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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

可能性を諦めない

 2月27日(日)に行われた東京マラソン2011で、埼玉県立高校事務職員の川内優輝さんが日本人トップの3位入賞を果たしました。市民ランナーでこの結果は、偉業と言ってもよいそうです。実業団チームに入らず、トレーナーもつかず、個人で練習を積み重ねてきたという川内さんの姿に、希望の光のようなものを感じることができました。

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 実業団に所属していない状況を「恵まれない環境」と表現する方も多いと思います。公務を終えたあとのわずかな時間を練習にあてるというのは、相当な意思の強さと情熱がなければ継続できないことです。それにも関わらず、今までの「常識」を根底から揺るがすような結果が起こせたというのは、新たな道が作られていくこと予感させますので、今後にとても期待しています。

 ところで、発達障害をもつ人たちにとって、今の社会は、「恵まれている」でしょうか。少しずつ自分たちのことを理解し、支援してくれる環境が整ってきているので、以前ほどには、恵まれていない状況ではなくなってきたのかもしれません。しかし、まだまだ、世の中に発達障害のことは知れ渡ってはいないので、職場や学校に行くたび険しい道が待ちうけているという方も多いと思います。私もその一人です。
 ただ、今回の川内選手の活躍を見ていると、ビハインドからのスタートでも、既存の価値を揺るがすことができるということを感じます。私たちにも何かできることがあるのではないかと思いました。

 「障害」を自分の中に受け入れ、自分の一部と認識し、その上で、自分という素材の使い方を考えていき、好きなもの、伸びる可能性が高い部分を研鑽・研磨していくことが重要なポイントなのだと思います。環境が整ったからといって、それで全てが解決するわけではなくて、その環境で走るのは自分自身だからです。いくら、道路が整備されても、ガソリン切れやエンジン故障では、車も走ることができません。もちろん、全て「自己責任」という世の中でよいとは思いません。でも、前を向くことは止めないでほしいのです。根拠なき自信ばかりでも困りますが、自分の可能性を信じることを諦めてはいけないと思います。自分の著しくできない部分も、それなりにできる部分も、すべて、自分の力に変えることができたら、余裕をもって、自分のことを信じられるのになって思います。

 自分を信じられるからこそ、人を信じることができるんですよね。たとえ同じような経験をもっていても、自分を信じている人と、不安な状態の人では、他の人に助言をしたところで、その言葉がもつ説得力が違うと思います。
 実は、私も一時期、そのような時期がありました。恥ずかしい話ですが、自宅にこもっていた時に、少しでも誰かの役に立ちたくて、携帯電話でいわゆるメル友を作り、同じような人たちと交流をしていました。そこで交わさせるのが発展的な会話だったらよかったのかもしれません。しかし、結局、そこには何一つ現状を越えていけるような内容はありませんでした。その時の私は、誰かの役に立ちたくて、と綺麗な言い訳をしていたものの、心の底では自分に自信がなく、他人とつながる手段がそれしか思いつかなかっただけだったのです。今となっては、まずは自分自身の足元を見つめることから始めなければならなかったのだと痛感しています。
 誰かの役に立つには、準備運動が必要です。普段あんまり歩いていないのに、階段をいきなり、2段、3段飛ばしで走ったら、転んで、大怪我をしてしまいます。その前に、歯がゆいかもしれませんが、ゆっくり一歩、一歩、歩き始めることから輝く未来がスタートするのだと思います。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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