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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

この国で「普通に生きる」難しさ

 先月の話になりますが、昨年1年間の自殺者数(速報値)は、前年比3.9%減の3万1560人だったことを、警察庁が発表しました。統計を取り始めた1978年以降では12番目の多さで、自殺者が3万人を超えるのは13年連続になるそうです。バブルが崩壊した1998年以降、年間3万人が自ら命を絶っています。とても、悲しい現実です。

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 私にもこの世から消えてなくなりたいと思っていた時期があります。そんな時に「生きたくても、生きられない人もいるんだよ」と諭してくれる人がいました。それはわかっているんです。わかっているんだけれど、自分の存在を学校や社会に見出せず、孤独に苛まれ、どうしても、消えてなくなりたいという発想にしかなりませんでした。「生きたい、でも、死にたい」と、自分の中に矛盾した感情がわき出てきて、まるで天使と悪魔が交互にささやいてくるような状態でした。殻に閉じこもり、太陽の光さえも怖くなり、いつしか夜の街に救いを求めるようになっていました。単純に、自分の存在が確かめられる場所、居場所がほしかったんです。その中で、理由は定かではありませんが、親切に面倒を見て、守ってくれる人たちがいたから、今、こうして生きていられるのだと思います。

 さて、自殺で親を亡くした子のサポートをしている団体「Live on(リヴオン)」が主催して、昨年12月31日から翌1月1日にかけて、「年越いのちの村」が実施されたのをご存知の方は多いと思います。年末年始は、福祉や医療の窓口がストップするので、自殺願望があったり自傷傾向のある人にとっては、孤独を感じやすい時期になります。場所は「日本一若者の集まるお寺」とも呼ばれている、大阪の「應典院」。少しでも、自分という存在を確認できる場所が数日間でもあるというのは、命をつなぐ栄養剤のような役割を担ってくれます。私の場合は、それがこのような集まりではなく、身近にそのような場所がたまたま存在したということだけの話で、形はどうあれ、このような場所は欠かせないと思います。

 実は、私の父方の叔父も、約25年前に自殺をしました。秋葉原駅のホームから、入ってくる電車に飛び込んだのです。残された妻、子ども(私にとっては、叔母と従兄弟)にとっても、親族にとっても、忘れられない日になりました。叔父の勤務先では当時、自殺が著しく増大していた時期であり、マスコミも注目していましたので、葬儀の様子は週刊誌に大きく掲載されました。また、知人、友人の中にも自殺を身近に経験している人が多いことに驚かされます。私の出身地である、新潟県は自殺死亡率は全国よりも高い値で推移し続けています。

 戦争をしていない国で、これだけの人たちが自らを殺めている現実。残された人たちは、相も変わらず、日常を生きていかなければいけない現実。そのような事態に陥る前に私たちには、一体、何ができるのでしょうか。
 最近、よく、「“普通に”嬉しい」「“普通に”仕事をしている」など、「“普通に”~」という言葉が多く使われるようになってきました。「普通」という言葉が、特別なニュアンスに変化している気がします。つまり、「普通に生きる」ということが、いかに大変で、尊いものなのかということが注目されてきているのかもしれません。発達障害をもつ人たちが、「普通のことが普通にできない」と悩み、苦しんでいる中で、こうして、生きられていることに感謝する心をもって、皆さんと手を取り合って、生きていきたいと思います。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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