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和田行男の「婆さんとともに」

守るべきは何か

 先週のコメントで、nontaさんより「通所介護の管理者がスタッフを守る姿勢として注意を払うべきことは何か」という質問をいただいたが、別件で同様のことがあり、タイミングが合ったので、僕なりに考えをまとめてみたい。

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 まず基本として大事なことは、介護保険法でいう「管理者」と労働基準法でいう「管理監督者」とは必ずしも同じではないことを知っておくことではないだろうか。
 労働基準法でいう管理監督者とは「経営方針の決定に参画し、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」であり、それなりの権限や待遇を与えられていることが前提となる。
 介護保険法でいう管理者とは「指定通所介護事業所の従業者の管理及び指定通所介護の利用の申込み係る調整、業務の実施状況の把握とその他の管理を一元的に行う。当該通所介護の従業者にこの節の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行う。また具体的なサービスの内容等を記載した通所介護計画を作成しなければならない」とあり、いわば事業所を管理する管理職でしかない場合がありうる。
 つまり、通所介護の管理者は「管理職であっても管理監督者ではない」という場合が多いことがあり、その場合は管理監督者が管理者になっているのとは違って、役割を分担しているくらいにしか過ぎないということを理解しておくことが大事だということになる。
 そうだとしたら、nontaさんの気持ちはどうあれ、nontaさんが単なる管理職か管理監督者かでは随分と「守れるもの」が違ってくるということだ。これは自分の法人内における立ち位置の確認でもある。

 次に大事なことは「守る」とはどういうことかである。
 辞書によると、守るとは「侵されたり、害が及ばないように防ぐ」「大切にする」とあるが、管理者は職員を何から守るのか。何に侵されたり、何から害が及ばないようにするのかである。
 ここで逆に質問をしたい。nontaさんは、何をもって「職員を守ろう」とか「守らねば」というように思ったのだろうか。

 東日本大震災という災害が起こったから?
 劣悪な職場環境が原因で身体を壊す職員が多いから?
 横暴な経営者に職員が虐げられているから?
 職員たちにとって都合が悪い職場だから?
 制度等によって職員に無理がきているから?
 利用者に手間がかかって仕方ないから?

 僕の本音としては、それを聞かせてもらえないと漠然としていて答えようがないのだ。ただ、管理職であろうが管理監督者であろうが、法と法の精神を遵守することが「守る」ことの入口だとは思う。
 法といっても憲法、介護保険法、道路交通法、食品衛生法など多種多様にあるが、少なくとも管理職にある者として、経営者から法と法の精神に反するような事柄を求められたら、職員のみならず利用者を守る立場から意見を述べることが必要であり、意見を述べるにはそれなりに自身の検証が必要ということになる。検証するには少しは理屈を知っておかないと「おかしいかもしれない」で留まってしまいかねない。
 ただし大事なことは、この最初に感じる「おかしいかもしれない」という感覚であり、感覚を研ぎ澄ますことを自分に課すことだ。
 例えば、職員が利用者に虐待と思われる行為をしていて、それを見つけたとする。管理監督者に報告したら「職員の立場を守ってやるために行政には報告しないでよい」と言われたときに「それっておかしくないか」と思えるかどうか。
 また、行政の実地指導が入ることになったときに「指導が入る前に○○をしておけ」というような指示を出す管理監督者に対して「それっておかしい」と思えるかどうかである。
 言えばキリがないほどあげられるが、まとめると「守る」とは「何から何を守るのか、何のために守るのか」が根っこにあって、それによっては、たとえ会社といえども大切な職員といえども守ってはいけないこともあるということだ。
 nontaさんの「管理者がスタッフを守る姿勢で注意を払うべきことは何か」を問いかける姿勢や意気込みはステキなことではあるが、「スタッフを守る」ことが通所介護の管理者に求められていることの本質ではないことや、「管理者で守りきれるかどうか」をよく考えてみてはどうだろうか。
 そうすると、おそらくだが肩の力が抜けて、職員だけでなく、利用者、利用者の家族、近隣住民、介護支援専門員など通所介護にかかわりのある人たちの姿がよく見えるようになり、そうなると通所介護の置かれている社会的な位置が見え、管理職としての仕事のありようが描け、「スタッフを守る管理者」という図式にとどまらず、「守らなければならないことは何か」と「管理者で守れるかどうか」が明確になり「守れるものを、守らなければならないものを、守らなければならないときに、守るために共に尽力するのが管理者」であり「共にの相手を描くのが管理者」というようになってくるのではないだろうか。
 また、「スタッフに助けられていることを自覚し、どんなことも自分が逃げない・自分の判断を見直すことを心がけている」ということだが、それは職員として、職業人として、プロとしてとても大切なこと、チームで仕事をする上で基本的な姿勢であり、管理者nontaさんの姿勢は同僚(nonntaさんのいうスタッフ)たちに響いていくことだろう。
 またご意見をください。


コメント


 早速ありがとうございます。
 「スタッフを守る」と思った背景は、スタッフと家族間にトラブルが起こり、苦情が発生しました。そのことの対応するとき、僕が注意点をうまく伝えれていなかったことを棚に上げて、スタッフの行動を責めてしまいました。
 その後、僕のとった対応はまずかったのではないかと指摘を受け、考えた結果が「スタッフに助けられていることを自覚し、どんなことも自分が逃げない・自分の判断を見直すことを心がける」でした。取り組みだしましたが、それでいいのか不安でしたので質問をさせていただきました。
 これから背伸びをせずに自分のできることは何か整理をしてみます。ありがとうございます。


投稿者: nonta | 2011年09月05日 14:06

守るべきは…。そのことを決して忘れずにいさせてくれる。スタッフとして、だから私は守られている気がします。


投稿者: 桃まんじゅう | 2011年09月13日 03:38

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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