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和田行男の「婆さんとともに」

一人前の高齢者になりたい

 長崎の夜の街をぶらついていたら「いい店」に出会った。鮨屋である。

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 七人も入れば満席、カウンターだけの小さな店。
 54年間も飲み屋街のこの店で寿司屋を営んできたそうで、マスターは昭和2年生まれの84歳だそうだ。年齢を聞けば思い描けるのは原爆だが、原子力爆弾による攻撃に遭いながらも生き永らえ、今も現役の板さんである。それだけでも元気をいただけそうな鮨屋だが、お味のほうもグー、お値段のほうも客にとってグー。長崎に行く機会があったらぜひとも探し当てて食べてみてほしい。色艶のあるマスターから“元気と美味鮨”をいただけるから。
 そういや被災地からの話を聞いていると、婆さんはみんなへこたれていると思ったら大間違いだそうで、逆に「食べないともたないよ」なんて職員を励ましている姿も見られるそうだ。愛媛の水害の時も阪神淡路大震災の時も同様の話をいっぱい聞いた。僕の23年間の経験からもそれは事実だろう。
 高齢であろうが、認知症であろうが、一律に画一的に同じになるわけではない。高齢であろうが認知症があろうが「それがどうした」と言わんばかりの力や姿に出会う時がある。
 震度6の激しい揺れに職員は「もうだめ死ぬ!」ってときも、茶碗を離さず手に持って悠々と飯を食っていたグループホームの婆さんに職員は感服していた。
 認知症じゃないから対応できない職員と、認知症だから対応できる婆さん。ここからたくさんのことが学びとれる。
 きっと被災地でも、永年生きてきた知恵を駆使して対応している高齢者の姿に感服している若者たちがたくさんいることだろう。
 婆さんに学び 婆さんに還す
 僕の言葉であるが、こんな時だからこそ改めて、永年の知恵や人としての生きる力の逞しさに触れ、その「価値」を味わってみてはどうだろうか。きっと「一人前の高齢者になりたい」と思え、認知症への考え方が変わり、おのずといろんなことが「学び」だと思えるようなるし、学んだことを還さないと、学びも循環されない「単なる知識」でとどまることに気づけるから。
 僕は“一人前の高齢者”になれるように努めたいとようやく思えるようになってきた。


コメント


 お疲れ様です。

 和田さん、そして皆さま、後方支援もお疲れ様です。

 毎日、温かく安心して眠れ、好きな物を食べ、いつでもトイレ、お風呂に入ることができて、笑って泣いて、怒って愚痴言って過ごすことができる。幸せなんだと感じています。

 仕事としてサービス提供側ながら、仕事とは関係なく、爺さん婆さんのすごさに感服することが多々あります。何はともあれ、この世に生まれ私より永く生きてみえる。私より、たくさんの喜怒哀楽を経験し修行してきた先輩です。私も一人前の高齢者になりたい。

 うちのわんこは、立派に年を重ねています。眼鏡も補聴器もありません。入れ歯もありません。胃腸も弱りました。生き物は、順番に年を重ねて寿命を終える。若くして死んでしまった猫もいた。

 生まれたからには、精いっぱい寿命まで生ききりたいと真剣に思います。

 4月なので新人介護員さんが加わった。彼女は小さな頃から引きこもっていたらしい。あれでは勤まらないという職員もいる。
 彼女は「私は可愛くなんかありません。」と本気で言う。あんたは可愛い、笑顔が素敵。おとつい、誰もいない時に「認知症ってなんですか。」と小さな声で聞いてきた。聞いてくれてありがとう。今日は、顔をしっかりあげてあいさつできた。とびきりの笑顔で。やっぱりあなたは可愛いよ。
 私と出会ったからには、あなたも自分の人生を寿命まで生ききってもらいたい。そして、一緒に一人前の高齢者を目指そうね。 


投稿者: まんまる | 2011年04月13日 21:03

まんまるさんへ

 まんまるさんって、ステキやね。ほっとするお話でした。ありがとう。


投稿者: わだゆきお | 2011年04月14日 15:00

和田さん長崎の研修お疲れさまでした。

長崎は確かに凄い人生の達人高齢者がわんさかいるようですね。
あの歴史を潜り抜け、生き抜いた人々!
今年の夏は大分県にもお越しになるようで・・・
大分の日本酒のうまい小さな店なら紹介できるかも・・・・


投稿者: いまじん  くどう。 | 2011年04月14日 16:39

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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