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和田行男の「婆さんとともに」

心情を察する

 思い返すは映画の中のワンシーン。
 お祭りで事故に遭い不随になった夫。子どもたちに「今日から母ちゃんは、父ちゃんの妻。おまえたちには母ちゃんはいないと思え」と宣言して父ちゃんにべったりくっついて支え続ける。
 その夫が亡くなった葬儀の席で「これで楽になれるね」と耳打ちする近所のおばはんに妻は激怒。
 おばはんにすれば、それまでの妻の気持ちを察しての言葉だったのだろうが、妻にとってはおせっかいな言葉。まったく気持ちがわかっていないということだ。

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 心情をお察ししますとはよく聞く言葉。
 心情とは「心の中にある思いや感情」と辞書にあり、本人が真のことを話さない限り、他人は察することでしか解かり得ない。つまり、本人が話をしてくれたとしても、それは真の心情かどうかは本人のみぞしるところであり、本人からの言葉を聞いてなお察していくことになる。
 自分にとって大切な人であればあるほど、深刻な事態であればあるほど、本人の言葉だけで「真」とは思いきれず、解かり得ない答えを求めて察していく。
 こんなとてつもないことを私(わたくし)的には平気にできる凄さを誰もがもっているが、仕事の中でかかわりをもつ婆さん達の心情を察することは抜かしがちだ。
 例えば、デイサービスやグループホームを使い始めた当初「ウロウロきょろきょろする」「怒る」「話をしない」「食べない」「何事も受け入れない」などの状態が起こったことに対して、それを事例検討の「課題」にしたり、それを初動時の「問題行動」にしたり、それを「行動障害」にしたり、それを「行動異常」にしたりしがちだ。
 でもよく考えると、自分の意思とは関係なく連れてこられたデイサービスやグループホームであれば、なんで自分がここに居るのか、ここにいる連中は誰なのかまったく解からない状況下に放り込まれたということであり、誰だってどんな姿になってもおかしくはないだろう。
 そう考えることが「心情を察すれば」というやつで、察することができる支援者は、その人の言動がおかしいのではなく、その人を取り巻く環境がおかしくなったのであり、その人にとっては「普通じゃない環境におかれて普通じゃない姿になっている普通の状態」ということであり、そう受け止めることができればこそ「手のさしのべ方」が「察したうえでのさしのべ方」となるのだ。
 僕は人の中にある「心模様の読み解き」について前にも書いたことがあるが、僕らの仕事の中で大事なことは介護技術や認知症などの知識ではなく、この「心情を察する」というやつで、それが欠落していると思える専門職の言動が多いことに危惧するばかりである。
 言葉で「ご利用者様」などと崇めていても、心情を察することもなく言動を問題視するようでは、婆さんにではなく専門職のほうに問題行動・行動異常・課題があるということだ。問題専門職によって「当たり前の姿を見せている婆さん」が「おかしな婆さん扱いされている」という現状は深刻であり、早く気づいてほしい。
 心情は他人には計りようがない奥深きもの。言葉や態度でいくら「ここはいいところ、あなたはいいひと」って表わしてもらっても、仕事の中では「いや、本当のところは…」って「察し」を追求したくなる。
 それもこれもおせっかいなのであるが、ここのところはいつまでたってもおせっかいな和田さんでいたいと思っており、認知症になろうがどんな状態になろうが、人が終わったわけではなく脳がなくなったわけではなく、この奥深き「心情を察する」は「人が人として生きることを支える専門職」としての僕の追求の源であり、その思考が僕の誇りでさえある。
 誰にも聞いたことはないが、心情を察することができる生き物は地球上にそうはいないのではないか。ひょっとしたら人間だけなのかもしれないが、そうだとしたらそれもまたありがたいことだ。
 心情を察するという能力が使われなくなり廃用症候群に陥っている介護現場・専門職が増殖しないように発信し続けるおせっかいを続けていきたい。
 いっそのこと忘れないように、フェースシートやアセスメントシートなどあらゆるところに「心情」の欄を設けて、カンファレンスや介護計画作成時には心情を察し合ってみてはどうか。
 そのときにはぜひ「職員の心情」「家族の心情」「経営者の心情」「行政職員の心情」「商店のマスターの心情」「隣人の心情」なども忘れないようにね。


コメント


 家の爺さん犬、若者猫は、私の心情を察するようである。どこまで分かっているかは分からない。でも私の動きは読んでいる。

 婆ちゃんが教えてくれた。私は楽しいことが好き。楽しくしていたい。でもどうやったら楽しくなるかが分からない。頭がバカになったからと。若いころの趣味の編み物を提案したら、とても今はできないので楽しくなれないとのこと。嫌なことは分かるけどどうしたら楽しくなれるか私は分からないと返事。なるほど。
 話が進んで、ばあちゃんは魅力的と伝えると、じゃあもう1回結婚するわと。どんな人が好みか聞くとそれはどうやって返事したらいいか分からないと。なるほど。
 最後に、ばあちゃんは私の大事な人だから体調崩さないようにと伝えると分かった。娘も大事にするよう伝えると、これから大事にすると。今まではどうだったか聞くと、粗末にしてきたと。
 娘さん、横で大笑い。こんなこと聞いたことがなかった。すぐに忘れるだろうけど嬉しいと。


投稿者: まんまる | 2011年02月17日 20:47

 電話をかけたりする時に、相手に「今大丈夫ですか?」と伺ったりしますよね。こちらの都合で電話をかけて、相手のタイミングも合ってるか確認することは、凄く常識的な事。
 でも、介護職員からお婆さんに声掛けるのって、相手の都合も聞かずに、どんどん日課を出していく。まず、どの状態にあるのか、察知する為に色んな手段を使ってみる。そこで、関係性を築くのって大事だな~とつくづく感じる今日この頃です。


投稿者: みいこ | 2011年02月18日 15:09

 全く異業種の友人から「介護って手助けって意味なんだね--!」と目をまんまるくして言われました。
 自分の家族が認知症になり、それも最初は変なことばっかり言う、困らせることをする、と思っていたけれど、ある時‘これは病気なんだ’と知ってから色々考えに考えて支えながら「介護」という言葉をネットで調べて納得したんだといいます。
 ここまでくると、素人とプロの違いってなんだろ?って焦りを感じながら、調理を例に1から100まで私の仕事を語らせてもらったところ!友人から「でも、たくさんの人をそこまで考えてやってたら、パンクしちゃうでしょ、いらいらするでしょ」って。
 意地か誇りかわからないけど私「プロですからっ」って・・・答えつつ自分にいい聞かせたところです。
心情を察してもらいながら叱咤叱咤激励された気分。

 身を粉にして頑張っている職場の仲間をみると、自分が大変だなんてとても言えないけど、自分達の生活や健康な心身があってこそ、良い仕事ができるとも思うので、そんな権利も堂々と主張できるように、まずはちゃんと義務、果たしていかなくてはと思います。

 生意気いいました。(ぴ!)


投稿者: 夜勤ヘルパー | 2011年02月18日 22:54

 和田さん、皆さん、こんばんは。

 正直、挫けています。でも、御爺さん、御婆さんが好きです。毎日、試行錯誤を繰り返しながら生きています。気になり読んでみたいと宮崎さんの本を購入しました。読み始めるととまらなくなります。あのころ、私が体験したことと似たようなことが書かれてありました。カルチャーショックを受けた経験を私ももっています。
 介護現場、現実とのギャップ・・・改善できないもどかしさ、私らしくない・・・でも、今の職場を去れない・・・。そこには、入られてしまった御爺さん御婆さんがいるから、私が逃げるわけにはいかない・・・。施設に住むことが必ずしも辛いことだとは言えないと思いますが、やっぱり本人の意思を尊重できていない現状は、私にとっても辛いです。
 御爺さん、御婆さん、本人の意思ではどうにもならない現実、せめて楽しい毎日を作りたい・・・。少しでも、住みやすい状況をつくりたい・・・。
 察すること・・・非常に難しいです。でも、それも私たちの仕事なんだと思うのです。私は、対処の仕方にこだわったことあります。そうではないと今は思えます。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2011年02月20日 18:55

 以前読んだ認知症ケアの本をめくっていたら、「説得より納得」という言葉がありました。
 たぶん当時は技法として習得し、そんなふうに身につけた技を、こちらの都合で器用に使い分けていたような気がします。
 心情を察して想い巡らすことをしないで、たくさんの技法を身につけることがベテランなら、私は常にこれからも新人、でいたいなあと思います。


投稿者: すみこ | 2011年02月21日 02:45

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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