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秋山映美の「監獄から社会へ」

喜連川社会復帰促進センターを訪ねて その2

 喜連川センターは、初犯で8年以下の刑期の受刑者のみを収容する刑務所です。刑期が比較的短い人たちが集められているのが特徴の一つです。
 喜連川センターの受刑者の内訳は、2008年4月時点で、窃盗33%、覚せい剤13.8%、強盗・詐欺・その他53.2%となっています。

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どんな人たちが働いているの?
 職員は、公務員7:民間職員3の割合で配置されていて、公務員の定員は251人(2008年4月の時点で刑務官242人、法務教官2人、法務技官5人、うち3人が女性)。
 民間の常勤職員は2月末の時点で153人でしたが、定員は設けていないということでした。権力性の弱い業務に民間職員が就いているとのことです。

 施設の組織は、総務部と矯正処遇部、更生支援企画官とに分かれていて、矯正処遇部は処遇部門、作業部門、教育部門、分類部門に分かれ、具体的には保安・警備業務にセコムが、作業・職業訓練業務に三井物産、教育、分類業務に小学館プロダクションが参加しています。
 分類部門に配置されている民間職員は、すべて精神保健福祉士、臨床心理士、社会福祉士などの資格を有しており、公務員の分類担当技官のうち1人は臨床心理士の資格を有しているとのことでした。
 そのほか、教育部門に社会福祉士と精神保健福祉士、作業療法士が民間職員として働いていました。
 医療部門は、構造改革制度を活用して、塩谷総合病院に管理委託し、医療事務や健康診断は三井物産が担当していました。
 ホームページを見たところ、2009年4月からは、宇都宮記念病院に管理を委託しているようです。

 今まで、他の刑務所も何か所か見学する機会がありましたが、他に比べて、事務や医療部門の女性職員が多いような感じをうけました。
 診療所の隣の医療事務のスペースでは、トレーナーを着た女性職員がたくさん働いていたことが印象的でした。やはり、社会には、女性と男性が半数ずついるので、男性しかいないところに長期間収容されているというのは不自然ですよね。

施設の環境は?
 身体に疾患のある受刑者用に、マットや歩行補助器具、バイクマシン数台が備え付けてあるリハビリテーションルームがありましたが、当時はリハビリの先生をまだ確保していなかったようで、使用されていませんでした。

 図書の貸し出しについては、各工場のランチルームにパソコンが設置されていて、そのパソコンでリストの中から好きな本を選び、自身の名札についているバーコードをピッと機械に読み取らせて手続きをすると、後で部屋に本が届けられるそうです。
 運営の中心となっている会社がセコムということで、随所にこのような通信システムが使われていて、国の運営する刑務所と比べると、かなり効率化されていると思いました。

 面会室は、他の刑務所にも見られる、ドラマでよくみかけるようなアクリル板でしきられた面会室以外に、仕切りのない家族面会室、バリアフリー面会室があるそうです。こちらは、当日は使用中で見学することはできませんでした。

 建物の雰囲気は、各収容エリアに緑色などのペイントがなされていて(これはその場所を判別するための便宜的なものかもしれませんが)全体的に明るく、また、入口は施錠しますが、自由に中を移動できる居室エリアがあるなど、他の刑務所にはない特徴がありました。
 他の刑務所にはなかった家族面会室や、便利な図書貸し出し設備など、良い設備もたくさんあったので、多くの受刑者が利用できているといいなと期待しています。

 喜連川センターは、地域との共生を掲げ、民間職員も地域の出身者を優先して雇用し、受刑者に提供される食事の材料も地域で調達しています。

 ただ、受刑者が全国の他のA級刑務所(初犯者が入る刑務所)から移送されてきているため、家族のもとから遠く離れてしまい、面会は1日10件程度しかないという説明が私は気になりました。
 美祢のセンターや島根あさひセンターも立地条件は同様であり、駅から遠いので、あまり面会がないのではないかと心配になりました。
 いろいろと処遇プログラムを受講することも大切ですが、何といっても、出所後に頼れる人の存在というのが、受刑者が社会復帰をする際に一番重要な要因なので、収容中からの面会、手紙のやり取りは多いに越したことはありません。

※ブログ「監獄から社会へ」は、毎週金曜日更新です。


コメント


 心神喪失で不起訴や無罪になった精神障害者を入れておくために、小泉政権のときに起きた大阪の児童殺傷事件を期に、医療観察法施設でも、数少ない遠い施設に送られるので、社会復帰が問題です。
 鳴り物入りで反対も多い中で作られた施設なので、医療水準は普通の精神病院の比ではありませんが,テレビのドキュメンタリーで、退所するにあたって外泊訓練をしたときに,「外泊はとても寂しかった」と話していたのが印象に残っています。
 獄中者と同じく、精神障害者は家族とも切れている人も多い中で、なんとか社会復帰出来るようにしたいものです。


投稿者: 佐野 | 2009年06月23日 19:21

 イタリアでは精神障害者を施設に収容するのではなく、ソーシャルインクルージョンへと政策を転換しているようですね。日本では依然として施設収容が多く、世界の中でもベッド数が多いほうであると聞きました。
 刑務所もそうですが、問題を起こしてしまった人を収容すればすべてが解決するわけではないので、当事者の人たちに必要なものは何かということを私たちもよく知る必要がありますね。


投稿者: 秋山 | 2009年06月25日 18:38

 私自身二年位此の施設に服役してました、ここが立ち上げ当初です
 。確かに当初は色々な面で他の施設とは全然違うと感じました。私は此処に移送される前二箇所の刑務所にいましたので違いに大変驚きました。工場の担当刑務官、職業訓練の技官の方も理想に又受刑者に対し一日でも早く社会復帰させようと一生懸命さが自分たちにもひしひしと伝わってきましたが、 ???半年位経つと旧来型の刑務官が技官の先生や処遇プログラム先生の居ない所で悪口や半分酔っ払って出勤して受刑者に当り散らす等お客さん来た時と居ないの差が大変違いますし、真剣に新しいこの試みに取り組んでいる先生方と権力に酔っている刑務官、権力があると勘違いしているセコムの警備員、そこのお偉いさんにゴマスリしている刑務官等、秋山さんが訪問し見た表側と一般社会に見せている面は同じでしょう。裏側はもっと陰湿で足の引っ張り合いですよ、それは、受刑者も同じですけどね。
 私は非常に良い先生に恵まれましたけど、私以上に真面目に務めて居たある人は刑務官の虐めに会い結局満期まで務め出所するころには逆に人間がひねくれて手の付けられ無い人間に変っていました。あのような立派な施設と真剣に取り組んでいる各部門の先生方が居るのに非常に残念です、邪魔するお偉いさんに多いのが、、、


投稿者: 酒向 | 2012年01月27日 04:22

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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