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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2010年09月

子どもは母親のもの(part2)

(前回のブログより続く)
 ぼくとふーさんは、飲み干した珈琲牛乳のビンを箱に返して、長椅子に座った。
 「父性愛だってそうですよ。娘が嫁に行くときに、さめざめと泣いたりする。これだって、自分のものだったはずの娘が突然他人のものになっちゃう。その現実に耐えられなくて泣くのでしょう。独占欲ですよ」
 ふーさん「そうかもしれん」



子どもは母親のもの(part1)

 郊外にある熱帯魚屋のマットグロッソに来ていたぼくは、ふーさんから「今日は汗だくだから、早じまいをして温泉にでも行かんか?」と誘われた。そしてふーさんの冷房の効かない軽のバンで星岡温泉に向かった。駐車場から結構歩いて建物に入ったら、冷房が効いていて急に涼しくなった。番台で入浴券を渡すときに、ふーさんは番台のおばさんと、「涼しくならないねえ」などとべちゃべちゃと立ち話をしていた。結構普段からよく来ているらしかった。ぼくはタオルを買った。風呂に入ると、ふーさんは何度もサウナに入り、ときどき水風呂に飛び込んでいた。ぼくはぬるい炭酸泉にずっと浸かっていた。ぬるま湯に浸かっているのは極楽で、ついつい長風呂になる。ぼくがあがると、ふーさんは待合所で新聞を広げていた。ぼくはたばこに火をつけた。



卒業(part2)

 クリスちゃんは、先ほどから仕事の手を休め、ぼくの話に聞き入っている。
 「人によって違うけれど、数年経つと自然にムゲンから足が遠のくことをぼくたちは『卒業』と呼んでいます。しかしムゲンとまったく縁が切れるのではなく、月に一回発行する次の月の行事予定表の発送で、つながっていたりする。来る予定はなくても、『予定表だけは送ってくれ』という元メンバーが何人もいます。今は来ていない20名くらいに送っています」



卒業(part1)

 今日は、ふーさんの熱帯魚店である「マットグロッソ」に来ている。ブラジルのアマゾン川上流の熱帯魚の宝庫である地名からとったそうだ。よくもあのふーさんがこんなシャレた店名をつけたものだと思う。ふーさんは留守で、最近入った店員のクリステルちゃんが留守番をしていた。かわいい顔をしていて、年齢不詳だ。黄色いエプロンをして、水槽の水換えをしている。ぼくはホースを水槽に突っ込んで背伸びしている足下の赤いミュールから浮いたりくっついたりしている彼女の丸く小さいかかとを見ていた。何でも、ふーさんによると、彼女はひきこもりの自助グループに入っていて、元不登校だったようだ。彼女は水槽の隅を、力を入れて何度も何度もこすっていた。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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