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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

認められること

 前々回の「緊急抗議!」で書いた保護費基準額の削減は、今回はひとまず見送られた。世論の反発が予想以上に強かったことと、予定されている衆議院選挙への悪影響が懸念されたようだ。しかし、小泉内閣のときの骨太方針による福祉削減は揺らいでいないから、引き続き警戒が必要だと思う。

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 さて、家庭で「子どもと認められて」育つことは最も大切なことのひとつだ。家庭で「よかったね」「すごいじゃない」と言われ続けて、初めて健康な自己肯定感が育つ。それに対して「なぜ100点取れなかったの?」「もっとがんばりなさい」と現状を否定されるばかりでは自分に自信がもてず、「自分はいないほうがいいのかもしれない」とまで追いつめられる。
 家庭にも社会にも居場所がなくなれば、寂しくてリストカットやうつ的状態に追い込まれることもある。「褒めて育てる」という言葉があるけれど、まったくそのとおりだと思う。家庭とは、両親がそろっているばかりでなく、広い意味での家庭的な場だということはもちろんだ。
 若いとき、ボランティアで身体障害児の収容施設に行っていたが、職員によって介護だけは行われていても、柵付きのベッドにずっと放置されている障害児は本当に成長するのだろうか? と疑問に思ったことがある。
 学校ではいじめのターゲットにならないよう緊張と競争を強いられ、社会ではもっと厳しい緊張と競争を強いられる。学校や社会は競争の場であって、居場所が大切だとは誰も言わない。ますますの競争を強いて居場所を失っていく改革ばかりが行われているように思う。癒しブームだが、安心できる居場所のない人があまりにも多いのだろう。多くの人がこころを病んでいる。

 ぼくは長い間、自分に自信がなく、女性たちがまともに相手をしてくれる存在ではないと思っていた。しかし、25歳のときに付き合った女性とセックスをすることができて、男性としての自信がついた。数年前に2冊の本を出版して評価を得た。このように何でも周りから褒められれば自信がつく、というものでもない。その人が本当にコンプレックスに思っていること、認めてほしいと強く思っていることについて褒められなければ、なかなか自信にはつながらない。自信とは、下手なプライドなどを捨てて、まず自分の本音・本気をさらけ出すことによって得られるものだと思う。難しいことである。
 若い人はプライドが高くても、誰も本当の自信などないと思う。特に誰一人周りで認めてくれる人が見つからず、孤立してどうしようもなく寂しく落ち込むしかないときに、「君はそのままでいいんだよ」と最後に認めてくれるのは、マリア様のような神様しかいないのかもしれないと思う。


コメント


 初めて投稿します、以前からこのサイトは好きで、今、精神科に勤めていて、このコメントとは、関係ないですが、私も周りの人に、いいえ親にでさえ「お前は変わっている」と言われつづけ、でも愛した人に「おまえは、人間らしく生きてるよ、羨ましい」って言われて…彼が事故で私のこと忘れてしまった今も、私は変われない、いいか悪いかはきっと死んでもわかりません、
 でも、私は、偽善だとか理想だとか言われても、私は、私のままで生きたいです、そして、自分がかかわった人達には理解されなくても人間が好きです。


投稿者: しょす | 2007年12月22日 00:06

 孤独は耐えれるかもしれないけど、孤立(1:親族、2:支援施設、3:当事者間)は長期間耐えられないですね…。
 今年は2と3が課題でもありました.


投稿者: Anonymous | 2007年12月22日 23:24

 ぼくも自称マイペースな変人です。
 人に理解を期待せずに居ると、自然に理解者が現れることだってあります。ぼくも恋人が欲しいと痛切に思っていた時には恋人は出来ず、諦めていたら出来たという経験があります。素敵な恋をしていますね。


投稿者: 佐野 | 2007年12月22日 23:53

 Anonymousさん、孤独と孤立の違いが分かりません。孤独は自らの意思が入るのですか?


投稿者: 佐野 | 2007年12月24日 00:44

 孤独は本当に誰とも交わらず一人ぼっちです。孤立は、職場・家庭の中でで通じ合える他者がいないという意味でコメントしました。


投稿者: ハイドラ | 2007年12月24日 22:35

ボクは佐野さんが病者とは思えません。
病者にしては、恵まれすぎですよ。佐野さんは。
自覚した方がいいですよ。


投稿者: タコちゃん | 2007年12月25日 04:53

ハイドラさん:ハイドラさんでしたか。一人でいる孤独より、みんなの中での孤独がより辛いことが多いですね。

タコちゃん:ぼくが今幸せなのは周りのみんなのおかげだと自覚しています。


投稿者: 佐野 | 2007年12月25日 23:13

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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