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永島徹の「風」の贈り物

ともに楽しむことで学ぶ

 以前もご紹介しましたが、私は仲間とともに、ソーシャルワーカーとして近隣の小学校の福祉教育にかかわっています。今年も、小学校4学年の各クラス別にテーマを定め、担任の先生と「子どもたちのもつ力」を引き出せる企画を考えてきました。
 その一つに、障がいに関する福祉について取り組んでいるクラスがあり、「車いす」から障がいについて考える企画を進めてきました。最近では高齢者介護が色濃く認知され、そのため、子どもたちにとっても「車いす」のイメージは、介護をする道具という認識になっているようです。もちろんそれも間違いではなく、正しい使い方を学ぶことで、子どもたちの大切なおじいちゃん、おばあちゃんなどに介護が必要なときに助かるでしょう。
 しかし、「介護をするため」という視点だけではなく、生活の道具という認識。さらには、その道具を応用した結果、機能障害があってもなくても楽しめることを学んでほしいということを目的に企画を考えました。
 今回は、この企画の様子をご紹介します。

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 登場したのは、福祉系大学に通学する青年たちです。自己紹介から始まり、子どもたちは緊張した面持ちで青年に質問をします。質問の内容は、日常生活の行為(食事・入浴・排泄・外出など)に集中していました。その都度、車いすから1人で移動する場面を説明する青年に、「ずげーぇ(すごい)」と、歓声とどよめきが起こります。そして極めつけは、「生活をしていて不自由だと思ったことはなんですか?」という質問。真剣な児童の様子に対して「そうだねぇ、不自由ってことはないなぁ。大変なときはあるけれど、僕はみんなと少しも変わらないよ」。
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青年の熱心な語りに聞き入る子どもたち

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熱心な質問が飛び出す。普段の授業以上に熱心なひとときでした

 その青年の返答に、不思議そうな表情を浮かべていた子どもたち。しかしそのすぐ後、子どもたちが理解できる企画が待っていたのです。

 質問の時間の後、子どもたちを先頭に学校を案内しました。そして、最終地点は体育館。そこに用意されていたのは何と、車いすバスケケットの道具でした。初めて見る乗り物に、子どもたちは興味津々です。
 その車いすを巧みに操作し、バスケットのゴールを決める青年たちの勇姿に、これまでにない歓声とどよめき、そして拍手がわき上がります。さらに、用意された車いすに子どもたちが交代で乗り、「鬼ごっこ」から車いすに慣れ、それから「車いすバスケ」を楽しみました。
 時間が過ぎることも忘れてしまうほど、体育館は笑顔と歓声の熱気に包まれ、用意した2時間があっという間に過ぎました。
 そして、青年たちとのお別れの時間。子どもたちの感想は素直でした。「車いすを使っている人には、みんな手伝いをしなくてはならないと思っていました。けれども、いろいろと工夫をすることで、何でもできる。一緒に遊ぶこともできることを知りました。お兄さんたち、とても格好良かったです。どうもありがとうございました」。

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車いすで鬼ごっこ。楽しみながら車いすの操作を覚えてしまう子ども

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鬼ごっこの後の「車いすバスケ」。ゴールを決めるのは難しい!

 福祉教育といえば、どうしても身体的機能の不自由体験で終わってしまうことが多いように思います。もちろん、学びとしては必要なことだと思います。しかし、不自由さを知っても、それからどう生活をしていくことができるのか。それには何が必要なのか。ともに何ができるのかを具体的に体験することを深める機会が重要ではと考えています。
 子どもたちには、老いも障害も、かわいそうなことや特別なことではないということを、自然に感じてほしいと思います。


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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

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