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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

過去からの卒業

 駅のホームで、女袴を着た人たちが喜びに満ちた表情で談笑しながら、電車が来るのを待っている姿を見かけました。今は卒業シーズン。おそらく、大学の卒業式に参加した帰りだったのだと思います。

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 私の場合、卒業式は、悔しい思いでいっぱいの行事です。過去への執着はよくないのですが、不登校になった高校2年生の後、学校を転々とし、20歳の時に高校を卒業しました。もちろん、回り道をしながらも卒業できたことは嬉しかったのですが、できれば、最初の高校の卒業式に出たかったです。その高校の卒業アルバムを見せてもらったことがあります。わずかですが、自分の写真がありました。しかし、そのアルバムに存在していても、卒業式には、出席することはありませんでした。卒業式に出られても、出られなくても、時が過ぎれば、それほど重要なことではありませんが、あの歓喜と涙に満ちあふれる時間を共有できないことは、辛くて、悲しいことだと思います。

 同じ年齢の人たちが卒業を迎えている時、私は家の中で震えていました。この先、どうなっていくんだろうという漠然とした恐怖と不安がありました。もちろん、みんながそれぞれ、不安を抱えながら生きています。でも、みんなと同じような道を辿れない、レールを踏み外してしまった焦りというのは計りしれません。
 あれから8年が経ち、順調に進学先を卒業し、就職して働いている人もいますが、派遣切りにあってアルバイトを始める人、精神障害を患って家から出られない人、既に離婚を経験している人…、色々な人生を歩む人がいます。そう考えれば、私の障害なんて、大したことではないと思ってしまいます。もちろん、生きていく上で、読み書きは重要なので、そのものへの理解はして頂きたいのですが、誰もが、色々な課題を抱えながらも、前を向こうと必死で歩んでいるのは変わりません。

 先日、ジャマイカに取材で何度か訪れているという、番組制作会社のディレクターの方とやり取りをしました。あくまでその方が経験した範囲での話ですが、ジャマイカではどこに行っても「お金、ちょうだい」と言われ、断ると怒られたそうです。しかし、それと同時に人々にはどこか憎めない部分もあって、日本とは明らかに違う価値観を目の当たりにし、そのディレクターの方は、自分の悩みはどこかへ飛んでいくような気がした、と言っていました。私たちも、違う国に行くことはなくても、新しい価値を得ることで、今の悩みを乗り越え、また、新しい悩みに挑んでいくことはできるのだと思います。

 ただ一方で、心の側面ばかりを追求していては、バランスが良くないとも感じます。
 最近、夜中に自宅でキャンドルを灯して過ごす時間があります。たしかにキャンドルは心を豊かにしてくれます。しかし、もしキャンドルしか灯りがないとしたら生活が不自由になります。電気があるからこそ、キャンドルに感動もするのです。そこはこの時代に生まれた恩恵と生きづらさのバランスを保ちながら、過去の自分から卒業し、新しい自分に生まれ変わっていくことが大事なんだと思います。


コメント


 初めて、コメントさせていただきます。
 3月11日の宮城県三陸沖を震源とした「東北地方太平洋沖地震」におきまして、被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
 南雲さま、大丈夫でしょうか?
 3・12 香川県善通寺市で開催予定であった講演会を楽しみに出かけて行った者です。
中止になった旨を聞き、帰宅後、ブログを拝見させていただきました。
 四人の子育て真っ最中の親です。知的障害、広汎性発達障害を持つ子供たちです。いろんな講演会に出向いては自分自身を成長させようと思っていますが、集団生活での困り感(学習への意欲、友達や先生との関係など)を次から次と抱え、集団の場での問題行動として先生から連絡があるため、心を休める時間がありません。
 南雲さまが、新潟県出身であることは後で知りました。ライフラインの復興までにはまだまだ時間がかかることでしょう。
 落ち着きましたら、是非また善通寺市で講演会を開いてください。よろしくお願いします。
 一日も早くその日が訪れることを待ち望んでいます。
 くれぐれもお体に気をつけて・・・


投稿者: さぬきのぴっぴ | 2011年03月14日 09:43

さぬきのぴっぴさんへ

コメントいただき、ありがとうございます。

こちらは、元気ではありますが、いつもとは違う日常を送っています。

香川県善通寺市での講演会、開催することができず、本当に申し訳ありませんでした。

次回、必ずリトライさせて頂きます。

よろしくお願い申し上げます。


投稿者: 南雲 明彦 | 2011年03月23日 23:48

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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