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永島徹の「風」の贈り物 2007年07月

あたたかい手

 私にとって生まれて初めての経験でした。なんと、ひょんなことからぎっくり腰をしてしまったのです。
 きっと、介護や看護などを職業とする方は腰を痛めたことが、いや現在も痛めている方も多いと思います。そんなとき「自己管理がなっていないからだ」と言う方もいるかもしれませんが、誰も病気をしたくてなっている人はいないでしょう。私も、今回のぎっくり腰を経験してつくづくそう思いました。夜、床についても、寝返りに時間がかかり、起き上がるのにもひと苦労。そして、服を着替えるときもやっかいな状態。極めつけは、靴下でした。足に手が届かない。ふと、介護保険の認定調査項目を思い出してしまいました。いまの状態は、要介護2~3ではないかと。



出会いから奏でる地域ふくし

 最近では、一般向けの地域福祉に関する研修会の手伝いが多くなってきました。その中でも関心が高いのは、地域における認知症ケアに関することです。
 私はソーシャルワーカーとして、福祉的視点からお話をさせていただきます。先日も、一般向けの認知症ケアに関する講座のお手伝いをしました。その日の講話内容は、「認知症と共に精一杯いきる方やご家族の思いをどう福祉的サイドから考えていくか」ということでした。やや抽象的に思われるでしょうが、認知症ケアについての思いや考えは個人個人さまざまであると思います。その時々の答えは、考えている当事者が出していくことでしょう。



『揺らぐ』思いから、納得できる活き方を

 「あまりごちゃごちゃとしたことをしなくても、もう俺は静かにしていたいんだよ!」
 と息を荒げながら、必死に今の生活スタイルを続けたいと主張するEさん。若い頃に肺病を患い、大手術の末、片方の肺を切除しています。ですから、どうしても言動が激しくなると息が切れます。最近では高齢に加え他の病気も患い、寝たきりに近い状態で在宅生活を静かに妻と続けてきていました。
 その妻も加齢に伴い足腰が弱くなり、洗濯物干しや居室掃除などもきつくなってきています。そこで最近は、ヘルパーを活用する生活をするようになりました。県内に息子夫婦がいるものの、日々のサポートを得ることは難しいです。しかしながら、二人暮らしのEさんご夫婦にとっては、何らかのサポートが必要な状況になっていました。
 それでも、「誰にも世話をかけずに、夫婦二人でやっていく」という生き方を貫いてきたEさんは、いまだ受け入れがたい現実に対して、どうしていこうかと揺らいでいたのです。



生き甲斐から生まれる新たな力

 ある日の「風のさんぽ道」(地域密着型認知症デイサービス)での出来事です。
 「ドッターン」と、浴室からの大きな音。すぐ職員が駆け寄り「A夫さん、大丈夫ですよ、安心してください。私がそばにいますからね」と声をかけます。通い始めの頃、A夫さんはてんかん発作を起こすことがありました。
 A夫さんにとって、脳血管認知症と合わせ、てんかん発作を抑制する薬は欠かせないものです。しかし物忘れから、薬を飲んだかどうか忘れてしまうため、時おり発作を起こしてしまいます。生活の中において、必要な薬の服薬は大切です。本人のみならず、ご家族や私たち専門職がきちんと理解して支援していくことが重要です。



「こども」力のすばらしさ

 今年もまた、小学4年生の総合学習の時期がやってきました。年に数回、総合学習の一環で、高齢者との交流から、受け継がれる生命(いのち)の大切さを学ぶことを目的としています。だからといって、「何かをしてあげる」という内容ではなく、子どもたちは「老い」ということについて、この授業体験を通してさまざまなことに気づいていきます。

年をとるってどんなこと
 子どもたちの気づきをサポートするために私は、オリエンテーションで次のような質問を順番にしていきます。まず、子供たちに「年をとるってどんなことだろう」と聞くと、「目が悪くなる。耳が遠くなる。足腰が弱くなる。ずく忘れる……」と、実に活発な意見が飛び出してきます。そこで、「『年をとる』って、どんな気持ちかな?」と問いかけると、「寂しくなる。悲しくなる」。私は「どうして?」と聞くと、「だって、思うように動けなくなるから……」と、ネガティブな答えが返ってきます。
 そこで、「みんなの知っているおじいさん、おばあさんの様子はどうかな?」と聞けば、しばらく考えてから、再び子どもたちの反応が返ってきます。
 「散歩のなんかを一緒にしているとき、とってもうれしそうな顔をしている」
 「サッカーでシュートできたことを教えると、『そいつぁ、偉かったな~ぁ』って喜んでくれる」
など、今度はポジティブな答えが返ってくるのです。
 ここで続けて、「それじゃあ、さっきみんなが言っていた『年をとること』の意見とずいぶん違うね」という具合で話をすすめます。すると、子どもたちの純真で見事な意見が出てきます。「そうだ、一緒に楽しくしているから、喜んでくれるんだよ」「やっぱり、一人でいると、寂しいもんね」。



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プロフィール
永島徹
(ながしま とおる)
NPO法人「風の詩」副理事長。社会福祉士、ケアマネジャー。大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障害回復者の社会復帰活動に従事した後、郷里である栃木県へ戻り、特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務し、地域の中で生じているさまざまな介護上の諸問題についての相談等に応じる傍ら、ケアマネジャーとして介護サービス利用者がより良い生活を過ごしていけるようにと活動。その後、縦割りではなく複合的な地域福祉の拠点を創ろうという計画で、NPO法人「風の詩」を設立、現在に至る。

【永島徹さんの最新刊】
『必察! 認知症ケア 思いを察することからはじまる生活ること支援』
著者:永島徹
定価:¥1,890(税込)
発行:中央法規出版
ご注文はe-booksから
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