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秋山映美の「監獄から社会へ」

黒羽刑務所を訪ねて その2

 2009年2月末日現在、黒羽刑務所の受刑者の平均刑期は3.9年で、平均年齢は42.9歳、60歳以上の受刑者が10%、70歳以上の受刑者が3%収容されています。
 罪名は、一番多いのが窃盗27%、ついで、薬物事犯16%、強盗14%、性犯罪10%です。
 多少日本語のわかる外国人も250人ほど収容されていました。外国人に関しては刑期によって刑務所が限定されていないため、黒羽刑務所には無期刑の外国人受刑者もいるそうです。

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施設内の様子

 黒羽刑務所には現在、定員1820人を超える1870人の受刑者が収容されています。
 そのため、定員9人の雑居室に2段ベッドを入れて10人収容したり、定員1人の独居室に布団を重なり合うように敷いて2人収容している部屋がありました。
 雑居収容者がおよそ900人、独居収容者がおよそ900人。これでも、2、3年前と比較すると収容者の人数が減ったとのことで、一時は2300人も収容していた時期があったようです。
 1人部屋に2人分の布団を敷いているところがあるとは耳にしていましたが、実際に見学してみると、寝返りをしたら体がぶつかるほどの狭さで、同房者同士のトラブルを防止するのは大変だろうなと思いました。

 面会室は、テレビドラマでも見られるような通常の面会室のほかに、中庭に東屋(あずまや)風の個室の面会室がありました。
 仮釈放が近い人たちなどは「那須野寮」という半開放の区画で生活をしていて、その東屋風の面会室や屋外の集会所を利用しているとのことです。電話面会もできるように整備されているものの、いまだ利用されたことはほとんどないそうです。

※半開放の区画とは、各部屋の並んでいる区画の入り口に鍵がかけられているものの、共用のトイレや洗面所が部屋の外にあって、受刑者たちが部屋から自由に出入りできる区画のことを言います。

 建物は昭和46年に建築されたものなので、全体的に古びていました。部屋の中のトイレは和式でしたが、足が悪い人などに配慮して、上から洋式便座を乗せるなどの工夫がされていました。
 他の新しい刑事施設では講堂が体育館としても利用できるようになっているところが多いのですが、黒羽刑務所の講堂は椅子が固定されていて、慰問コンサートや演劇を観る以外には利用できないつくりになっていました。そのため、雨の日には室内で運動する場所がないそうです。予算がつかずになかなか改修することができないとの説明がありました。

実施プログラム

 黒羽刑務所では、中密度の性犯罪処遇プログラムが実施されています。外部から臨床心理士を招き、対象の受刑者は週2回の指導プログラムを6ヶ月受講します。1グループ8名で実施し、年に3グループ、合計24人が性犯罪者処遇プログラムを受講しているそうです。

※中密度の性犯罪者処遇プログラムとは、「オリエンテーション」と、「自己統制」、「メンテナンス」のプログラムが必修で、そのほか、「認知の歪みと改善方法」、「対人関係と社会的機能」、「感情統制」、「共感と被害者理解」のプログラムの中から専門的な調査によって必要なプログラムを選択して受講する処遇プログラムのことです。
詳細は「性犯罪者処遇プログラム研究会報告書」をご参照ください。

 このほかにも、被害者の視点を取り入れた教育プログラムと薬物依存離脱指導プログラムがそれぞれ、週に1回、3ヶ月間、1回10名、年に4グループ実施されています。

 薬物依存症者については、ダルクの協力を得てプログラムを実施しているそうですが、黒羽刑務所に収容されている1800人以上の受刑者のうち、16%にあたる約300人が薬物事犯者ということになります。しかし、このうちプログラムを受講できるのは年間40人です。
 8月28日9月4日と薬物依存症の人たちの回復プログラムを紹介しましたが、私は、薬物依存症から脱却するためには、定期的に回復につながるプログラムが必要なのではないかと思っています。
 現状として、全員にプログラムを受講してもらうのは予算の都合などもあって難しいかもしれませんが、薬物依存からの離脱に役立つ本の提供など、低予算でも効果が期待できそうな方法も考えられます。
 財団法人矯正協会から『薬物はやめられる!? ~薬物離脱のためのワークブック~』も出版されているので、このようなワークブックが、薬物依存から脱却したいと思っている多くの受刑者の手に届き、活用されることを期待しています。


コメント


自分自身、当所でお世話になり十数年経ちます。
今でも当時の事を思い出し、二度と繰り返してはいけないと思い、日々を過ごしています。
時の過ぎるのは早い物、振り返ると昨日のことのように思われます。社会は厳しい、中に居る方が
と、思うこともありますが、投げ槍になってはと思い、苦水を飲んで我慢しています。
人生が、遣り直しがきかないものです。
あの時と思っても元にもどりません。杭の無い
残りの人生を送りたいものです。


投稿者: 無名 | 2010年04月07日 20:08

 私も同刑務所に4年を超える期間お世話になりました。自分の犯した事件に対しては今でも全く反省などはしておりませんが、長い人生の中ではほんのちょっとだけ勉強をさせてもらったものとの解釈をしております。
 はっきり言って刑務所職員の皆様はプライベートの不満を受刑者に対して発散させているとしか見えない者もいます。公務員にあるまじき人格の刑務官等は排除するべきだと思います。
 刑務所の受刑者には様々の人がいるのですが、一般の社会ではほとんど見当たりません。どこに潜んでいるのでしょうか?私は雑居部屋の人間関係から逃れるためゴネテゴネテ独居室での4年間を過ごしました。今思えばそれが成功だと誇っております。


投稿者: くろばね | 2012年02月16日 09:00

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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