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和田行男の「婆さんとともに」

讃え合うチーム

 ある研修会で「チームづくりへ部下をほめることが大切だ」と発表した人がいたので質問をしてみた。
 「ほめるという言葉に代わる言葉を使うとしたら、どんな言葉を使いますか」と。

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 受講生は1年前に介護事業のある部門のリーダーとなり、曰く部下をもった。その部下を含めてチームとしての士気を高め結果を出すために様々に工夫を凝らしたようで、そのひとつとして「ほめることが大切」だということに気づいたと言うのだ。他でもよく聞くフレーズである。
 ほめるとは「人のしたこと・行いをすぐれていると評価して、そのことを言う」とあるが、僕はその言葉の真意はどうあれ「ほめる」という言葉に「高さ」(優劣・対等でないなども含めた和田さん表現)を感じ、使い方に疑問を感じることが多い。
 僕は学校で「お父さん・お母さんをほめましょう」という教え方をされたことがないし、子どもたちは両親を評価することはあっても「親をほめる」という概念がないのではないか。
 例えば、みんなから羨ましがられるようなお弁当に気を良くした子どもが親に「今日のお弁当サイコー」と評価することはあっても、それを子どもは「ほめた」とは思わないだろうし、親も「ほめられた」とは思わず、その時に使う言葉は「感謝する・感謝された」ではないだろうか。
 発表してくれた受講生の課題は「部下とのチームワーク」であった。それがうまくいかなかった原因は「上司として部下をほめられなかったことにある」と自己分析した結果、ミーティング等を通じて部下をほめるようにしたらチームがまとまりだしたというのだが、そのことに異論をはさむ気はない。
 ただ僕が気になったのは、そのチームがまとまらなかったのは上司と部下という関係を「高さで考えて言動していたこと」にあり、うまくいきだしたのは自分も部下も「チームのいち員」であることに気づき、チームリーダーとして横の振る舞い(言動)ができるようになったことにあると自ら発表しているにも関わらず「ほめる」という「高さを匂わす言葉」を気にも留めずに使うからだ。
 これでは受講生の結論が「豚もおだてりゃ木に登る」となりかねない。そこで「ほめる」に代わる言葉探しをしてもらったのだが、僕の質問に戸惑いつついくつか口に出したあと「たたえる」という言葉におきかえてくれた。
 辞書で調べると、ほめるとたたえるは同じのようだが、どうも僕には同じには思えない。ほめる・ほめられるには「上下」を感じるが、たたえる・たたえられるは横並びしか描けない。上司も部下もチームとしてやるべきことを分担しながら、チームとして成果を出すのであり、出した結果は良いも悪いも「お互いさま」のはずだ。
 チームに似合う言葉は「ほめる」ではなく「たたえる」だと僕は考えている。だから「褒め合うチーム」より「讃え合うチーム」づくりを目指しているし、讃え合うチームづくりに障害となりかねない称号など不要だと考えている。だから和田さんと呼ばれるようになりたいし、余談だが教師以外はセンセイ付けしない。
 ほめるとたたえる。同じ言葉なのに受ける印象が全く違う言葉は他にもたくさんあり、あまり意識することなく使ったりするが、それが本質をつかみきれない原因のように思うことが、この例のように多々ある。
 「ほめることが大切」と聞けば良い印象を受けて聞き流してしまいそうだが、ちょっとこだわってみると何かと見え隠れする。
 忙しさを処理してくれる脳だが、ふと足を止められる脳でもありたい。

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電話 080-4308-8910
E-mail kabu7307@yahoo.co.jp


コメント


 和田さん、先日はコメントいただきありがとうございました。

 讃え合うチーム、そうだよね! と思った次第。頭すっきり、重ねてありがとうございます。

 先日から一緒の新人彼女は、「あんた可愛い。」とまた言ってみたら、今度はキュートに笑った。怒らなかった。
 指導するよう言われている職員さんは、「あの子はつかみどころがない。」と言った。「そうね、つかめないね。それがどうした?」と返したら職員さんが?の顔。話をしても目をそらすって。「あんた、自分に目を合わせてくれる関わりしてるのかな。」って返した。
 婆ちゃんの整容中の新人彼女の横に、若い娘大好き爺ちゃん接近。彼女は困った顔で周囲の先輩に視線を向ける。誰も気づいていない。おっと先輩登場、すーっと通り過ぎた。。。
 次の先輩登場、声かけのみで去っていく。彼女の表情は固まったまま。さてさて爺ちゃんの前に行ってにーっと笑ってみた。爺ちゃん同じ顔する。どうやら一旦手をつなぐとしばらく離さないよう。だから彼女としては整容もしたいし、爺ちゃんにも応えたいし困ったよう。爺ちゃん、ハイタッチを何度かすればOKと分かった。
 新人彼女にアイコンタクトで伝えると、彼女もアイコンタクトで返してきた。目、合うじゃん。彼女に目を合わせないのはだーれだ。


投稿者: まんまる | 2011年04月25日 21:06

芸術の話。。。人物像を描くとき、瞳の中に小さな光の点を入れると、より立体的にいきいきとした表情になるそうです。

単なる「目」から「まなざし」に変化する。

おもしろいでしょ!?


投稿者: K | 2011年04月30日 06:58

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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