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秋山映美の「監獄から社会へ」

黒羽刑務所を訪ねて その1

 少し前に黒羽刑務所を見学してきました。
 黒羽刑務所は、栃木県にあり、『獄窓記』(2003年、ポプラ社)で山本譲司さんが記している刑務所です。定員は1820人、初犯で刑期10年以下、26歳以上の男性の受刑者が収容されています。
 
 黒羽刑務所の建物の配置には特徴があり、居室棟と工場棟が屋外の廊下を隔てて向かい合っています。そのため、受刑者の移動は比較的スムーズに行われているそうです。
 受刑者が行う懲役作業には、木工、印刷、金属加工、洋裁、ステンドグラスや紙袋などの製作などがありました。刑務所内の作業をする炊飯作業、配膳作業、受刑者の布団を干す作業、敷地内の清掃作業を担当している受刑者もいました。
 工場棟内では、いくつもの異なる懲役作業が行われていました。私たちが見学したのは二つの工場ですが、一つの工場では、手前で金属加工、その奥はローソクの箱詰め作業、さらに奥ではプラスチックの袋詰め作業、もう一つの工場では、紙袋製作、印刷、パソコンによる写植、ステンドグラス製作の作業、などというように、同じ工場内でも全く別の作業が行われていました。

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 でも、作業量も常に一定というわけにはいきません。
 「以前は刑務所の工場で行われていた作業が、アジア地域の安価な労働市場にどんどんとられてしまい、今は内職程度のものばかりになってしまっている」と、敷地内を案内してくださった刑務官が説明してくれました。
 同じようなことは、数年前から他の刑務所でも言われています。担当の職員が苦労して仕事を見つけてきても、どうしても作業が確保できず、作業時間を短縮したり、平日のうち1日は仕事をしない日をつくったりしているようです。
 以前、監獄人権センターに「仕事がない日は、日中の作業時間中、黙想をさせられて、これが非常につらい」という相談が寄せられたこともありました。
 外部通勤などをもっと活用できれば、作業を増やしたり、社会復帰支援につながったりするのでしょうが、協力してくれる会社を見つけるのはなかなか大変そうです。

※外部通勤(外部通勤作業)…刑事施設の外の事業所において作業・訓練すること。

 黒羽刑務所では、職業訓練も行われています。そのために建設機械科、フォークリフト科、園芸科、木工科、測量科などが設けられていました。
 建設機械科では、全国から10人の受刑者が集められ、地固めの機械や、大型特殊、クレーン、危険物取り扱いなどの免許取得を目指して訓練をしているとのことです。

 釈放の3か月前からは就労支援も行われていて、本人が希望すれば、刑務所からハローワーク働きかけ、受刑者本人がハローワークに行く(外出)こともできるそうです。
 雇用主との話がうまく進めば出所後に面接に行くことになるのですが、そのまま就職が決定した人はまだほんの数人しかいないようです。
 現在、黒羽刑務所には外部通勤をしている受刑者が一人だけいて、その方は近隣の工場に通勤しているとのことです。
 この受刑者が出所した後も同じところで働き続けることができると、そして、社会復帰の成功例が増えると、もっと多くの工場や会社が積極的に社会復帰支援にかかわるようになるかもしれませんね。


コメント


 その通りです。私もその刑務所にお世話になりましたが、毎年々仕事が少なくなり、暇をもてあまし、本当に辛い思いをしました。暇な時は刑期が長く感じました。受刑者も日々増えるのみで過密状態になり、そのためトラブルが絶えません。担当職員の負担も増加している事は私など受刑者にも分かる事です。何とか過ごした6年でした。異常な受刑者が結構見えたものです。私は普通の状態との認識でしたのですが、時を経るにつれ段々とおかしくなる様な精神状態になりました。
 現在は、何とか無事、社会復帰を果たしております。もう二度とその様な施設にはお世話にはなりたくないですね。正当に日々を過ごす事が本当に大事な事。平凡に生きる事が大事な事がいまさらながら分かりました。


投稿者: 黒羽 武 | 2010年07月04日 23:13

 仮釈放の要件の一つとして、反省の度合いを法務省は上げていますが、それはまやかしと言えます。私が見たところ、現場の刑務官の受けを良くした者の勝ちという事実。ずる賢い者の手段として反省の態度を見せる者に現場職員は乗せられている事も多く見ています。現に薬物に関しては再犯率がはるかに高いのです。私は満期にて自由になっておりますが、この7年間交通違反の1度のみです。現在は結婚もしており、この不況の中、何とかルールを守りながら日々の生活を営んでおります。
 私は、服役中の4年間に5回の懲罰をうけましたし、自らの事件を全く反省もせず、満期にて出ております。それどころか、満期出所の時点では被害者という者に対して復讐の機会を窺っておりました。
 でも、その事実に対しては、時間の経過とともに現在は否定できる様になっております。しかし、反省はしておりません。現場の職員もそのストレスから受刑者に八つ当たりしている様な事も多く見えました。反省どころではないと思いました。反省の態度を見せてうまく早期に出る受刑者はそのストレスの発散から社会において行動の逸脱があるものと考えます。仮釈放の運用にはさらに研究が必要と、現場の事実を知る私は特に考えます。
 とにかく、法務省のお偉いさん方は現場を全く把握しておりません。過密収容による受刑者のストレスから来るトラブルに私は単独室に粘って在室を努力した結果、何とか精神を無事に維持して今日が存在すると確信しております。


投稿者: 黒羽 武 | 2010年07月05日 09:18

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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