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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

話があるの―「分かりあいたい女」と男

 『話があるの―「分かりあいたい女」と男』(清野初美著、創風社出版)という本を読み始めると、いきなり「あなたは自分自身で幸せになる責任がある」という言葉に一撃を受けた。「責任!」。そんな強制力のあるものなのか? 幸せっていうのは。責任とは「取らされるもの」だ。理性をもって生きている限り逃れられない…。

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 文の前後関係を説明しよう。
 「信田さよ子さんの講演会で私たちが伝えたかったのは「子どもは、大人の心の状態にとても敏感であるがゆえに、両親の幸・不幸を鋭く察知して、不幸な親に寄り添い、愚痴を聞いたり、慰めたりして親のために尽くす存在である。昔からの通説とは違って、親が子を思う気持ちより、子が親を思う気持ちの方がずっと深い」ということであった。不幸な親に寄り添いながら成長すると、いわゆるアダルトチルドレンとなり、自分の幸福より他人を優先するようになる。そうした子どもがやがて親となり、また同じような家族を作り、アダルトチルドレンの子どもを世に送り出してしまう。その連鎖を続ける限り、子どもも大人も幸福になれない。虐待やDVも延々と連鎖してしまう。その連鎖を止めなければならない。そのために一番有効なことは何か。それは親自身が幸福になることである」「子どもたちをあなた自身の不幸にからめとってはいけない。あなた自身幸せになる責任がある」というわけだ。
 人は誰でも何がしかの不幸をもっている。トラウマであったり、病気であったり、借金であったり、何ももっていない人などいないはずだ。不幸は自分の周辺に伝播するので、自分が幸せになることは、周りも幸せになることだということだろう。もちろんさまざまな人生の困難を抱えたままでも幸せになれる。まず我慢することをやめればいい。そうすれば、自信も幸福も、その扉を開く。

 この本のサブタイトルに、『「分かりあいたい女」と男』とある。あくまで分かりあいたいのは女のほうだ。それは同時に、幸せを求めることでもあるだろう。男はパートナーと分かりあおうという発想を元々もたない。というか、話し合って物事を解決する、あるいはパートナーと話し合って親密さを増す、という発想をもつ訓練ができていない。だから仕事に夢中になって家庭を顧みない夫が熟年離婚を妻から切り出されて、慌てふためいて、パニくる。夫のほうは「定年になったら夫婦で旅行にでも行こう」と思っていたりするのだから、夫婦間で幸福の基準が決定的に異なっている。仕事に逃避せず普段から話し合わなければ、夫婦だって分かり合えないのだ。今流行っている草食系男子の流行はいい傾向だろうと、実は自分が草食系だと歳取って気づいたぼくは思う。
 さらにメインタイトルは『話があるの』となっている。夫が妻から「話があるの」と切り出されれば、「何がばれたんだろう?」「離婚話では?」(現在の離婚においては、女性側からのものが7割を占めるという)と怯えるそうだが、ぼくは「ちょっと」を前につけると、もっと凄みが出ると思う(笑)。
 紹介した本の著者の清野初美(せいのはつみ)さんは、実はぼくの友人でもある。松山に住んでいて、フェミニストカウンセラーとして活躍しておられる。フェミニストカウンセラーとは、女性による女性のためのカウンセラーだ。ぼくがムゲンを立ち上げた20年前の頃には、彼女は「愛媛の制服を考える会」の代表として孤軍奮闘されていた。
 それがカウンセラーのお勉強をされたか、もともと哲学科の出身からか、松山市男女共同参画推進センターで女性相談員として勤務の後、「ウィメンズカウンセリング松山」を女性たちと立ち上げて独立された。
 彼女は重度の(笑)ADHDであることを公言している。次々と興味が移って、スーパーでの買物もままならないとか、本も読みたいと思って買うのだが、結局「積読」に回って、数百冊のまだ読んでいない本で2階が落ちそうだとか…。

 実はこの本の売り上げの一部を、ムゲンの専用車の寄付に当ててくれることになっています。読みたい人がいたなら、ぼくから買ってもらえないでしょうか。定価は1300円で送料は80円です。ぼくのメルアドはmugen@joy.ocn.ne.jpなので、連絡ください。


コメント


 とても楽しい紹介を頂いてありがとうございます。
 熟年離婚を避けたい方、これから結婚を考える方,
一時間ほどでさらさらっと読める内容ですので、ぜひご一読くださいませ。
 早くムゲンの乗用車が買えますように…。


投稿者: 清野初美 | 2009年11月05日 23:19

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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