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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」 2008年10月

ひきこもりについて

 ひきこもりと長期入院者は、社会との接点を失っているという点においてよく似ている。

 長期入院者は長い間にわたって、病棟生活に適応して過ごしている。今、ケースワーカーが中心になって、病棟で何らかの役割を見つけている病者を退院させ、生活保護を基本に、ケアホームやアパートでの生活ができるようにするというサポートが始まっている。退院者にとって電車やバスの利用の仕方、銀行のキャッシュカードの使い方、買物の仕方、料理など、覚えることは山ほどある。
 もちろん、長期にわたるサポートが必要だ。日本政府の入院隔離政策のツケであり、その長期入院者数の多さに国際的非難を浴びたのに加え、医療費削減目標もあり、やっと政府も重い腰を上げた。平成21年度の国の要求額が出たが、軒並みアップしているのに、退院関連については17億円の据え置きだ。やる気がない。



僕のひきこもりナンパ宣言

 『僕のひきこもりナンパ宣言』(夏目亮介著、新紀元社)という本がある。本の帯には「レベルが上がった! 女の子と話せるようになった!! 元自衛隊員・ひきこもり青年がナンパ師めざして大奮闘!」とある。読むっきゃない。



ひきこもりセキラララ

 『ひきこもりセキラララ』(諸星ノア著、草思社)というひきこもりの自伝本を読んで思うところがあったので、書いてみたいと思う。
 まず、正月は何枚年賀状が来るのかが心配だ、という「憂鬱な正月」の章から始まっている。ひきこもっていると、来る年賀状が年々減ってくる。友人から忘れ去られないように、こちらも必死になって書くが、ひきこもっていることを知られたくなくて、近況を詳しく書けないので、書くネタもない。自然に相手も遠ざかるという。
 ぼくにも覚えがある。友人から忘れ去られないように、ぼくを覚えてくれていそうな同級生などに、必死で年賀状を書いたものだ。昔は病識もなかったし、入院は共通の話題にもならない。正月に何枚来るかで一喜一憂した覚えがある。



退院促進について

 国の方針で、今年になって県に、長期入院者の退院を進める予算がわずかばかりついた。それで退院促進の検討会を開き、行政主導による事例検討などを行っている。NPO法人のいくつかは退院してくるであろう患者さんのためのグループホーム、ケアホームを作ったりしている。

 他の病院の誤処方をするどく指摘し、今をときめくセカンドオピニオンの笠陽一郎先生が、20年以上前にH病院にいて病院開放化を行い、どんどん退院政策を押し進めた時期があった。「これほどの人が退院など無理だろう」という患者さんまでアパートに退院させていた。
 その時の退院者の一人が5〜6年前にムゲンにやってきた。身寄りがまったくないばっかりに、それまでは保証人のいらないボロアパートを点々としていた。ムゲンで昼飯を食べてもらいながら、ぼくと波津子が保証人になって、ムゲンの近くの人並みなアパートに移ってもらったら落ち着いた生活ができるようになった。



自立について

 新聞などで、「就労を通じて障害者の自立を」などの文字が躍る。「障害者の自立」には誰も逆らえない至高の響きがある。しかしこれは、「自立」と「経済的自活」を明らかに混同している。別に親の金で暮らしていても「自立」は可能だ。差し迫った要求ではあるけれど、生活費をどこから引っ張ってくるかは、「自立」とは関係ないだろう。犯罪的な金でさえなければいい。若いワーキングプアは、親の仕送りなしには暮らせないという現実もある。



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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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