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和田行男の「婆さんとともに」

面を接する

 どこの特別養護老人ホームやグループホーム、デイサービスなどでも、利用や入居を希望する人の事前面接をするが、面接というからには「面」を「接する」のが一般的だろう。僕のところとて例外ではない。
 でも、本人と面(つら)をつきあわせることもなく家族とだけで面接を終え、利用や入居してもらうこともしばしある。
 先般亡くなった「かねさん(仮名)」、今頃どうしているのか「とめさん(仮名)」、そういや「げんぞうさん(仮名)」もそうだった。

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 僕の所属する法人の職員にとって、面接はあるにこしたことはないが、できなきゃできないでもかまわない・何とかなると思っているのではないか。
 指揮をとる僕がそうだから、そんなことでごたついていたら「どっち向いて仕事してんねん」って僕から嫌味を言われかねない。
 でも世間を見渡すと、面接を終えないと入居させてもらえない・利用させてもらえないというところがある。ところがあるというのは、そういう考えで運営している専門職がいるということだ。
 そういう話を聞くたびに、そういうところは、かねさんやとめさん、げんぞうさんが申し込んでいたら、さも婆さん達のことを思ってのことだとあれこれ講釈を聞かされた挙句「面接ができない以上、お引き受けできません。」って門前払いされたのではないか。
 僕はそういう事業者・専門職に疑問をもっているが、別の角度から考えると、そっちのほうが妥当で、僕の方が非道なのである。

 介護保険というのは本人との契約が前提で、本人が申し込みもしていないのに何かを利用するとか、どこかに入居するなんていうのは基本的にはあり得ない。
 ということは、本人に何の説明もしないまま・本人との契約もしないままに、利用や入居というのは道に外れているのだ。
 つまり、そもそも論に忠実になればなるほど、本人への説明もなく同意もなく利用させる通所介護は「拉致」であり、説明や同意もなく住まう場所を転居させるのは「強制収容」で、僕はその実行責任者ということになる。
 しかも「尊厳の保持」とか「利用者ほんい」とか「本人への説明と同意」だというような、さも介護保険法は憲法に抵触していません=役人はコンプライアンスの担い手=国民の味方みたいな言葉とそれに基づいた杓子定規な指導がされると、僕のような非道な実行責任者とその下にいる職員たちは現実との狭間で、さらに怒りがわいてくる。
 でも、事前に面をつきあわせることもなく説明や同意もなく非道な方法で利用させたり・入居させたりすることが、わが日本国憲法に抵触しているのではないかと常に疑念をもちつつ、婆さんに申し訳ないことをしていると謝罪の念を忘れることなく、それでも「これでよかったのではないか」と後で思える(思いたいも含めて)仕事をするのが僕らの仕事ではないか。
 入口のところで杓子定規に正論を吐いているだけでは、そもそも介護保険制度の現状が憲法においついていないという矛盾の中では、国民生活を少しでも豊かにする道を閉ざしかねない。
 面接ができないから入居できないとなると、面接が実現するまでその家族の課題は解決できないまま、現状維持・悪化防止無策ということになりかねないのだ。それでは国民に申し訳ない。
 僕は、情報がなくても何とか支援するのが僕らの専門性だと思っているが、それは何も僕らに限ったことではない。僕の見本には医師がいる。
 医師は何ら本人の情報がなくともゼロから情報収集をして治療にあたっていく。あるにこしたことはないが、ないからといって治療しないということはない超専門職である。
 僕も婆さんと出会ったときから僕の仕事が始まると考えており、出会うまでの情報なんていうのはあるにこしたことはないが、ないからといって支援できないわけではなく、情報がない=支援しないなんていう概念そのものがない。
 誰もが他人と出会ってから情報を収集し解析し関係を構築していく。出会う前から情報があって出会っていくことはまれで、友人に紹介された他人であっても、友人からの情報なんていうのはあるにこしたことはないくらいで、逆にその情報が邪魔することもあるだろう。僕らの仕事も同じである。
 面をつきあわせることなく入居してきた、かねさんやとめさん、げんぞうさんは、僕らに面接の意味を考えさせてくれた。
 面をつきあわせるだけでは「人と人のおつきあい」はできないということも、しっかりと僕に叩き込んでくれた。


コメント


ここ数日、夕方雨が降るようになって、少し体が楽になったような気がします。

色々あって、今は介護保険の事業で働いています。当時は、のんびりゆっくり仕事をしようと思っていました。じいさんばあさんとのんびり過ごせると思っていました。

とんでもない!!!

足りない頭や未熟な自分では、悲鳴をあげているじいさんばあさんや家族の役に立てない。茫然としたあの懐かしい頃の私。

専門職として報酬をいただいている以上は、それ相応の支援をしなければ と考えた力が入りすぎた頃の私。

目の前の困っているじいさんばあさんや家族を支援するためにはどうしたらよいか。
日々学んでいます。

最近切羽詰まった相談が続いています。地域で、もっとスピーディーに相談支援できる専門職が増えるように。仲間作りは今も進行中。
ちょっと疲れ気味のまんまるです。
(疲れても、まんまる体型は変わらない。。。)


投稿者: まんまる | 2011年08月18日 20:49

和田さん、みなさん、こんにちは。

 私は、今・・・訳あって前の施設を退社いたしました。今は、ディケアで働いています。と言いたいところですが、結果待ちです。私が、一方的に惚れてしまった所です。オムツの人にもトイレにてしてもらうという考え方に惚れ込んでしまいました。それには、かなりの技術が必要なので、体験期間(お見合い期間ともいう)に沢山のことを学びましたが、一人で行ったことがないので、あぁー、そこに就業したい!!!そして、行いたい・・。お風呂も一回一回流して洗うんです。麻痺側の手の中もタオルで拭いた後、ドライヤーで乾かします。足の指の間も・・・。

 まんまるさんへ
いつも、まんまるさんのコメント楽しく読んでいます。大変でしょうけれど、頑晴ってください・・・。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2011年08月21日 14:47

3月にある研修に参加して思ったこと。研修はデイのレクを教えて頂けるものでしたが、認知症の基礎知識の講義があり、初心者にも分かり易いものでした。しかし、先生様がデイ以外の施設に敵意むき出しなのが残念で、デイで何とかしようとレクを教える。

私、レク嫌いなのにやらされるおばあちゃんおじいちゃんはどうするのか、そもそも他の施設を嫌うのではなく、お互い協力出来ないのか、いいとこ取りしてよりおばあちゃん達の為になる介護を探せないかと思いました。

認知症予防教室を開き、予備軍の方々と関わる中で、いろんなレクをしてますが、多くの人はレク以上に世間話や愚痴を話したい、聞いて欲しいようです。話し相手が欲しいのです。

予防と言うなら、家庭で近所で、話し相手になってあげるだけでも、穏やかに暮らせるのではないでしょうか?

ホームでも、目を見て、話して、お顔に触れて、手を握っているだけで安心感が生まれる様に思います。

介護の世界も全て繋がっているのですね。


投稿者: ごうのつま | 2011年08月21日 16:19

本当は特別なことが必要ではないと、わたしも思います。
小さくても自分にできることをやることが大事で、
それが集まって大きな力になるのだと思います。
何故、専門知識や技が必要になってくるのか。
専門的な「お世話」が必要なのか。人として「人」が必要なのか。
相手と自分との間で今、何が大切なのか。
世の中全体を、より優しい視点で見られるように、動き続けたいと思います。
心を強く、持ちたいです。


投稿者: ねむりねこ | 2011年08月22日 14:11

皆さん こんにちは
昨夜  利用者から頂いたお言葉
「あなた{向き合っている人}が、側に居るだけでいい」と。
「サービス」と捉えるとあれこれ・・・療法、アクティビティを・・と必死に考えて、忙しく動く職員達。もちろん大切なことでもありますが・・・。
本人・家族と面談しても、共同生活が始まって見えてくる難題も多い。
時と場合によりますが、施設側の一方的な・見えない取り決めに左右されないで、必要な方に手を差し伸べるためには、もしかしたら「情報がなくても何とか支援するのが僕らの専門性」と受け入れる体制も整備していかないといけないと思いました。
和田さんのブログを拝見させてもらいながら、目の前の利用者と本当に「向き合って」いただろうかと反省しています、
和田パワーをもらい、さて出動!
職場のばぁさん達から「癒し」を充電してきま~す。


投稿者: なんくる | 2011年08月23日 10:43

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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