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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

ケアマネジメントと評価

 12月3日(土)~4日(日)、日本福祉大学第7回ケアマネジメント研究セミナーが開かれました。第7回のテーマは「ケアマネジメントと評価」です。私は2日目のD分科会「ケアマネジメントと介護サービスの評価」の助言者をお手伝いしました。

 評価といえば、ケアマネジメントにおいては、モニタリングという月1回の訪問面接と、年1回のサービス担当者会議が介護サービスとケアプランなどの大切な「評価の場面」といえます。一方、介護保険適正化事業として行われている「ケアプランチェック」も、ある意味で保険者によるケアマネジメントの評価の1つともいえます。

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 しかし、評価と聞くと、だれしも腰が引けるものです。自分の業務への自信のなさ? というより、採点されることへの畏怖といえばいいでしょうか。要するに、納得できる評価ならぜひともお願いしたいが、納得できない評価をされるのではないかという不安は、結構居心地の悪いものです。人によっては「ケアはそう簡単には評価できるものではない」と、評価そのものを否定するような雰囲気を作ったり。

 しかし「質の向上」をめざすとき、かならず検証という評価をしないことには、現在の地点(レベル)がわかりません。評価をすることで、弱みと強みが浮き彫りになり、どこを改善・改良すれば質が向上するか、その目安がわかり、目標と計画を立てることができます。
 評価という作業をしないと、「とにかくがんばろう!」とやみくもな根性主義で突き進むしかないことに。やがて、疲れてきて「とにかくがんばったよね!」と自画自賛か自己満足に陥ることになります。

 しかし、現実的にケアサービスの「評価」はむずかしいと私も思います。……なぜなら、モノではない介護サービスは、行為そのものなので後で形に表せない(無形性・非再現性)、利用者の体調や心身のレベルでケアの中身が変わる(可変性)、今日のケアが明日のケアでよいとは限らない(非連続性)などの特質を理解して評価をしないといけないからです。さらに究極のヒューマンワークであり、提供者の力量が反映されるだけでなく、ときには不器用で丁寧なケアが利用者満足度が高い場合もあります。つまり一定ではないということです。
 この話を分科会冒頭でしました。

 その意味では製品の評価とは質的に異なった評価軸と評価方法が求められることになります。 

 野中猛教授は「従来の第三者評価はストラクチャー評価(構造・仕組み評価)の面が強い」と指摘され、小生も的を得たご指摘と納得しました。第三者評価ではそれ以上はまずむずかしい。質の高いサービスを生み出すための組織的仕組みが作られているかどうかは評価できても、質の高いサービスかどうかを評価するのは受益者(利用者本人)でしかないからです。しかし、多くの要介護者は自らそれらを言語化したり文字化することが困難な人が多い(判断能力不十分の人も……)ことが、ケアサービスの評価をむずかしいものにしているわけです。

 評価軸の設定もかなりむずかしい。自動車なら燃費・安全性などが評価軸になるでしょう。洗濯機ならきれいさ・生地の傷みレベル・洗濯時間なども評価軸になるでしょう。
ならば介護サービスは? 利用者満足度の軸もあれば、目標達成度もありますし、改善の効果度という軸もあるでしょう。またケアの充足度もあるでしょう。でもこれらはすべて結果評価。めざす結果やゴールをめざしたプログラム評価やプロセス評価という軸もあります。

 そして評価にかならずつきまとうのが「ジレンマ」です。葛藤といえばよいでしょうか? 私も大学院生の評価、つまり採点をつけるとき、がんばりには高い評価をあげたいが望むレベルには達していないと感じるときがあります。C評点かD評点か、とても悩みます。温情をかけたいが、他とのバランスを考慮するとちょっと無理がある。しかし薄情とは思われたくないし……。

 そこで基準となる視点は「だれがこの評価を参考にするのか」ということ。つまり「評価の利用」という視点です。つまりこの評価がどのような意向や判断・決定に反映するのかも大いに重要な視点です。

 まずは「評価」について真剣に考えた2日間でした。

ムロさんの写メ日記

【鹿児島県老施協主催「施設職員の人材育成」セミナー】

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今回の会場は霧島市にある「ホテル京セラ」。300人の参加でした

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午後1時から5時間の研修会。会場のみなさんとのやりとりも楽しいものがありました


【三重県看護協会・保健師職能協議会・市町保健師協議会合同研修会「保健師活動に活かす質問力」】

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講義は約100分でした

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終了後にグループで学び・気づきを交流しました


【日本福祉大学第7回ケアマネジメント研究セミナー「ケアマネジメントと評価」】

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2日目のD分科会「介護サービスと評価」です

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冒頭の問題定義をしました


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終了後、各分科会報告にコメントをする野中猛教授


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パネリストの皆さんと。向かって左から小川晶子さん(やさしい手・サービス提供責任者:介護福祉士)、鈴木あけみさん(ケアプランすずき・管理者:主任介護支援専門員)、大村純子さん(ヘルパーステーション夢歌・管理者:介護福祉士)です。お疲れ様でした

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

【高室成幸さんの最新刊】
『ケアマネジャーの質問力』
著者:高室成幸
定価:¥2,100(税込)
発行:中央法規出版
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