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辻川泰史の「介護事業所運営のコツ、教えます」

介護サービスの急なキャンセル、キャンセル料を請求する?

 あるとき、ホテルを予約していましたが、急遽予定が入り、行けなくなりました。宿泊予定日の前日です。
 そこで、予約していたホテルにキャンセルの連絡をしました。前日ということもあり、私はキャンセル料金を支払いました。当然、納得のうえです。
 多くのサービスでは、予約していたものが急な予定でキャンセルになった場合、キャンセル料金を支払うのが常識です。しかしながら介護事業においては、急な利用者のキャンセルが発生した際、キャンセル料金を請求することは少ないのではないでしょうか。

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 契約書や重要事項説明書に記載してあっても、実際には、急な体調不良や通院などの場合、感情的に請求しにくいが実情です。当社でも同様ですが、サービス開始1時間前にキャンセルの連絡を受けても、請求することはほとんどありません。

 5年前の事です。あるデイサービスの利用者が、毎回のように当日キャンセルをしていました。その利用者は認知症があるわけでもなく、入浴目的によるサービス利用でした。
 来たくない理由があるのだろうかと、本人との面談を含め、ケアマネジャーや家族からも情報を提供してもらいながら、対応方法を考えました。
 キャンセルの理由は「面倒になる」ということだったので、「利用者に面倒と感じさせるサービスを改善しよう」と考え、プログラムの再構築やスタッフの対応方法など、改善できる点を見直しました。
 しかしどんなに工夫をしても、前日は「行く」と言いながら、当日になるとキャンセルします。
 どこの施設も同様だと思いますが、運営規定にある人員配置基準からプラス1名もしくは2名、その日の利用者の状況によって配置を多くするでしょう。特に入浴希望が多いとき、10名の入浴希望の時は1名増員、11名以上は2名増員などの対応するなど、1名の差で、増員する職員の人員配置を変えているとします。つまり、1名の人件費が生じているのです。
 食事も同様です。1名分の食材費を法人が負担することになります。やむを得ない事情でのキャンセルは、介護という仕事の関係上、私たちも理解していくことが大切です。しかし、毎回急なキャンセルがあると、予定していた増員した人員配置に無駄が生じてしまいます。毎回、1名分の人件費や食材費が多くかかり、法人の負担になるのです。
 定員の問題もあり、新規の利用者を受け入れることができない場合もあります。そういった際はやむを得ず、満額とはいわずも、キャンセル料金を請求させていただくことがあります。
 しかし、ケアマネジャーのなかには「どうしてキャンセル料金がかかるのか」「利用者の負担を増やすなんてひどい」と指摘する人もいます。ケアマネジャーの考えはよく理解できますが、事業所の立場も考えてほしいと思います。
 同様に、現場の職員にも法人の立場の理解と認識が大切です。法人が負担している経費は、巡り巡って現場の職員に還ってくるのです。
 毎月、当日キャンセルの利用者が3名いるとしましょう。1回の当日キャンセルにつき、余分な経費が5000円生じるとします。3名で月1万5000円、年18万円です。これは、非常勤スタッフ1名の人件費に相当します。
 現場として法人として、利用者が面倒になるサービスではなく、楽しみになるサービスを目指すことが必要です。言葉が適切ではないかもしれませんが、サービスの質と関係なく、自分のわがままでキャンセルする利用者への対応を考えていくことが必要です。
 何気なくキャンセルを受け付けていることが多くあると思いますが、その際に少なからず余分な経費が生じていることを念頭に置きましょう。
 現場から法人に対して、こういった余分な経費を抑える提案をして、抑えた経費を賞与や給与に還元してほしいという提案も必要ではないでしょうか。

 ある法人にコンサルタントでかかわった際、代表者と現場の職員と面談しました。代表者は「現場の職は『利用者本位』というが、法人の立場を分かってくれない。だから昇給などを考える必要はないのではないかと感じてしまう」と言います。
 現場の職員は「法人は利益だけで利用者のことを考えていない」という意見が多数でした。
 しかし、代表者は決して利用者や職員のことを考えていないわけでもなく、現場の職員が法人のよさを理解していないわけではありませんでした。相互の気持ちや考え方のすれ違いから生じた「誤解」が原因でした。誤解が不信につながっていたいのです。
 そこで、1日だけ代表者役を現場の職員に行ってもらう提案をしました。代表者は半日だけデイサービスのフロアにいてもらうことにしました。現場の職員は、その日の売り上げの計算、人件費の計算、雑費の計算をしてもらいました。
 代表者は、数字だけで利用者を見ていた自分に気づきました。現場の職員は、1日にどれだけのコストが生じているのか、1名の差で1万円前後の売り上げの相違があることを知り、法人運営の苦労を少し感じることができたといいます。それからは少しずつではありますが、両者の関係は改善されていきました。

 法人=(信頼)=現場

 理想かもしれませんが、相互の状況、立場を理解していく努力が大切です。


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プロフィール
辻川 泰史
(つじかわ やすし)
1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/
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