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梶川義人の「虐待相談の現場から」

プロフェッショナルの仕事の流儀。fいいね!

 朝日新聞DIGITALの記事「児童相談所職員に弁護士 和歌山県が公募(2013年12月19日17時19分)」によると、和歌山県は、来年度から児童相談所に弁護士を職員として採用する公募を始めましたが、日本弁護士連合会によると、全国の都道府県では初めての取り組みであり、政令指定都市を含めると福岡市に次いで2例目、だとのことです。

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 私は、弁護士の方からは、事例検討でご一緒するなどして、本当に多くを学ばせて頂いてきました。フェイスブックをやっていれば、本当に何度「いいね!」を押したことか。また、ある弁護士の方から、「医師の資格を持った公務員はたくさんいるが、弁護士資格をもった公務員は少ない。保健医療福祉の現場では、弁護士の出番が多いはずなのに…」と伺ったことがあります。

 ですから、常勤勤務の弁護士が、保健医療福祉の現場で日常的に活躍するようにならないものか、と強く願ってきました。高齢者虐待や障がい者虐待の分野にも、こうした日が一日でも早く訪れることを願ってやみません。

 この期待は、法務にとどまるものではありません。いわゆるプロフェッショナルの「仕事の流儀」が学べると思うからです。おそらく、素人っぽいやり取りの事例検討会で、現実的な落としどころの示唆をするのが、多く弁護士であったことを経験しているからです。

 何の見通しもないまま虐待の告知を決め、介入拒否をかえって強める。とうてい不可能だと思われる家族の再統合にこだわり、分離の時期がいたずらに伸びて、被虐待のダメージは大きくなっていく。一時分離したものの、分離している間は無為無策のため、在宅復帰後はまた元の木阿弥。最近は、さすがに減ってきたようにも思いますが、機関間で役割を押し付け合って「会議は踊る、されど進まず」等々。

 弁護士の方が、よほど保健医療福祉の専門家風ですらあったことも少なくありません。しばらく「どうしてこうなるのだろう?」と訝っていましたが、ある弁護士の方のお話を伺い、はたと膝を打ったことがあります。「(虐待事例に関わる人々の多くは)自分がリスクを負いたくない。しかし、対応はしないといけない。だから、自分に以外の人にお任せしたがる」というのです。

 私のいう、プロフェッショナルの仕事の流儀の根幹は、まさにこの点にあります。どのような仕事であっても、遂行するためには、ある程度のリスクは負わねばなりません。しかし、それを避けていたのでは、何年経験を積んでも本当のプロになれません。

 もちろん、精神論だけで自己効力感を高めることは難しいでしょう。もっと具体的なことを考えないといけません。そこで、実践や研修に力を注ぎ、研究は怠けてきた私ですが、来年からは、虐待に対応する人々の、自己効力感を高める方法の研究にも力を注いでいきたいと思います。

 虐待は、文化、制度やサービス、人間関係、経済、介護など、多種多様な要素が絡んで発生し、対応には、多問題、介入困難、心身の障害など、対応困難化ないし予後不良化の要素も絡みます。

 したがって、虐待の問題に対応する人々の自己効力感を高める方法なら、他の問題に対応する人々にも役立つでしょうし、然るべき仕事の流儀を身につけた本物のプロフェッショナル輩出に大いに貢献できると思います。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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