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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

就労について

 今日も仕事を終え、プライベートに戻っていく。仕事はしんどくて嫌だね。生活のためにみんな仕方なく続けているのですが、まあ社会の片隅で人知れず、コツコツと汗をながすのが、仕事なのだろう。
 もちろんこれは、病者であっても同じこと。就労して病気を悪化させることのほうが多いと思うのに、それでも病者は働きたがる。入院中の病者でも「働きたい」と言う。健常者ならば、働かずに生きていければどんなに楽だろうと考える「就労」に、病者は異常なほど執着する。

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 社会から参加を阻害されていることもあるだろう。所得税を払えば一人前だと周りから思わされているのかもしれない。大人になりたいという動機もあるだろう。
 それよりも「働かざる者食うべからず」。この子どものときから周りに吹き込まれてきた呪いの言葉。あるいは、自分が安心して生活を送れる居場所が現在ない、積極的に自己実現を目指したい。しかし、彼や彼女も就労すれば、ほどなく自己実現と仕事は関係ないと気づくはずだ。
 さらに、就労できれば病者仲間や病気自体ともオサラバできて健常者の仲間入り、という差別的な気持ちも後押しする。恋人さえできればすべてうまくいくと考える女性の気持ちにも似ているかもしれない。
 就労に過大な期待をかけている病者ほど、年金申請を自ら拒んだりする。ぼくは年金をもらいながら就労しているけど、これが病者で多数派の一般的なスタイルではないだろうか。
 ぼくの場合、親から援助が受けられるし、奥さんの収入もあるので生活保護(フクシ)は受けられないのだけれど、一般にフクシはハードルが高い。もちろんクルマ類が持てないから嫌だという人もいるのだが、フクシを受けることは最低の生活だという差別的な気持ちを病者自身ももっている。だから就労を繰り返し、再発を繰り返した末、やっとフクシを受けることを考えたりする。
 フクシを受けながらでもちょっと調子が悪い前兆が出ると、何とか抜け出そうとやっぱり就労に走ったりする。しかし病者業界で、就労してフクシを切った人の話など、聞いたことがない。働かないから病状が安定している人が実に多い現実がある。
 健常者にとって嫌な仕事は、本当は病者にだって嫌なはずだ。仕事から得る達成感がたまにはあると健常者が言うのならば、病者には別の道での達成感を味わうことはできないだろうか。
 これらさまざまな事情を理解して、ワーカーは就労支援の現場を行っているのだろうか? しかし、そこまで理解しているワーカーならば、そう積極的には就労支援を行わないだろう。
 ベテランワーカーは「退職支援」と言う。状態が悪くなっているのに、職場に気をつかって迷惑をかけてはいけないから「辞める」と言い出せない。あるいは、周りの人から励まされて仕事にしがみついている、そういう人を退職させ、場合によってはフクシに結びつける。そういったときに頼りになる支援こそ、ワーカーに求められる仕事ではなかろうか。


コメント


 タコちゃんです。
 ボクはもう、働いてる自分を想像できなくなりました。
 気分変調もヒドイです。。。
 20代は、若さと、年金をもらえないと思い込んでいたから、無茶がきいたんだと思います。
 資格もなく、働くなんて無理です。
 昨日は、作業所の見学でした。
 まずは、楽しい充実した生活! それがなければ、働くことなんて出来ないと思います。
 それが、若いワーカーは、分からない人が多い。。。


投稿者: iida keisuke | 2007年10月04日 07:45

 車は所持費用がたくさんかかりますよ。
 ブログ開設おめでとうございます。結構長い付き合いになりましたね。これからもどうかよろしくお願いします。
 佐野さんには一番苦しい時期にたくさん助けて頂いて、本当に感謝しております。


投稿者: taro | 2007年10月04日 21:47

「就労」難しい問題ですね。
 社会に認められたいという気持ちから働きたいと思うのか、生きていくために仕事を求めているのか。現実的には、「会社」に勤めて病気になる例がたくさんありますよね。
 昔は病気になると解雇されていましたが、今は改善されたのでしょうか?
 勤めていて病気になるのだから、病者が勤めるのは難しいというのが個人的な考えです。佐野さんの奥様のように、支えてくれる「パートナー=良き理解者」が必要だと思います。
 でも、どうやって出会えば良いの? と問われてしまうと、答えられないです。厳しいですが、現実だと思います。
 みんな、お仕事を探すよりも先に、パートナーを探そうよ。


投稿者: taro | 2007年10月04日 22:50

 タコちゃん:若いワーカーの先生になってください。
 taroさん:パートナーも縁としか言えないですね。ぼくは障害児の母だった奥さんとボランティア活動で知り合いました。


投稿者: 佐野 | 2007年10月05日 20:07

 僕の通所先は、時給が高い所なので、病者が集まります。
 でも、就労支援すべきワーカーが、重箱の隅をつつくように、病者に接する傾向にあります。駅前清掃と入浴清掃は、特に顕著ですね…。忙しくて余裕がないのは、わからないでもないですが。
 支援者と利用者が、作業ではそのまま上司と部下になります。でも、ワーカーの好みの病者には、注意はあまりしません。
 それと、あまり病者一人ひとりの支援には、熱心でありません。大きな病院をバックにあぐらをかいてるとしか思えません。


投稿者: ハイドラ | 2007年10月08日 00:51

 ハイドラさん:ベテルのような「自由にさぼれる会社」作りがいいですね。


投稿者: 佐野 | 2007年10月11日 19:06

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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