: 森野熊さん | 2010年10月12日 22:27

 重曹を使わない方法があるのですね。ぜひ知りたいです。次回の記事を楽しみに待っています


投稿者: ノラ | 2010年10月17日 22:29

栗って美味しいですよね。

普通にゆでて食べても栗ご飯にしても!!

写真を見てるとおなかがすいてきました!


投稿者: anna | 2011年02月01日 12:17

確かに先生の言われていることも理解できるし、共感できる。しかし、炭酸を使うことがインスタントに過ぎないということは言い過ぎなのではないだろうか?私の実家でも、毎年母が渋皮煮を作ってくれる。その際には炭酸を使って、何度も何度も煮ている。手間をかける時間は違うかもしれないが、美味しくなるように気持ちも込めているし栗もツヤのあるものを選んでいる。また、味のつけ方は甘すぎずに適度な感じが良い方もいるため、味のつけ方も人それぞれであり、そのため煮込む時間も人それぞれだと考える。先生は水だけとおっしゃっていたのですが、それで渋を取ることってできるのですか?できるのであれば、もう少し歳をとったら作ってみたいものだ。先生の次のブログも読んだが、やはり中まで味が染み込みとても美味しそうだった。


投稿者: しー | 2012年12月22日 09:29

 私にとっての秋の味覚といえば、りんごです。しかし実家の方に帰らないと、なかなか自分の好きな品種が買えません。味覚というものは、時間と場所が大きく関わっているものだと思います。
 渋を抜くのはあく抜きと似たようなものだと思っていたので、灰などを入れなくともあくが抜けるのは驚きでした。


投稿者: 鴫嶋 | 2013年01月04日 12:26

先生の主張は正しいとは思いません.確かに重曹を用いると渋皮煮のうまみが減ってしまうかもしれない.しかしたとえインスタントであろうと渋皮煮であることに変わりはなく,逆に重曹を用いた味の方が好きな人もいます.詐欺だというのはそういう人への冒涜だと思います.こだわりがあるのはいいことだと思いますが,自分の価値観は他人に押し付けるものではないと思います.


投稿者: shintaro | 2013年01月08日 01:08

確かに名称は「栗の渋皮煮」というくらしですから、栗本来の独特の渋みが残ってこその栗の渋皮煮となるのでしょう。ただ、先生は「インスタント」と申されておりますが、それは違います。栗の渋皮煮に重層を使うだけで「インスタント」と言うのならば、他の料理はほとんどインスタントの扱いになってしまう気がします。確かに先生の言うとおり本来の渋さを残すならば、何回も何回も茹でては煮汁を捨てて…を繰り返すのがいいのでしょう。時間はとてもかかり、重層を使う場合に比べて時間短縮になります。ですが、重層を使ってもまず皮むきにとても手間がかかります。私の母もよく作るのですが、毎回よく作っているなと感心します。先生の言う本当の渋皮煮が果たして本物なのか…母は手を抜いているのか…そこはひとそれぞれ違う意見があってもいいと思いました。


投稿者: pandaman | 2013年01月09日 00:11


先生の重曹を使った栗の渋皮煮は真の渋皮煮とは言えないといった主張には賛成しかねます。 料理に厳格なレシピは存在しないと考えるからです。ラーメンやうどんなどはダシが違ったりとレシピの違いは顕著です。なぜ渋皮煮だけが一つのレシピにある材料以外(重曹など)を使ったら偽となるのでしょうか。
 料理にはオリジナリティが認められるはずです。重曹を使った渋皮煮はと使わずに水のみで作った渋皮煮、どちらも渋皮煮であって片方が誤りであるといったことはないように私には思えます。
 人の味覚もさまざまであるので重曹を使った方が好きな方もいると思います。栗を食べることが目的ではなく、重曹を使った渋皮煮を食べたいと考える人もいるのではないでしょうか。感じ方は人それぞれであるので渋皮煮のレシピに関してさまざまなレシピ・意見があってもいいのではないかと思いました。


投稿者: みずの | 2013年07月08日 23:24

私は栗の渋皮煮を食べたことが無いので先生のおっしゃる重曹を使わないレシピが真なのか、それとも世に出回っている重曹を使うレシピが真なのかはわかりません。おそらく、古くから伝わる伝統的なレシピがあったり、栗の渋皮煮の定義なるものが存在するのではないかと考えます。しかし、従来の常識が覆り新たな常識となるように、「重曹を入れたほうが手間も少なく、味も悪くない」という主張があるからこそ新たな栗の渋皮煮が世にあふれているのではとも考えられます。どちらが「真の」渋皮煮なのかをはっきりさせる対決の場があれば、ぜひ立ち会いたいと思いました。


投稿者: すっち | 2013年07月09日 16:17

私は、小さい頃に食べさせてもらったかもしれませんが、栗の渋川煮を食べた記憶がありません。ですので、先生のおっしゃるレシピが正しいのかはわかりません。しかし、料理のレシピというのは人それぞれですし、これといった絶対的なものは存在しません。重曹を使った味のほうが好きという方もいるかもしれませんし、詐欺というのは少し言いすぎなのではないかと思います。


投稿者: ラビット | 2013年07月20日 13:17

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

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