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宗澤忠雄の「福祉の世界に夢うつつ」

地域コミュニティの再生と福祉の課題 2

 障害のある人が地域で暮らす「自立と共生」の社会を実現する取り組みは、コウノトリや朱鷺の舞う里山や森を取り戻す壮大な営みに近似したものだと考えています。

 コウノトリと朱鷺は、明治時代まで全国いたるところの里山で飛翔する姿を見ることができました。これらの鳥たちに「生きること」の困難をもたらした原因は、農薬散布や地域開発による環境破壊でした。コウノトリや朱鷺が激減していく時代にとられた当初の対策は、生き残りの鳥たちを捕獲してはケージに保護し、人工孵化を試みて個体数を増やすことでした。
 しかしこれらの取り組みは、人間の一方的な想いに反し、すべて失敗に終わったのです。

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 私たち人間は、長年にわたり、広大な森や湿原を大規模開発や道路建設によって引き裂き、田畑や里山に農薬を散布し続けました。自然の生態系を破壊し、その状態を放置したままで、すべての生き物がそれぞれにふさわしい命の輝きを放つことはありえません。
 この反省にもとづいて現在、コウノトリは兵庫県豊岡盆地で、朱鷺は新潟県佐渡島において、それぞれが大空に舞い田畑で餌をついばめるような、野性への蘇りに向けた努力が積み重ねられています。この壮大で誠実な取り組みは、里山と森に多彩な植生があり、昆虫類、魚類、両生類、爬虫類、ネズミ・キツネ・熊といった哺乳類等生き物の多様性が保障されることによってしか、野生への蘇りが決して実現できないことを私たちに明らかにしています。
 人間を含むすべての生き物が、〈人間-社会-文化-自然〉のつながりの中で生きることのできる里山であるからこそ、コウノトリや朱鷺も「里山の住人」となりうるし、人間には無農薬・減農薬による食の安全がもたらされます。コウノトリがコウノトリにふさわしい命の輝きを見せるとき、ヒトは人間にふさわしい「自立と共生」に希望をもつことができるのです。

 このことと同様に、障害のある人が「地域で暮らせる社会」を実現することは、地域に暮らすすべての人たちが、それぞれにふさわしい多彩な生き方を輝かせることのできるような、地域社会再生への取り組みということができるでしょう。それは、子どもから高齢者に至るあらゆる世代の、単身者や単親家庭を含むあらゆる生活形態の、すべての人たちが「自立と共生」を営むことができるものでなければなりません。
 しかし、これを実現する営みは、自然と人間を作り出した「神」の御業に匹敵するほどの困難に満ちた道となるでしょう。

 地域福祉計画や障害者計画・障害福祉計画を地域に活かす取り組みは、このような「共生の大地」を創造するという壮大な営みであることが求められていると考えます。これらの計画策定の課題は、たとえば、地域の障害保健福祉サービスの拡充を中心とするものであるとしても、「共生の大地」を創造するという視野と見識を持ち得ないのであれば、現在のような政局と経済情勢の混乱の中で、歩むべき方向性を見失うかもしれません。

 以上のような問題意識に立って、『地域に活かす私たちの障害福祉計画-相談援助から築く自立支援システム』という書を出しました(プロフィール欄参照)。障害者計画・障害福祉計画への私なりの真剣な取組みから考察を重ね、さまざまな地域の方に具体的な指針を提示したつもりです。みなさまからの忌憚のないご意見やご批判をお待ちしています。


コメント


 はじめてブログを拝見しました。
 最近、(人間―社会―文化―自然)のつながりの中で生きているということを、ヒトはどこかに置き忘れているのではないかと思えてなりません(もちろん私自身も、多くの動植物に生きることの困難をもたらす原因をつくりだしているヒトの一人にすぎませんが)。
 地球温暖化の影響で海面の氷が解けることにより、ホッキョクグマの生存が脅かされている事実など、環境の悪化やヒトが経済を優先してきた為に絶滅する種が増えているというのはよく知られています。
 そして、地球温暖化との関係が証明されているわけではありませんが、近年のハリケーンや大洪水などの自然災害はヒトが数々行ってきた環境破壊の代償なのではないかと感じています。
 もしも自然災害が起こったときに、一人では動けない高齢者や障がいのある方をどうやって守っていくかという課題も「自立と共生」を考える上で必要なのではないかと思いました。


投稿者: ますお | 2008年12月02日 14:25

 今はどこを歩いていても秋・秋・秋! 自然からの贈り物に心が躍ります。紅葉や落ち葉、おまけに実がなっていたり、落ちていたり…「あ~(自然って)いいな」と豊かな気持ちに浸っている私。
 でもこれって…日々私たちが接する木々や整備された公園は人間がヒトのために造ったものでしかないのですね。

 先生のブログを読みながら、人間の傲慢さと、生きていく、生活していく基準が自分でしかない許容範囲の狭さに、改めて考えさせられています。
 私たちは自分以外の他者を知らなさすぎるために、自分以外の存在を受け入れられないのでしょうか。偏った人間だけの世界が現在の「地域」なのだと感じます。
 確かに障がいのある人が「地域で暮らせる社会」が実現すれば、その地域なり社会は、誰もが快く安心して暮らせる、先生の言葉を引用するならば『それぞれにふさわしい多彩な生き方を輝かせることができるような』地域社会ができることでしょう。
 『共生の大地』を創造する壮大な営みは、誰もが必要としていることであるのに、なぜそれが現実味を帯びないのか…きっと今の私に関係ないと感じている人が多いことが原因の一つなのではないでしょうか。

 自分の存在を認めそして他者の存在も当たり前に認めることが、今の私たちの課題なのだと思います。


投稿者: ラビ太 | 2008年12月02日 23:07

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
宗澤忠雄
(むねさわ ただお)
大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

【宗澤忠雄さんご執筆の書籍が刊行されました】
タイトル:『障害者虐待 その理解と防止のために』
編著者:宗澤忠雄
定価:¥3,150(税込)
発行:中央法規
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