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佐野卓志の「こころの病を生きるぼく」

福祉施設の仕事は水商売?

 性的に嫌なことをされれば、セクハラとして告発することができる。これを逆手にとるようにして、商売として成り立っているのが、風俗や水商売だと思うことがある。もちろんこの商売の敷居は低くなったが、周りからは依然、差別されているように思う。
 ぼくは長い間、福祉の仕事は「土方仕事」だと思ってきた。汗水垂らして作業所のルーティーンをこなし、体を張ってトラブル処理にあたり、結果として、人を一歩でも前進させることができれば上出来だが、そんなことはめったにないことである。

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 しかし、福祉の仕事は「水商売」だという人もいる。通所者は神様。通所者あっての行政援助金だし、職員の給料である。ひたすら通所者にサービスを尽くし、昼飯を出して、お菓子も出し、相談事にのって、作業した分は給料を出し、最終的に満足してもらって帰ってもらう。確かにその通りだ。地域住民からの建設反対運動もあったりして、周りからは水商売のように嫌われるところもある。若くきれいな女性職員がいる施設は、男性ファンが寄って来る。

 ぼくは若い頃、スナックに入り浸っていた。仕事先では友人も少なく、夜な夜な寂しさを紛らわせるために、スナックで歌って踊って騒いでいた。給料の6割くらいはスナックに入れていたと思う。最終的にそこのスナックのママから、「ここで働いたら」と言われ、時給は安かったがおつまみ作りやお客の接待をしていた。ついには、ママが辞めるとき「この店やってくれないか」とまで言われた。もちろん向いてないと思ったから、お断りしたけれど。
 その後、作業所ムゲンを立ち上げた。もちろん病者仲間の居場所だが、何より自分の居場所でもあった。奥さんと二人三脚で家族的経営を目指した。
 昼ご飯はみんなで食べるようにして、基本的に作業は行わない、居場所としての作業所だ。しかし行政援助金はなかなか下りなかったから、献身的な奥さんに給料を出すためだけでも、商売は行わないといけない。
 タバコ販売、古本販売から、コーヒー、ポン酢、カレンダー販売などをやった。仲間は営業的な仕事を一切しようとしなかったが、別に売ることを強制もしなかった。ぼくたち夫婦とボランティアが売りまくった。
 やがて10年以上経ち、作業所に行政援助金が下りるようになり、みんなも暇つぶしに作業したいということだったので、古着物のリメイクを始めた。奥さんのつてでデザイナーを確保してのことだ。
 家族的経営は続けてはいるが、自分たちのことは自分たちで決めるために、2週間に1回、全員で話し合う「運営協議会」を開いている。運営協議会での決定は理事会に優先する。というか、ぼくが理事長なのでそのように運営している。しかし、みんなからの意見は結構不活発で、職員が主導という感じは否めない。やっぱりサービス業なのかもしれない。
 作業所仲間の男女交際は結構盛んだ。サービス業としてそういう場を提供するのも、自立への一つの重要な柱である。病者自身にとって、自分の「性的な役割、価値」を確認することは重要なことである。結婚に至ったカップルもあったが、結局離婚したりもした。このような話を聞くと、病者が結婚生活を維持することは難しいことだと痛感する。


コメント


 ぼくも、何回かスナック行ったけど、今は行きたいとは思わないなー。


投稿者: keisuke | 2007年10月26日 04:05

 いつも読ませていただいています。
 私はずっと高齢者の分野で働いていて、福祉といっても他分野の(こうして分野と分けてしまうこともおかしいのかも)ことを実感として理解することがあまりなかったのですが、佐野さんのブログを読むことで、上手く言葉で表現できないけど、リアルに何かを感じさせてもらっています。
 「そうなのかぁ」「そんな風なんだぁ」と。
 知らなかったことを垣間見る感覚です。何も分かっていないけど、ヒントをいただいています。ありがとうございます。


投稿者: 灰色猫 | 2007年10月26日 09:24

 ボランティアの仕事は、一つのサービス業なのかもしれません。
 ただ、福祉の仕事は「奉仕する」「尽くす」心が必要だと思います。そこが水商売と違うところなのではないでしょうか?
 水商売は(いわゆる風俗)数をこなせばよいわけで、奉仕する心は必要ないと思います。満足させる義務も風俗にはないわけだし。言ってみれば、接待業とか営業に近いような気がします。
福祉に携わる仕事は、どれだけ尽くせて奉仕できるかだと思います。
 他人のために、どれだけ尽くせるか。
 愛情を注げるか。
 それができない方には福祉の仕事は無理だと感じています。
 福祉の仕事は接待業でも営業でもないのだから。


投稿者: taro | 2007年10月26日 20:10

追記です。
 動機も違うと思います。
 水商売は第一の目的がお金。マネーです。福祉に携わる方々の動機はボランティアだと、私個人は思っています。
 佐野さん達も、ボランティア目的が動機で、ムゲンを始めたのではないのでしょうか?
 福祉の仕事に携わる方々は、「覚悟」も持っていなければできない。
 そう簡単に途中で挫けていては、福祉の仕事は勤まらないのではないでしょうか?
 「覚悟」「奉仕」「尽くす」さらに、根気強く。この気持ちを忘れずにいなければ、続けられない仕事だと思います。だから、福祉の仕事は水商売ではないと、私は思います。
 相手が障害者だからこそ、なおさら気持ちが大切だと思います。

 簡略な文章にて失礼しました。


投稿者: taro | 2007年10月26日 20:34

 keisekeさん:男も女性を接待出来るくらいになりたいものです。
 灰色猫さん:なるたけ本音で文章を書いています。ヒントになれば幸いです。
 taroさん:水商売でも、尽くす奉仕の気持ちのある人が結局人気を勝ち得、成功するのではないでしょうか?
 一方、福祉の世界でも、結局は飯のタネと思っている人も多いです。特に動機はどうあれ、疲れるとそう思いますよ。福祉の世界も結局給料が安い、重労働で辞めて行く人は後を絶ちません。


投稿者: 佐野 | 2007年10月27日 10:23

 そうでしたか。軽々しく発言して失礼しました。
 私の考え方は間違っていました。
 やはり、当事者にしかわからない事みたいです。浅はかな考えで発言して、すみませんでした。
 心より、お詫び申し上げま


投稿者: taro | 2007年10月28日 03:40

 多くの支援者は、人の役に立ちたいと思って始めるので、奉仕とか?プロとか?は、後付けと思います。
 年数が経つうちに、自分や周りの生活のため、上を向いて仕事するか?利用者のために仕事するか?になってきます。
 大手の医療施設の中には、精神関係の施設をもっているところも少なくないので、児童や老人の施設にいた者が、精神の支援センターにくることがあるのです。
 総じて精神の施設では、職員の異動が頻繁だったり、入れ替わりが激しいと、利用者は減るか、特定の病者しかこなくて、入れ替わりの頻繁な傾向にあります。あと、上から見下ろす援助になりますね。見下ろさない人も、馴らされます。かつての僕みたいに…。


投稿者: ハイドラ | 2007年10月28日 21:04

taroさん:教師が聖職だなんて、今はだれも信じていないでしょう。どんな職業だって労働者です。ベテランになればプロ意識もあります。謝る必要なんてないですよ。


投稿者: 佐野 | 2007年10月29日 08:45

 うーん。水商売と一緒にして欲しくないのが私の本音です。
 水商売は、時間を切り売りするもの。常連は大事にする。一見さんには、最初は過剰なサービスをする。しかし、たまにしか来ないと、その場限りがおおいものだ。
 自分の好みにはすごく良くして、嫌な客は場合によっては追い返す。その場を楽しませればいいのは、作業所・デイケアとは違うと思う。
 正直、ホストにすごく特別扱いを受けてる私としては、差別のあっていい水商売であってはならないとおもう。他のお客様に申し訳ないと多少萎縮する。
 私から見たら、サービス業。たとえばリラクゼーションルームとか、ショップだったり。


投稿者: ようこ | 2007年10月29日 23:03

 ハイドラさんと佐野さんの仰る通りです。認識が甘かったです。
 福祉の事も、何もわかっていませんでした。奉仕とかプロ意識とか。
 何もわかってないのに、間違ったコメントして恥ずかしい思いでいっぱいです。自分の知識の乏しさを痛感しました。


投稿者: taro | 2007年10月30日 13:37

 ようこさんの意見も大変参考になりました。
 佐野さんもハイドラさんもようこさんも、いろいろと勉強なさっているのですね。
 大変参考になります。みなさん勤勉で知識も豊富で、頭が下がります。


投稿者: taro | 2007年10月30日 18:19

ようこさん:時間の切り売りはどんな仕事でもそうでは? この人が入ると確実にトラブルになるとか、職員の力量では対応出来ないとか、いろいろな場合、お断りすることがあります。差別排除は良くないけれども、現実問題として排除してしまう場合もあります。
 ムゲンの場合、全員で話し合うのが基本ですが。障害者の居場所ってリラックス出来ないとだめだし、職員の個性もありますが、できれば話題を盛り上げて場が楽しいほうがいいです。
 しかしコメントがいっぱいで盛り上がるなあ。

taroさん、ハイドラさん:ワーカーも初めはみんな福祉の世界で何か資格持っていれば就職に有利、みたいな感じでしょう。福祉ってイメージはいいけれど、長くやっているとつくづく3K労働です。
 でもいくら基本的に人が好きでも、ぼくは休みは人に会うのを避けて、自室に引きこもっています。いくらため口をきいても、援助者という立ち位置は対等ではありません。


投稿者: 佐野 | 2007年10月30日 18:44

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プロフィール
佐野 卓志
(さの たかし)
1954年生まれ。20歳(北里大学2回生)のとき、統合失調症を発症、中退。入院中、福岡工業大学入学・卒業。89年、小規模作業所ムゲンを設立。2004年、PSWとなる。現在、NPO法人ぴあ、ルーテル作業センタームゲン理事長。著書に『こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡』(共著、中央法規)『統合失調症とわたしとクスリ』(共著、ぶどう社)。
ムゲン http://www7.ocn.ne.jp/~lutheran/
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