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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

TPPについてpart1

 マットグロッソが暇なので、ふーさんとばびは、クリスちゃんに店番と店じまいを頼んで、時々行っているぱぴぷぺ温泉に行くことにした。車はいつものおんぼろ中古の軽自動車だ。助手席にばびが乗ると、ふーさんはエンジンを吹かし上げて、軽快に走り出した。カーラジオからはTTP参加の解説番組が流れている。

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 ばび「いよいよTPP協議に参加するのですね」
 ふーさん「熱帯魚屋としては、外資が入ってこない方がいいんだが。市場が小さいからな」
 ばび「外資といってもTPP参加国をGDPで比較すると、日米で91%を占めていて、のこり9%がその他の8か国なので、TPPは実質的には日本とアメリカの自由貿易交渉なんですね。もちろん経済成長著しい中国や韓国などは入っていません」
 ふーさん「『TPPは議論に参加してみないと中身は分からない』と、ずっと政府は言ってきたから『知るためにも交渉に参加しなければ』とか言って、参加を決めたぞ」
 ばび「政府は国民へ説明していませんが、中身は、一足先にアメリカと自由貿易協定を結んだ韓国のFTAが参考になります。韓国はアメリカからとても不平等な条約を結ばされています」
 ふーさん「ニュースでは『日本も韓国に続け!』みたいに言ってたぞ」
 ばび「韓国ではすでに国内の農協、漁協の共済組合、郵便局の保険サービスをすべて3年で解体して、アメリカの保険会社に市場を開くように通告されています。これで国内医療制度の崩壊と、アメリカの投資家が、韓国の決めた法律を変えることに危機を感じた韓国国内では、批准反対デモが繰り返されています。国会は対立を深め、野党が催涙ガスをまく中、強行採決されました。その後も批准無効を求める大規模なデモが繰り返されています。アメリカはすでに『日本の簡保、共済をアメリカの民間保険会社に開け』とも言っています」

 ふーさん「そうなのか~。ニュースでは農業危機のことしか言ってないぞ」
 ばび「じつはTPPで日本の高額療養費を含む平等な3割負担の制度は、アメリカの要求で『混合診療』に取って代わろうとしているのです」
 ふーさん「混合診療?」
 ばび「国の医療保険ではごく基本的な診療しかしないで、それ以上は自己負担になるという制度です。『自己負担分はアメリカの民間保険会社を利用せよ』というわけです。アメリカでは、大けがをしたら入院費が払えないために、病院で治療をしないで自宅で寝ているだけという貧しい人がいっぱいいます。高い民間保険に入れていないためです」
 ふーさん「人間は必ず病気や怪我をするものだから、税金が投入される国の医療保険に、強制的に入っておくことは日本の弱者にやさしい制度だな」
 ばび「そうなんですが、すでに先進国の中では日本の窓口自己負担はトップクラスに高いんです。その医療皆保険制度をTPPで壊して行こうとしているので、医師会や歯科医師会、薬剤師会などがTPPに反対しているのです。混合診療にすれば、国としては税金の投入が減って助かるのでしょうが」
 ふーさん「金持ちにはいい制度じゃな。民間の保険にされ入っておけば、十分に高度な医療が受けられるのだから」
 ばび「そうなんです。医者としても民間保険専門の手厚い高度な医療が受けられる病院を増やすでしょう。貧しい患者は国の健康保険で見てくれる医者に殺到して1分間診療で、しかも基本的な治療しか受けられない、と」
 ふーさん「格差社会は病気のときにも……か」

 車は温泉に着いた。カーラジオから何度か「国際競争力を」という言葉が流れていた。

(Part2に続く)

コメント


 低所得者でも安い金額で、医療が受けられる日本の制度は、世界一安くて質の良いサービスだと、どこかで見ました。2000年にはWHOが、日本の医療制度はトップクラスだと認めたそうですね。本当に今までの日本の医療制度は、世界各国がお手本にしようとされていたようです。
 それに対し、アメリカはどうなのでしょう?テレビ映像で実態を少し見ましたが、保険料が高くて払えない低所得者が、ケガをしても病院の治療費が払えなくて、傷口を自分でちくちくと縫っていたり、病気なのに入院費が払えずに、病院を追い出されて、さまよっていたりと、痛々しいものでした。アメリカの医療は、命の重さを所得に応じて測っているようです。そんなアメリカ式の医療は、日本にはいらないです。
 もし、TPPで日本が誇る公的医療制度が、アメリカの圧倒されるようなペースにのまれて崩壊するようなら、日本国民は猛反対して、政権は倒れると思います。
 おまけですが、逆になぜアメリカには公的医療制度が根付かないのでしょうか?それは、お金持ちの人が、「なぜ自分が稼いだお金で、貧乏人のために税金を払わなければならないんだ?貧乏人は自分で働いて稼いで、努力しなきゃいけないんだ!」という発想が、根底にあるからだと思います。


投稿者: 金太郎の妻 | 2011年12月13日 06:25

アメリカンドリームという言葉がありますけれど、無一文の貧乏人が大成功を納めると言うお話ですが、これって以前の「勝ち組まけ組」のお話です。これがアメリカには建国以来強くて、「共和党」がその政治勢力ですよね。平等を嫌う伝統が、公的医療制度ではなく、自己責任になるのだと思います。でも貧乏でも金持ちでも平等に病気になるのにね。


投稿者: 佐野 | 2011年12月13日 20:07

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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