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秋山映美の「監獄から社会へ」

社会復帰への希望

 海外では、無期刑も含めて「終身刑」と呼ばれていて、仮釈放のある終身刑と仮釈放のない終身刑に区別されています。仮釈放のない終身刑でも、恩赦で有期刑に減刑する措置やその他の減刑措置がとられている国もあります。
 中国の刑務所に服役している受刑者からの手紙には「終身刑だったが、一定年数服役して、その期間の行いがよかったため有期刑に減刑された」ということが書かれていました。

 では、こういった仮釈放や減刑といった処遇がなかなか見られない日本では、受刑者はどのような状況になっているのでしょうか?

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 まず、外の社会との関係を切ってしまう長期の施設収容は社会復帰を困難にします。
 監獄人権センターに届いた90歳くらいの無期刑受刑者からの手紙には、「死ぬ前にもう一度刑務所の外で生活をしたい。でも身元を引き受けてくれる親族が誰もいないため、私は一生刑務所から出ることができないのだろうか。どうしたらいいのか教えてほしい」と書かれていました。私はこの手紙になかなか返事を出すことができませんでした。

 また、受刑者は、いつか社会に戻れるかもしれないと思って刑務所内での生活を送るのですが、その希望・可能性が絶たれてしまうと、改善更生の意欲も削がれてしまいます。
 こちらも、とある刑務所の無期刑受刑者からの手紙ですが、「もう何年もの間、私のいる刑務所では仮釈放で出所した受刑者はいないので、みんなだんだんなげやりになってきてしまっている」と書かれていました。

 受刑者が出所し社会復帰をすることは、社会にとっても決して悪いことではありません。
 法務省の「パンフレット日本の刑事施設」によると、「受刑者の処遇は,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律において,その者の資質及び環境に応じ,その自覚に訴え,改善 更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うもの」と規定されていて、そのための矯正処遇のひとつである刑務作業の目的は、「受刑者に規則正しい勤労生活を行わせることにより・・・その社会復帰を促進すること」とされています。
 つまり、自由刑の執行の目的は受刑者の社会復帰にあることが示されているのです。
 このことからも、今より受刑者が社会復帰しやすい環境を整えていく必要があります。

 刑罰は、単にその長さが重要なのではなくて、受刑者が再び社会の一員として戻ってくることができるように、その期間中に改善更生のための適切な処遇を提供し、円滑な社会復帰を目指すことができるような制度にすることが重要なのではないかと思います。


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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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