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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

自然治癒力を引きだそう

 先日、山梨県の看護専門学校に講演に行ってきました。この学校では、学生自ら、私のことを講師として選んでいただきました。
 学生の方たちですから、そんなに年齢が変わりません。様々な講師の方がいらっしゃる中で、どうして、私のことを選んでくれたのか、最初はわかりませんでした。でも、会場に入ってから、学生の方と打ち合わせをしていくうちに徐々にわかったことがありました。それは、「どんなことがあっても、諦めずに前を向く生き方を伝えてほしい」ということでした。

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 もちろん、私自身は、そんなに大それた人生を送ってきたとは思いません。でも、幸か不幸かわかりませんが、家に引きこもっていた時に、自分の内面を見つめる時間はたくさんあって、それが今に生きている部分もあります。
 その時期が無駄だとは思いませんが、やはり、人生という長い目で見れば、どうってことない期間であっても、その渦中にいる時は、焦りや絶望感というのは計り知れません。でも、飛行機もそうですが、離陸してから、機体が急激に上昇し、雲を突き抜けた先には、真っ青な空が姿を現します。雲の下にいると、その雲の動きによって左右され、雨が降ったり、太陽が顔を出したりするのですが、それらを突き抜けてしまえば、それは関係無くなるんですよね。
 だから、色々な困難があっても、それを突き抜けてしまうと、案外、楽になったりするものです。ランナーズハイ状態と言ってもよいかもしれません。その陶酔状態というのは、自分の走りに酔っているわけではありません。走ることの喜びに満ちている状態だということなんです。やはり、喜ぶという行為は、何をするにしても、エネルギー源なんだと思います。

 先日、こんな記事が掲載されていました。「19歳以上の相談5倍超 県発達障害支援センター」(下野新聞「SOON」(1月19日))(http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20110118/444258)
 5年前の初年度に比べ、19歳以上の青年・成人期に関する相談が5倍超に急増しているそうです。発達障害者への就労支援というのは、今後ますます大きな課題になってくるのではないでしょうか。
 しかし、ここで、相談者も受け身なだけでは成し遂げられないことがあると思います。つまり、道路を舗装し、整備したところで、走るのは自分だということなのです。その自覚はしておかなければなりません。ただ、悩み、苦しんでいるからこそ、相談するのであって、それは前向きなことだと思いますし、その姿勢を貫き、その仕事への意欲を最大限まで励まし、後押ししてくれる応援者がいてくれるからこそ、就職という道に辿り着けるのです。

 人には「自然治癒力」があります。発達障害自体は、現在のところ、治るものではありませんが、その障害があるゆえに、心の傷を背負って生きている人がたくさんいます。自分だけでは、その力を引き出すのは難しいかもしれません。でも、他の人から、生きる力を与えてくれる激励があることで、その力は発揮され、自分の設けていた枠を飛び越えていけるのだと思っています。
 また、自分でできることでいえば、私の場合「微笑むこと」でした。ちなみに、私は相談することが苦手で、公的な機関を利用してきた経験が少ないと思います。相談することは、とても力のいることで、10代後半の2次障害でもがいていた頃、病院に行くことですら、厳しい状況でした。そんな時に、「言葉が出なくても、微笑むことは忘れずにいよう」と思い、笑顔ではなくても、少しでいいから笑うように心がけていました。そうすると不思議なことに、気にかけてくれる人がたくさん現れました。
 もちろん、人が集まればそれでいいかといえば、そうではありません。そのような状況ですので、たくさんの人たちの意見を適切に処理や判断していくことが、なかなかできないからです。自分にふさわしい言葉やアドバイスを選んでくれる人がいたからこそ、私は今、このような活動ができています。
 何も昔から私のことを知っていた人ばかりではありません。立場や時間は、それほど重要ではなくて、希望を与えてくれる人が一人でもいれば、新しい道を開拓していく力が湧くものなんです。支援には技術的な面もありますが、何より、慈愛の精神こそが重要です。それが、人の固まった心を溶かし、ありのままの自分を認識する鏡となるのです。そして、ないものばかり求めているわがままだった状態を脱して、自己資源の活用と将来養うべき力を見つけていけるエネルギー源になるのだと思います。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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