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和田行男の「婆さんとともに」

自問自答

 誰もが「気になる店」をもっており、「いつかは入ってみたい」と思うことだろう。僕もとっても気になっていた店があり、先日やっと入ることができた。

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 気になる店、それは「お好み焼き屋」である。
 近代化されていく町にあって、頑なに「古」を残した造りの民家にのれんをおろしている店である。
 店の中の景色は、僕の子どもの頃の原風景そのもので心わくわくした。

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 お店を切り盛りしてるのは80歳代のご夫婦。
 「何年してるんですか」って聞くと「50年にはなるかね」って答えてくれたが、かなり曖昧だった。
 注文を聞いて紙に書き、その紙を見ながら注文の品を作っていく。
 メニューは大領域として「お好み焼き」「焼きそば」「モダン焼き(お好み焼きの中にそばがはいっているやつ)」の3タイプ。それに「肉と卵入り」「豚肉とイカと卵入り」といったように具によるバリエーションと、「大」「特大」といったように大きさによるバリエーションがあり、それらを組み合わせるとメニューの量はかなりになる。
 作るのはママさん。その手つきは当たり前のことだがプロそのもの。そういう見方をしているのは、僕が80歳代の作り手として見ている証で、80歳代の手つきに感心している証でもあるが、ママさんにしてみれば当たり前の手つきで失礼な話である。
 ママさんは巧妙な手つきで焼きそばを作りながらお好み焼きも作る。見ていると傍らにメニューのメモを置き、それを見ながら作るのだが、僕に何度もメニューを確認してくる。
 「肉とイカと卵入りでしたね」「ハイ」
 「卵入れるんだったかね」「ハイ」
 「モダンでしたよね」「ハイ」
 「肉とイカと卵入りでしたね」「ハイ」
 また大きさも
 「特大でしたかね」「ハイ」
 「特大でしたかね」「ハイ」
 といった具合である。
 これまた失礼な話ではあるが、婆さんとかかわっている人間である僕が、何の違和感もなく「ハイ」と答えてしまうのはどうなんかなと自問自答してしまう。
 きっと「ボケ」とか「認知症」とかをまったく知らない人は、僕とは違った感覚でこのことを受けるはずであるが、僕の中に「80歳代だから」という「受け」があり、そういう見方をしている自分への問いかけであるが、それは「老い」を自然に受け止められている良い受けではなく、「認知症があるかもしれない」という「受け」への自問自答である。
 ママさんは「間違えたらお客さんに迷惑をかける」と考えてのことで、自分の老いを自然に受け止めている証であろう。それがまた追い打ちをかけて、僕に自問自答を投げかけるのだ。
 お金を扱うのはマスターの仕事だが、マスターの計算も時間がかかった。ママさんのメモが読みにくかったのかもしれないが、計算違いがあったので僕のほうから「マスター、これが抜けてるわ」って声かけたほど。
 間違えないように何度も聞くママさん、間違えないように何度も計算するマスター。かかる時間よりも「間違えてお客さんに迷惑をかけてはいけない」を優先する時間の流れは、とってものんびりとしており、こののん気さもまた僕にとっての原風景である。
 きっとこののん気さがあれば、人だけでなく、建物だって車だって、いつまでも現役でいられるような気がする。きっとこののん気さが社会からだけでなく介護施設からも消えてしまったのだろう。高齢者にとって婆さんにとって住みにくいはずである。

追伸
 ご質問をいただいたのでそれにお応えしようと思いましたが、お応えは次週にさせていただきます。すみません。

追伸2
 ヤフーメールのデザイン等がいきなり新しくなったが使いにくくて仕方がない。
 これだけでもかなりのストレスを感じる僕は年老いてきた証かなぁー。これまた自問自答である。ハハハ


コメント


おひさしぶりです。
私、元気になりました。復活して、また新たに、復職しました。
相変わらず、言いたい事を口にだし、注意されてますが、私は現場で、利益までは考えられないので。
私のペースでがんばります。
ここで、話せた事、私には、救いでした。
ありがとうございました。
また、遊びにこさせてくださいね。

そういえば、私は一人でご飯を食べに行くことがなかなかできません。
かなり、腹ペコでも、とおり過ぎます。
一人ごはん、かっこいいな。憧れます。
ここの、店主ご夫妻、うちの両親との会話と同じだ。
と笑えました。我が家は、毎日が、こんなんです。
明日ゴミだけど、もうなあい?とばあさん。
明日の朝までわからん。と子供。
これが、何度も。その間に、明日何時に帰る?
これ誰の靴下だね?など、じじ、ばば二人で質問しまくります。
だからか、うちの子よく言えば、のんびり、悪く言うと、ルーズ(笑)。
でも、母の料理はめちゃくちゃ上手ですよ。


投稿者: 3suns | 2012年03月17日 16:47

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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