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和田行男の「婆さんとともに」

働くことと仕事すること1

 自著『大逆転の痴呆ケア』(中央法規出版)でそう表現させてもらったが、ある施設に行かせてもらって感じた仲間たちの「働き」と「仕事」について意見をのべてみたい。

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 最初に思ったのは「他人のふり見て我がふり直せ」という先人たちの戒めの言葉である。
 ここで見た光景は、わが社でも、全国どこにでも普通に見られる光景ではないかと思ったので、事例として取り上げ考えてみたい。
 ほんの5分ほどの切り取った場面なので正確ではないかもしれないが、その5分のなかの出来事が、1日1440分のなかの例外とは思えなかった。そこで、施設の幹部たちに投げかけると「そのとおり」だと言ってくれたので、書いてみたいと思う。
 食堂で食事が終わった後の場面だったようだが、食堂テーブルに向かっている入居者たちの圧倒的多数が車イスに座っていた。
 食事を摂るために、自分の力で食堂に来られない人たちを移動の道具である車イスを使って連れてきて、そのままにしているという光景だ。
 僕の中で車イスというのは「移動の道具」であって、僕らが日常的に使う椅子とはそもそも用途が違うと考えているから異様に映る。
 車いすという名称をつけたのが間違いだったと僕は思っているが、椅子に車輪がくっついたのではなく、車イスは明らかに「自転車兼他転車」である。
 自分で転がすときは自転車であり、他人に転がしてもらうときは他転車。そう考えれば、車椅子に座りっぱなしという光景は例外的となるはずだ。
 そもそもなぜこういう光景に介護職たちは疑問をもたないのかと考えると、「歩けない人=車イス生活者である」という図式になっているからではないからだろうか。
 これも、そもそものところから考えると、車イスに座りっぱなしというのはおかしいのではないかと思えるはずなのだが、そもそものところから考えたり、そもそもを取り戻すという発想自体がなさすぎなのだ。
 そもそも施設に入っている人たちはどういう人たちだったか。
 生まれついた頃は移動能力をもたず、抱っこしてもらったり他転車(乳母車)で移動させてもらっていたことだろう。
 やがては自力で歩くということができるようになり、他転車から自転車をつかえるようになったり、さらに年齢を重ね、歩行や自転車だけでなく、自動車など様々な移動の道具を必要に応じて駆使するようになったことだろう。
 その僕らも骨折をしたりすると自力歩行がおぼつかなくなり、普段は使わないが、その必要性から自分の状態に応じた移動道具を使ったりする。
 そのときは、松葉杖、歩行器、電動車いすなど自力移動補助具(自助具)も使えば、他人に援助を受けて移動するための道具を使用したりする。
 ところが治療が終わり元の状態に戻ると、自力歩行が出来る状態に合わせた道具の使い方から、自力歩行が出来ない状態に合わせた道具の使い方にかわるはずだ。つまり能力に応じて、他力に応じて道具を使い分けているのだ。
 だったら「歩けなくなった人が車イスに座ってご飯を食べるのもありではないか」ということになるが、そのとおりだと僕も思う。僕は車イスで食事を摂るのはおかしいとは思っていない。
 では何を問題にしているのかということになるが、それは、介護職=リハビリテーション専門職がかかわっているにもかかわらず「画一的車イス食事光景になっている」ということに問題を投げかけているということだ。
 もっと言えば、介護職たちは「食事を摂るためにテーブルの前に車イスを使って移動させる」という働きはできているが、リハビリテーションという仕事をしていないことに対して、それでいいのかという問題提起である。
 車イスでしか移動できない人を食堂に移動させて、本人に「椅子に座りなおすかこのままがよいか」と訊ねると「車イスのままがよい」と答えたので車イスのまま食事をしているというのならまだしもである。
 もっともよろしくない「気づいてはいるが職員本意によってそうしている」とか「何年も介護職をしているのに気づけていない」ことによって車イスのままの食事になっていたとしたら実に情けない限りであり、介護の専門職としての誇りもプライドもないと思わざるを得ないと言わせてもらったのである。
 これをもう一度整理すると、次のようなことが見えてくる。

○意思を確認できる人に確認したら車イスのままがよいと答えたので車イスで食事を摂った…利用者本意
○意思を確認できない人なので、本来の姿は椅子での食事が一般的であり、一般的な姿を取り戻すために、椅子に移ってもらって食事を摂った。…そもそもの本意に基づく利用者本位
○食後すぐに動かすのだから面倒なので車イスで摂ってもらった…職員本意
○意思を確認すると「車イスのままが良い」とは答えているが、「職員に申し訳ない」など別の理由により、そう言っているだけではないかと推測し、椅子での食事を勧めるようにしている…利用者本位
○意思を確認すると「車イスのままが良い」だが、「そのままでは本人の気づかないところに不具合が生まれる」と推測し、椅子に移って食事を摂るように勧めている…利用者本位
○意思を確認できない人なので、本来の姿から考えれば椅子で食事を摂るのが一般的なので椅子に移ったほうがよいと考えるが、本人の状態から車イスのままで摂ってもらっている…利用者本位
○食事が終わったらすぐに口腔ケアのために移動するので車イスのまま摂ってもらった…職員本位
○家族の意向で車イスのまま摂ってもらっている…家族本意

 というように、同じ場面でもいろいろな角度から思考することができ、このように整理すると、車イスで食堂に移動してきて、そのまま車イスで食べている人もいれば、椅子に座りなおしている人もいるという、一色ではない光景になるはずである。
 しかも、和田から「何でこの人は車イスで食べているの?」って聞かれても「こういう理由からです」と答えられるはずであり、「なぜ椅子に座りなおすのか」と聞かれても「こういう理由です」と答えられることだろう。
 一般的な人の姿が「椅子で食事をしている姿」だとしたら、その姿を取り戻す(リハビリテーション)のが僕らの仕事であって、自分の意思で車イスのままで食事をしている人にさえ働きかけをしてこそ専門職といえるのではないか。
 でなければ、「風呂に入りたくないと言われたので、そのままにしてきました(本意)」と2週間もお風呂に入っていない婆さん(これも事実)を生みかねないのだから。
 僕は「働くことと仕事をすること」の意味をしっかりと考えないと介護職はいつまでたっても専門職にはなれないと問題提起しているが、そのことを一度じっくり考えてもらいたいし、話し合ってもらいたい。
 これがひとつの問題提起であったが、同じ光景にもうひとつあった。それは「かかわり」である。
 これは次週で書くことにする。

追伸
 沖縄県のグループホーム事業者団体の人たちが、北海道の火災事件を受けて会合や取り組みを行っていた。
 札幌から那覇まで約3400キロ、ロンドンからアテネまでヨーロッパ全土にまたがるほどの距離があるが、北海道から沖縄まで事業者団体に結集する仲間たちは「二度と婆さんたちに熱い思いはさせない!」という熱い想いでつながっているのを肌で感じ、ひそかに感動した。
 ところ変わっても変わらない想いってステキやね。ところ変われば姿変わるぜんざいもステキやけど。な。

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写真1 ところ変わればこれ「ぜんざい」

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写真2、3ところ変わればあれもこれも「ぜんざい」

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写真4 那覇に行かれたら是非寄ってみてください。美味しさに唸りますよ。介護職仲間のおかあちゃんがやっている沖縄家庭料理の店
沖縄家庭料理「居酒屋たぬき」
(島尻郡与那原町与那原8345-2 電話:098-944-1177)

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写真5 たぬきで食わせてもらったヤギの刺身は絶品。魚の刺身からチャンプルまで何でも旨かったわ


コメント


 まだヘルパーとりたての頃、車椅子移動の方を食卓へ誘導してイスに座り変えていただいたところ、他の利用者さんから「あんただけイスに座り変えてるけどなぜ?」といわれた事がありました。その時は、テープルの高さ・車椅子の高さによる食事の姿勢のバランスが悪い為でしたが、数年たった今、そんな気配りが抜けている自分にがっかりです。
 確かに手間がかかる、要領が悪い事だと思います。しかし「急がなくていい、利用者さんのペースで関わって」と考える人は何人いるでしょう。
 食べやすい姿勢・座り心地で…と言う思いは失くしてはいけないと自戒させられました。初心忘るるべからずだよ、私…
 ゴーヤーおいしそうですね。今年も種を買ってきて苗を育てています。自宅の畑は狭いので実家で植えてもらっています。夏にはゴーヤー食べ放題…野望は膨らむばかり…ふふふ。
 こちらはやっと桜が満開に。ライラックはまだですね。蓬や蕗もぼちぼち取れています。自然の恵みに感謝して煮付けや蓬パンを作っています。
 利用者さんにもこんな風に季節と自然の息吹きを感じて欲しいです。


投稿者: みき | 2010年05月17日 11:29

 いつもブログ楽しみに拝読しております。今回初めてコメント投稿いたします。
 以前働いていた施設にて、椅子に座れる・移乗する力がある利用者さんには食事時、車椅子~椅子への移乗を心がけ関わりをもってきました。
 利用者さんの中には「面倒だからいい。」などの理由で移乗を断る方もいらっしゃいましたが、車椅子で食事をすることの問題点や逆に椅子で食事をすることの利点など、何度も説明してようやく納得してもらい、椅子で食事をしていただいた事や椅子に移乗する動作自体がりっぱなリハビリになる事、逆に移乗動作をしない事でそれだけのリハビリ機会を損なう話などを利用者さんや職員には説明して、利用者さん職員皆で頑張っていた事を思い出しました。
 利用者さんに椅子に座っていただくには、職員の移乗技術や椅子に座る事での利点を納得していただくための知識、理解してもらえる様に関わるコミニュケーション方法など移乗を通して、介護職としてのスキルアップになっていたのだと今となれば思います。
 今、ケアマネジャーの仕事している中で、色々な施設を見る機会がありますが、施設の都合で車椅子で時間を過ごされている利用者さんをたくさんお見かけします(車椅子に6時間以上座ってみるとどれだけ辛いか良くわかるんですけど)。
 この利用者さんは本当に車椅子でいいんだろうかと疑問に思い、行動できる介護職が増える様に微々たる力ですが、普段のケアマネ業務を通して働きかけを行っています。


投稿者: かのりん | 2010年05月17日 20:10

和田さん、皆さん、こんばんは。

 私のいるユニットは幸いにも介護福祉士が3名いるので団結して周りを説得にしたりしますが理解されないこともありローマは一日にしてならずです。
 和田さんのブログで車椅子は移動手段という事が書かれてあり、私も、そうだと思い・気づき、自分を反省し仲間に改善を呼びかけ、一名の利用者が車椅子から椅子になりました。他にも沢山の利用者がトイレ排泄になり、オムツのパット数も少なくなり大変嬉しく思いますが、しかしながら、行き過ぎは自己満足・自分本位になりやすいので気を付けています。毎日、反省ですね・・・。
 先輩に改善を呼びかけることも大切ではありますが、新入社員は新鮮な気持ちで入ってくるので、その新人の素朴な疑問や素晴らしさを大切にしたく思いながらを利用者本位でということを伝え人間らしい生活が出来るように伝えています。
しかし、その新人から施設業務に染まった自分を考えさせられ反省させられることも度々あります。
 
 みなさん、ご存知のとおり宇都宮で虐待がありました。人は・・・どんなに伝えても生まれてから育んできた心は変えることが出来ないこともあると思います。その施設側は研修を怠ったためと言っていましたが、その次元ではなく私は人間性の問題だと思いました。

 北海道の火災の件は私の勤務施設では避難訓練の重要さの再確認になりましたし、私自身も大きな反省に繋がりました。しかしながら、夜勤帯の改善まではいかずに自分の力量のなさを反省しています。やはり、お金の問題が一番難題です。
 先週の島根県の和田さんのお友達のこと、とても寛大な方で自分の考えのちっぽけさを知り、ちっちゃな事をを考えている自分が本当のあほに見えました。


投稿者: 寺内 美枝子 | 2010年05月18日 21:57

 今では車椅子から椅子に座り換えるというのが普通の光景となっていますが、以前は、本人が「このままでいい」という本意を尊重したり、在宅支援の場合は家族の意向もそこに影響していました。危険なので立たせないで欲しい、など。
 椅子に座り換えることで、いろんなことが見えてきます。立ち上がる動作に毎日かかわっていると、動きの安定性や鈍さによって、その日の体調、体重の増加、機能低下など、気付くことが多いです。
 また、下半身が弱い方でも、腕の力によって軽介助で自分の力で移乗することもでき、本人の自信につながることもあるようです。
 車椅子の「たわみ」が身体を楽にして自分の力を引き出さないことも機能低下に繋がるとも感じています。(たわみって言わないですかね、やわらかさというか…)
 逆に安定しない緊張感をもつことで、姿勢を保つ意識となり、クッションなどを使わず、傾きのある方には何度も声をかけて出来るだけ姿勢を保っていただいたりもしています。
 ただ楽になるように、というケアに至るにはその人の身体状況によりますね。
 「車椅子のままでいい」と言われる方の理由には和田さんが言うように、「職員が忙しそうだから」という言葉も聞かれます。
 自走が出来、本意で動くことが可能だからでしょうね。
 椅子に座ることを「本位」としながら、お年寄りの「本意」に応えられているかを、合わせて考えていかなければと思っています。
 日常の小さなことにこだわって、時間をかけても「今日も座ろう」って何度でもやり直す気持ちが大切かなって思います。椅子に限らず、ですが。
 かかわる、触る、ことが大事なコミュニケーションで、そのあとのケアに繋がっていきます。
 本位を本意に繋げる努力が私たちの仕事の成果かなとも思います。
 間違うことも多いですが、気付ける自分でありたいですね。


投稿者: sakura | 2010年05月18日 23:49

 もう一度、介護職に戻ったなら、やはり作業員ではなく、マニュアル君でもなく、仕事人になりたいと思っています。
 以前勤めていたグループホームでは、車イスのままテーブルにつくおばーちゃんがいました。ご本人の明確な意思は示されず、スタッフにもいろいろな意見がありました。移乗や歩行は介助を要します。ゆっくりですが、足こぎにて車イスを自力で操り、キッチンのお菓子をこっそり味見するのが、楽しみのひとつでした。食事も1時間かけてゆっくり自力。食べこぼしもあります。ここが車イスのままテーブルにつく理由のひとつなのですが、この食べこぼし・・・膝や足元に落ちるとスローモーションで、(気持ちは反射的に)それを拾うんです。
 「あ、落ちた」→「もったいない拾わなきゃ」→手でテーブルを押して車椅子を後方に→体を曲げて食べものを拾う・・・という工程です。拾った食べ物が、衛生的にどうなのか等、ここからが私達の出番!もっともそれまでに、他のじーちゃんばーちゃんに、本人や私達の役割を横取りされてしまうこともしばしばでした。
 車椅子でテーブルにつく方が、この方にとっては、リハビリになる。又、リビングの椅子に移ることにより、逆に拘束感を感じるのではないか、等々。そしてまず、その方にとっての「あたりまえのこと」があたりまえにできることを大事にしたいね。それがその時の判断でした。

  介護の世界は日々進化していると感じます。素晴らしい考えに共感することもたくさんあります。ただ、ともすると受け取り手によっては、どんなに素晴らしいヒントを投げてもらっても、マニュアルとしてしか、受け取れない現実も感じます。
 鍵をかけない、自由な外出、喧嘩OK、酒タバコOK、好きな時間に入浴OK、何でもありあり。それ自体が売り、では決してないですよね?その芯にあるものを共有できる仲間はまだまだ少ないと感じています。
 制度、システム、考え方etc・・・進化の中で、一方どんどん狭くなっていく部分があると感じるのは私だけでしょうか??
 ブログを見つけ共感できるものがあって、書いてしまいました。今一旦介護の外の世界に身をおき、介護職ではない自分を味わっていますが、なんだかまた仕事をしたい気が起きてきました。


投稿者: すみこ | 2010年05月20日 02:17

すみこさんへ

 すみこさん、自分は国民の宝なんだ!と思い込んで、介護の世界に戻ってきてくださいませ。
 きっと、僕の思い込み「宝」は間違っていないと思いますよ。お待ちしています。


投稿者: わだゆきお | 2010年05月20日 13:31

和田さんへ

涙が出るほど嬉しいです。
介護の仕事も宝探しに似ていますね。私もたくさんの宝を戴いてきたことを思い出しました。少数でも、確かに共感できる仲間がいたこと(もしかするとその逆も)もそのひとつです。

現在のアルバイト先(居酒屋)でのお仲間!?
「人間って~、ほとんどが思い込みからできてるんだって~!」と言っていた、バリバリどギャルの、ば○で優しい女子高生・・・いつかこんな人を介護界に巻き込みたい、とたくらみつつ。
世の中の色んな宝を「大事にしよう」と介護の世界から叫ぶことができたら素敵だなと思います。

今日は、和田さんに力をいただきました。本当にありがとうございました。


投稿者: すみこ | 2010年05月21日 02:20

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プロフィール
和田 行男
(わだ ゆきお)
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は大起エンゼルヘルプでグループホーム・デイサービス・小規模多機能ホームなどを統括。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

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