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秋山映美の「監獄から社会へ」

規律違反と懲罰

 刑務所の中で規律に違反すると懲罰対象になります。

 懲罰にはいくつか種類があって、一番軽いものは「戒告」です。
 そのほか、自弁の物品(以前のブログでも紹介した、自分のお金で購入したもののことです)の使用を禁じられる懲罰、「閉居罰」といって、トイレつきの3畳ほどの独居室で、そのほかのものは何も置かれていない部屋に入れられ、正座または安座(あぐらをかいて座る)で一日中(食事の時間を抜かして8時間)過ごす懲罰などがあります。
 閉居罰は、ただ座っているだけで、もちろん本なども読むこともできなければ、運動も入浴もできません。壁に寄りかかることもできない非常につらい懲罰です。

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 受刑者は一度懲罰になると、優遇措置の区分が低いものになってしまったり、それによって仮釈放も遠のいてしまったりします。
 「優遇措置」は、上がるにつれて手紙を出す回数が増えたり、自弁の物品を購入できるようになる制度です。

 懲罰に関してよくある相談は、「閉居罰」についてです。
 たとえば、刑務官と話をしていて少し口答えをしただけで「刑務官に反抗した」という理由で「閉居罰」になる人もいます。
 このように、刑務所の中では違反の程度に対して懲罰が大変厳しいのです。「閉居罰」の期間はだいたい7日間くらいが多いようですが、中には14日間という人もいます。
 また、朝、工場でほかの受刑者に挨拶をしただけで「口談禁止」の規則に違反したということになり懲罰になったという手紙もありました。

 懲罰が決定する前には懲罰審査会が開かれます。しかし、審査会には全く第三者が入らず、懲罰を言い渡す裁判官役も、違反した行為を追及する検察官役も、受刑者の擁護をする弁護士役もすべて刑務官が担当するため、形ばかりの審査になってしまい受刑者の言い分はほとんど聞き入れてもらえない、という相談もたくさん寄せられます。
 受刑者が他の受刑者からいじめを受けたりケンカをふっかけられたりした場合でも、ケンカ両成敗でいじめられたほうも懲罰になることも良くあるようです。

 ノイローゼになってしまっている人は刑務官とうまく付き合うことができず、「閉居罰」の懲罰を繰り返し受けている人もたくさんいます。精神状態がどんどん悪化して、自暴自棄になって刑務官に乱暴な口をききまた懲罰になるという繰り返しです。

 このような相談を受けた場合、私たちは刑務所長宛てに手紙を書いて、精神状態が悪化した受刑者は一度「閉居罰」を中止して、医師の診察を受けさせ、適切な治療をするべきだと申し入れをしています。

 懲罰審査会も受刑者が弁護士や第三者に弁護を依頼できるようにするなど、もっと第三者の目が必要なのではないかと思います。


コメント


 「閉居罰」はつらそうですね。そんなにに重い罰を受けさせるのに、受刑者の擁護をする弁護士役も懲罰を言い渡す裁判官役も刑務官が担当する形ばかりの審査で懲罰が決定されてしまうのですね。
 考えようによっては、「特定の刑務官に目をつけられ、にらまれたら終わり」とも言えますよね。刑務官も人間ですから色眼鏡で見てしまうことだってないとは言えないと思います。あってはならないことだし、「ない」のが前提の法律になっているのだと思いますが。
 現実には刑務官の「行き過ぎた行為」が報道されたこともありました。多くの受刑者を管理(?)する刑務官も大変な仕事だと思いますが、「厳しくしないといけない」と思うあまり「受刑者にはどんどん懲罰を与えていうことをきくようにするんだ」と勘違いしている刑務官がいるような気がして怖いです。そして、「塀の中」という空間の閉鎖性を強く感じました。


投稿者: ニャン吉 | 2010年10月22日 16:22

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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